新型コロナウイルスの世界的な流行によって私たちの日常のさまざまなことが劇的に変わりました。その中の1つに「紙」の利用があります。数年前からすでにデジタル化、ペーパーレス化で使用量が減ると言われてきた。これが外出自粛やテレワークによってそのスピードが速りました。
確かに「書く」「情報を印刷する」という目的のための新聞紙や印刷などグラフィックペーパーの需要は減少傾向にあります。しかし、需要が増加しているセクターもあります。
製紙業では「古紙」と「木材(パルプ)」を原料に、それぞれを単独で用いたり、または配合したりしながら各種の「紙・板紙」製品を生産している。原料の内訳は約6割が「古紙」、約4割が「木材(パルプ)」であります。
(図表:パルプ)
(出典:Wikipedia)
「紙」ではティッシュペーパーやトイレットペーパーといった「衛生用紙」の需要が拡大しました。「エリエール」ブランドで知られる大王製紙株式会社3880)は「衛生用紙」でトップシェアを誇ります。商業施設や医療福祉施設などの法人向けの販売が中心だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で人々の衛生面の意識が向上し、家庭向けの需要が増えています。海外でもCOVID19の発生が病院からのティッシュペーパーといった「衛生用紙」の需要を高めています。米キンバリークラーク社(KimberlyClarkCorporationはCOVID19対策のためにトイレットペーパーの増産と寄付を行いました。
「板紙」では「段ボール原紙」の需要が増加しています。オンライン・ショッピングの利用増加が背景にあると考えられる。具体的には、段ボールやクラフト紙袋といった包装の需要が拡大しました。さらにここ数年CO2排出量に対する懸念が加わったことで、化石由来の包装材に変わる素材として期待されている。昭和パックス株式会社3954は産業用包装資材のトップ・メーカーであります。
そして「紙・板紙」と並ぶ次の柱として期待されている素材の1つがセルロースナノファイバーCNF)だ(参考記事)。木を構成する繊維をナノレベルまで細かくほぐすことで生まれる最先端のバイオマス素材であります。たとえば、日本製紙株式会社(3863)はセルロースナノファイバー(CNF)の技術開発、用途開発を進めています。
植物由来の素材で鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度等の特性を有するためCO2の効果的な削減が期待されています。
(図表:行灯)
(出典:Wikipedia)
今、製紙業界は続々と変わっていっている。ペーパーレス化が進み、求められる商品が変わっています。従来の「書く」「情報を印刷する」紙から「包装」「産業用包装資材」といった新たな用途へと移行し、石油由来に変わる新たな素材を開発しているといった条件を満たしている企業が注目されます。
世界の歴史を遡れば、原初の紙はもともと「包む」ためのものでありました。その後、筆記可能な紙が開発されることによって「書く」「情報を記録する」「伝達する」という用途が加わりました。江戸時代には襖や和傘、扇子、提灯などといった建築・工芸材料でもあった。製紙業が衰退していると考えるのは「紙」に対する現代の私たちの認識の狭さから来ているだけであって、紙そのものの利用可能性はまだまだ思いがけないところに転がっているのかもしれないです。
「ウクライナ勢を巡る危機」により、イラン勢と米欧勢による「核合意」にむけての協議復帰が困難になっていると“喧伝”される展開が続いています。これは、イラン勢とロシア勢が友好関係にある為に、今回の「核合意」協議再開に関しても積極的に仲介役を務めてきたロシア勢におけるチャンネルが消滅しつつあるからです。この問題に対して、去る2月19日(ブラッセル時間)にアイルランド勢の・コベニー国防・外相は、ミュンヘン安全保障会議でイランのホセイン・アミラブドラヒアン外相に対し、「合意が可能な瞬間があるが、その瞬間を過ぎると、交渉のコントロール外の理由で合意が遠のくことがある」と述べました(参考)。
他方で、イラン勢の原油生産量が増加しています。中国勢への輸出を増やしているためです。去る1月15日(北京時間)バイデン米大統領は、このことに関して中国勢には制裁を課さないことを決定しました(参考)。これを受けて、北東アジア勢がイラン勢からの原油を確保しようと協議が始まっている中、去る16日(ソウル時間)に韓国勢の外務省はイラン勢の資産凍結の解除を念頭に実務者協議を行ったと発表しました(参考)。
(図表:イラン勢の最高指導者ハメネイ師)
(出典:REUTERS)
国際社会は問題の解決と、イラン勢の「核合意」への復帰がイコールであるという図式が完成されている向きがあります。そういった世間が期待する「大団円大円団」に向けて、イラン勢との協議を今年(2022年)から徐々に再開させている米国勢は、去る2021年12月に、サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官をイスラエル勢に訪問させて外交的な調整を事前に行っていました(参考)。このことからも、中東勢において「核武装」する国が出現することに、イスラエル勢が敏感になっていることは疑うべくもなく、その懸念に「配慮すべきだ」と米国勢が考えていると示唆されています。
しかし、考えてみればイラン勢が「核合意」協議に復帰し、核ウラン濃縮を取りやめるということは、イスラエル勢にとって望ましいことではないだろうか。なぜ、「核合意」への復帰を後押ししないでしょう。
それには、この「核合意」について歴史的な動向を含めて多角的に考えなくてはならないでしょう。一般的に、我が国メディアで目にする「核合意」とは去る2015年4月にスイス勢にて協議され、同年7月20日に国連の安全保障理事会にて採択された「包括的共同行動計画(JCPOA)」のことを指しています。この「核合意」が議論される発端となったイラン勢の「核開発疑惑」は去る2002年8月にまで遡ります。反体制派により、暴露本分が発表され、イラン勢に「核の闇市場」があることが明らかになったのであります(参考)。この暴露と国際原子力機関(IAEA)の調査を受けて、去る2005年より国際社会からの制裁が段階的に始まりました。この制裁は、イラン勢の姿勢をより強硬なものへとすることとなり、去る2010年2月には20パーセント濃縮ウランの生成に着手していることが明らかとなりました。こういった経緯から去る2013年から国際原子力機関(IAEA)は各国勢と協力し2015年の「核合意」に至る協議をイラン勢と歩んできたのです(参考)。
去る2016年1月に国際原子力機関(IAEA)がイラン勢の「核合意」の履行を確認したことから、米欧勢は順次イラン勢への制裁の解除を発表しました。しかし、去る2017年にイラン勢がミサイル発射実験をしたとトランプ政権が非難と制裁を実施する事態に陥り、翌2018年5月に米国勢がこの「核合意」から離脱することを発表したました。米国勢の「核合意」からの離脱は、イラン勢への厳しい経済制裁が再開されることを意味し、そういった要因からイラン勢において革命期から燻り続ける「反米感情」が高まっていくこととなりました。そして、2020年1月、現在進行中の「ウクライナ勢を巡る危機」と同様にあわや「核戦争」か、と騒がれた「Seven Days In January(1月の7日間)」が起きました(参考)。
(図表:中東各国・組織の対立の構図)
(出典:Yahoo!ニュース)
イラン勢において英雄的な存在であったスレイマニ革命防衛隊司令官の暗殺作戦を米国勢以外で知っていたのは、イスラエル勢のネタニヤフ首相(当時)であったと見られています。興味深いのは、暗殺作戦の数時間前に、公に対し不可解なヒントを提供していたことであります。同氏はギリシャ勢のアテネ訪問に出発する前にテルアビブの滑走路で、「この地域が荒れていること、非常に劇的なことが起きていることは知っている」と、国内の記者団に話しました(参考)。イスラエル勢にとっては、イラン勢は周辺のアラブ諸国であるから敵視しているというだけではないです。日々、報じられるイスラエル勢とパレスチナ勢の問題において、イラン勢やシリア勢はレバノン勢のシーア派イスラム組織「ヒズボラ」を支援してイスラエル勢を攻撃しており、その長い直接的な戦闘を経て両国間には埋めがたい溝があります。実際に、ネタニヤフ首相(当時)がメディアに流出したビデオの中で、同氏がトランプ大統領(当時)に対して「核合意」を破棄するように個人的に説得したと自慢している姿が残されているくらいです(参考)。
その対立構造を理解してなお、その「核合意」の順守をイラン勢に迫らずに、経済制裁の継続という過去の歴史から見れば危険な綱渡りを選択する理由には不十分であります。なにが、イスラエル勢の動機となっているのでしょう。そもそも、この「核合意」が協議された2015年に提示された条件が、締結日から10~15年先までの制約が主であって、特に「ウラン濃縮」関連は、去る2016年1月16日から15年間の2031年までの制約しかないです。ネタニヤフ首相(当時)は、この「核合意」は非常に短期的な制約であり根本的な解決策ではないと批判してきました。さらに、何度もの中断を繰り返してきた段階的な制約の履行がなされているとは認められないので、この状態で去る2015年に策定された「核合意」が根本的な変更がないままに、「復帰」だけが“喧伝”される現状はイスラエル勢にとっては避けたい展開であるのです(参考)。
(図表:「核合意」による主な制約のタイムライン)
(出典:日本原子力研究開発機構)
イラン勢は、現在、イエメン勢における内戦においてはフーシ派反政府勢力に援助を行っており、去る1月17日(アブダビ時間)にドローンによってアラブ首長国連邦勢(UAE)に攻撃を行ったことからも、テルアビブも近いうちに彼らの手の届くところにあるターゲットになる可能性があるということをイスラエル勢は警戒しているのであります(参考)。このような状況下で、イラン勢が「核合意」への復帰を叶え「大団円大円団」であるかのように国際世論が形成された場合に、来る2025年にはイラン勢首脳部に凍結されていた何十億ドルもの資金が戻ってくることになります。さらに、現在の原油価格高騰のトレンドが続く限りイラン勢の輸出産業は好調に推移するでしょう。
イラン勢は長い経済制裁により、国民は疲弊し特に農村部では激しいデモ活動が繰り広げられており(参考)、また「ウクライナ勢を巡る危機」の短期的な解決が見込めない現在の状況では米欧勢がイラン勢との協議を加速させる材料がそろっていました(参考)。今次、「ウクライナ勢を巡る危機」により雲行きが怪しくなってきたが、前出の事情から、去る2021年11月には、イスラエル勢の議会はイラン勢の脅威に備えるため、国防関連への支出を70億シェケル(2500億円ほど)増加させる予算案を可決しました。さらに、イスラエル勢は新たな「アブラハム協定」のパートナーとの安全保障上の結びつきを深める構えであります。ドバイではホロコースト記念展が開かれ、モロッコ勢とは学術交流が進み、バーレーン勢においては医療センターを立ち上げています。ヨルダン勢とエジプト勢との和平協定によって弱体化したとはいえ断ち切れなかったアラブ諸国のイスラエル勢への敵対心という包囲網は、後退しつつあるように見えいます。最大の関心事とされるサウジアラビア勢についても、イスラエル企業は「さまざまな方法、形、形態で」協力しており、事態は前進しているとイスラエル勢は主張しています。イラン勢とイエメン勢において対立するサウジアラビア勢やアラブ首長国連邦勢も、イスラエル勢が展開する包囲網に「反発」はないようであります(参考)。
イラン勢の「核合意」への復帰は、短期的に見れば国際的な原油価格の高騰に対するカンフル剤のような効果を果たす可能性はある。拙稿である「原油先物価格の高騰は全て“演出”?~電気代高騰はどこまで続くのか?~」(参考)でも示した通り、イラン勢の原油の輸出は昨年(2021年)から既に大々的に再開されており、中国勢の件も含めて考えれば「核合意」への復帰が実際の取引市場にインパクトを与えるというよりは、あくまでも「先物取引」への反応として価格が下落する可能性があるということに過ぎないです。その短期的な価格の下落トレンドを優先することが、今後の中東勢における地政学リスクを急激に高める可能性を見落としていないでしょう。我々は、今回の「ウクライナ勢を巡る危機」の動向を後追いで一喜一憂するのではなく、こういった見通せる紛争リスクに対し、今こそより慎重になるべきです。
グローバル・インテリジェンス・グループ リサーチャー
横田 杏那 記す
我が国では、東京夏季五輪のメダルラッシュと、新型コロナウイルスの感染爆発ともいえる状況でニュースが席巻されている中、マーケットの世界では「中国バブル崩壊か」との懸念が広まりました。というのも、中国当局によるIT・教育業界への規制強化の動きを受けて、中国株からのマネー流出が加速しているのです。
2022年に共産党大会を控えている習近平指導部としては、市場で独占的な地位を築いているIT企業への統制を強めることで、長期政権に向けて国民の支持を得ようとしていることが背景にあります(参考)。また、規制強化の対象は教育業界にも及びます。少子化対策として、学習塾の設立を規制したり、既存の学習塾は非営利化させることで、年々増加している教育費の高騰を抑え込み、出産をためらう夫婦にこれを促すことが狙いだといいます(参考)。近年、中国勢の教育産業は1000億ドル(約11兆円)規模にも達し、今後も成長期待が高まっていたが、「政府の通知1本でビジネスモデルが根本から覆されるなら、中国企業の株価バリュエーションは大きく見直さなければならない」との悲鳴が上がっています(参考)。
こうした規制を受け、去る7月26日(北京時間)の中国本土のCSI300指数と香港ハンセン指数は大幅に下落、米上場の中国大手企業98銘柄で構成するナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数も3営業日の下落率が約19%と、過去最大を記録しました。
(図表:大幅に下落したIT・教育関連株)
(出典:Bloomberg)
7月28日夜(北京時間)には、市場の懸念を緩和するため、中国証券監督管理委員会(CSRC)が大手投資銀行幹部とオンライン形式で会合を開き、規制面の措置について「拡大解釈」すべきでないこと、世界市場が大幅に変動しないよう政策を安定的に導入することが伝えられました。ロイター通信によると、同会合に招待された投資銀行は、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、UBSなどの中国国内で事業免許を取得している外資の投資銀行だけだといいます(参考)。
(図表:大手投資銀行幹部との会合を主催した方星海CSRC副主席)
同会合を受けてか、29日には中国株式市場は大きく反発する動きもみせていますが、中国指導部による管理・統制強化は「これが始まりであって、終わりではない」との指摘もあり、まだまだ「中国バブル崩壊」は予断を許さない状況にあります。
果たして、今次の規制強化がトリガーとなって中国バブルは崩壊へと向かうのでしょうか。一般的にはこうした規制強化の余波や、不動産バブルの失速など経済的要因が考えられますが、他方で中国勢をめぐっては、昨今不気味な動きが散見されています。
去る6月14日には米CNNが「台山原子力発電所での放射性物質の漏洩」を報じています。これは、広東省の台山原子力発電所で放射性物資漏れが生じ、周辺地域の放射線漏量が高まっているとして、同原発の運営に協力する仏系企業「フラマトム」が米国原子力規制委員会に技術協力を求めたというものです。7月30日には破損した燃料棒を交換し、破損原因を調べるために1号機の運転を停止したと発表されましたが、この報道に接し想起されるのが、去る1986年4月25日にソ連(現ウクライナ勢)で発生したチェルノブイリ原発事故です。
当初事故は隠蔽されましたが、2日後、西側諸国が異常に気付きました。4月28日の朝、スウェーデンのフォルスマルク原子力発電所で、職員の靴から高線量の放射性物質が検出されたのです。その職員が地図と風向きを確認したところ、その先にチェルノブイリがあったのです。
同日中にスウェーデン勢の外交官がモスクワと連絡を取り原発事故の有無を問い合わせたが答えは「ニェット(No)」であったため、スウェーデン勢は国際原子力機関(IAEA)に事態を報告するとの意向を伝えると、ソ連勢は一転、チェルノブイリで事故があったことを認めたのです(参考)。チェルノブイリ原発事故から35年となった2021年4月26日には、ウクライナの情報機関であるウクライナ保安庁が同原発事故の機密文書の一部を公開しましたが、それよると事故前からチェルノブイリ原発ではトラブルが相次ぎ、危険性が報告されていましたが、パニックを起こさないよう隠蔽されていた可能性があるといいます(参考)。
(図表:「石棺」に覆われたチェルノブイリ原発4号炉)
(出典:BBC)
これらソ連勢による隠蔽工作は、ソ連首脳部のみならず、より現場に近い組織、人間が事実を隠蔽しようとする動きがありました。スターリン以来の恐怖政治から当事者が懲罰を恐れ、保身を第一に考えた故であるが、この体質を含め、もはや情報隠蔽を不可能と判断したゴルバチョフは、「グラスノスチ」(情報公開)の徹底を指導、すると政府への不信感が募り、最終的にはソ連勢の体制崩壊へとつながったのです。
欧米勢によって暴かれた今次「台山原発事故」は、チェルノブイリ原発事故とフラクタルな現象を中国勢において引き起こすためのものであるとすれば、「中国バブル崩壊」はこうしたマーケット以外の要因もトリガーとしてあり得るのではないでしょうか。
最後に、中国勢の原発をめぐっては英国勢でも分裂が生じていることが報じられており、今後の展開を左右しかねません。すなわち、中国国営電力会社である中国広核集団が英サフォーク州のサイズウェルC原子力発電所建設への関与を検討している件について、一部の議員が、中国勢が国家の重要インフラにおいて役割を担うべきではないと反対を表明しているのです。他方で、ジョンソン英首相は、元バンク・オブ・アメリカ(BofA)幹部で首相補佐官のダン・ローゼンフィールドの影響もあって中国勢の投資に柔軟化しており、同原発建設をめぐる動きが今後の展開の指標の一つとなるのではないでしょうか(参考)。
去る2021年7月13日(北京時間)、中国は海南島に世界初の商用モジュール式小型原子炉である「Linglong1」の建設を開始しました。そもそも、「小型原子炉」とはどういったものなのか。またなぜ北京や上海ではなく海南島なのか、その思惑を探りたいと思います。
(図表:海南島に建設中の小型原子炉)
(出典:人民日報)
いわゆる「脱炭素化」に向け、エネルギー分野で様々な技術開発が進められる中で、
より安全で経済的な原子力発電ということで、原発業界が力を入れているのが「小型原子炉(小型モジュール炉、SMR)」です。
原子力発電は長らく発電コストが安価な電力供給減とされてきたが、とくに1986年のチェルノブイリ原発事故、2011年の福島第一原発事故を経て、ひとたび事故が発生すれば深刻な環境汚染を生じさせ、その後も莫大な廃炉費用が必要となることが明らかになると、その経済的なリスクがかえって大きいと認識されるようになってきました。世界の原発における送電開始と閉鎖の推移をみても、ここ数十年は規模が縮小している原発業界だが、今、安全性・経済性の課題をクリアする小型原子炉をもって再び活況を取り戻そうとしているのです。
(図表:世界の原発における送電開始と閉鎖の推移)
(出典:世界原子力協会)
小型原子炉は、国際原子力機関(IAEA)の定義では「出力が30万キロワット以下」の比較的出力の小さい原子炉のことをいい、従来の大型原子炉の3分の1から5分の1ほどとなります。
また、プレハブ住宅のように、主要な部分を事前に工場で製造してから現地で組み立てることができる「モジュール」構造のため、
建設費が1兆円を超えることも珍しくない既存の原発に比べて、建設コストは数百億に抑えることも可能となり、さらに5~7年かかっていた工期も約3年に短縮できるといいます。
さらに最大の特徴とされるのが、その安全性です。「小型」にすることで大型の原子炉よりも冷却しやすくなり、福島第一原発事故のように非常用電源を喪失した場合でも、追加の冷却水や電源を必要とせず、炉心を冷やして安全に停止させられるというのです。
実用化には、日本を含む各国の企業が取り組んでいます。米オレゴン州に本社を構えるスタートアップ企業「ニュースケール」は、これまで米エネルギー省から4億ドル(約430億円)を超える資金支援を獲得し、米原子力規制委員会(NRC)の技術審査も終えており、世界で最も商業化に近い企業とされています(参考)。ニュースケールには我が国からも日揮ホールディングスとIHIが出資しており、マーケットも注目しています。最も早い稼働はアイダホ州アイダホフォールズで、2029年の発電を予定しています(アイダホフォールズには、原子力に関する国立研究所が立地しており、我が国の東海村と姉妹都市です)。
米国だけではありません。英国ではロールス・ロイスが主導して「SMRコンソーシアム(小型原子炉開発企業連合)」を立ち上げ、小型原子炉に参入しているのです。
(図表:ロールス・ロイスが主導する小型原子炉計画)
(出典:Rolls-Royce)
中国やロシアでも開発の動きが進んでいます。ロシアの国営企業は原子力砕氷船の技術を応用し、シベリアや北極海の資源開発基地などで活用するとみられています。
そして、中国では海南島で建設を開始したとの今次報道にたどり着くわけです。今年(2021年)の全国人民代表大会(全人代)を通過した第14次経済社会発展5カ年計画(2021~2025)によると、中国政府は今後5年間に20基前後の原発を追加建設する中で、小型原子炉と黄海上の海上原発事業も推進するといいます。計画通りに進めば、米国、フランスに続き3位である原発発電容量が2025年には世界1位となります。
海南島に小型原子炉を建設する目的としては、南シナ海の海上での電力供給を目指しているとも伝えられているが、そもそもこれは中国における海南島の位置づけがより重要となっていることの証左であると言えるでしょう。
海南島は「中国のハワイ」とも称される観光地であるが、同時に中国海軍南海艦隊の拠点としても有名です。まさに、観光地であると同時に、米太平洋艦隊の司令部を置くハワイと全く同じ機能を担っているわけです。その海南島は今、「観光」・「軍事」に加え、香港に替わる「金融」の拠点となりつつあるのです。去る2021年6月10日には全人代にて海南島を自由貿易港として国内外ファンドによる投資を一部認める基本法が可決しています(参考)。
(図表:「中国のハワイ」と称される海南島・三亜市)
(出典:Wikipedia)
また中国政府は同島を「クリーンエネルギー島」と位置づけ、30年までにクリーンエネルギーの発電容量を85%前後に高めるといいますが、まさに今回の報道にある小型原子炉建設はそのための手段といえるでしょう。これまで香港が担ってきた機能の移転先として海南島については引き続き注視していきたいと思います。
2020年4月、トランプ前米大統領が新型コロナウイルスの感染拡大に際して「たくさんの紫外線か、または強い光を体に当ててみたらどうだろう」との発言をしたのを覚えているでしょうか(参考)。
米国土安全保障省のビル・ブライアン次官が新型コロナウイルスは湿気や熱にさらされるとはるかに速いペースで死滅する旨述べたことを受けた発言でした。
同大統領は当該発言と同時に「殺菌効果のある漂白剤や消毒剤の殺菌効果を身体内部に注入することはできないか」などと述べており、
これに対して世界保健機構(WHO)が紫外線は皮膚の炎症を引き起こす可能性があり、
漂白剤は有毒化学物質であり吸入で灰が損傷する恐れがあるなどと指摘しました。他にも大学教授や医者などがこうした発言の危険性を指摘する事態とまで当時はなりました。
(図表:ドナルド・トランプ)
Official portrait of President Donald J. Trump, Friday, October 6, 2017. (Official White House photo by Shealah Craighead)
(出典:Wikipedia)
上述の発言は行き過ぎであるとしても、実は日光が新型コロナウイルスによる死亡リスクを低減する旨の研究結果が“The British Journal of Dermatology”に掲載されました(参考)。
同研究では1日の平均紫外線量が100キロジュール/平方メートル増加すると新型コロナウイルスによる死亡リスク比(特定の人口集団が死亡する可能性と、他のすべての人口集団が死亡するリスクとの比)が米国勢では29パーセント、イタリア勢及びイギリス勢では32パーセント減少したと推定されています。
この死亡リスク減はなぜ起こるのでしょうか。
そもそも日光は新型コロナウイルスに限らずインフルエンザウイルスや結核など他の感染症予防との関係でもその重要性が注目されてきました。
従来これは免疫機能にかかわる「ビタミンD」の生成に日光がかかわるからであるという理解が主流でした(参考)。このビタミンDは魚介類やキノコ類にも多く含まれるほかサプリメントなども存在するため、日光に当たらずとも経口摂取はある程度可能でした。
ところが今次研究においては日光の効果についてこれまでのビタミンDとは異なる意味で重要性が指摘されているのです。
同研究はUVB(タイプB紫外線)レヴェルが低く体内で有意なビタミンDレヴェルを生成できない地域で行われました。
このため日光と死亡リスクの相関関係について
(1)日光を浴びた皮膚から一酸化窒素が放出されることによりSARS-CoV-2ウイルスの複製能力が低下する可能性、
(2)日光への曝露量の増加は心臓発作の減少や血圧の低下と関連しているとされ、これらの要因が新型コロナウイルスによる死亡リスクを低下させる可能性という2つの理由が示されています。
世界で年間を通して紫外線の照射量が高い国には例えばケニア勢(ナイロビ)、パナマ勢(パナマ)、タイ勢(バンコク)、スリランカ勢(コロンボ)、シンガポール勢(シンガポール)などがあります。
これらの国の死亡者数は(2021年)4月12日時点でケニア勢2348人、パナマ勢6163人、タイ勢97人、スリランカ勢598人、シンガポール勢30人でした。
そもそもの人口や統計の信頼性という問題はあるものの、確かに比較的死亡者数は少ないと言えるのではないでしょうか。
日光の重要性や光の治療効果は古代より認識されていました。
古代エジプトでは日光浴が盛んにおこなわれ、古代ギリシアでは宝石などを通して色を付けた日光による日光療法も実践されていました。
(図表:Akhenaten, Nefertiti and their children)
(出典:Wikipedia)
しかしここで重視されていたのは「紫外線」ではなく「可視光線」だったのです。
こうした紫外線(及び赤外線)や可視光線といった太陽光のスペクトル分解は人間の資格をもとにした分類であり、
例えばある種の昆虫や鳥類は紫外線が黒く見えることで花の蜜のある場所を把握しているといわれています。
このように生存に必要な部分の光が見えるように進化していると考えれば、人間にとって必要な光はいわゆる「可視光線」にあたる部分の光であるとも考えられます。
光の持つ効果にはいまだ明らかでない部分も多いです。
今後新型コロナウイルスをきっかけに日光の持つ意味が改めて明らかにされていくのでしょうか。
また日光の効果が注目されることで、日照時間が長い、もしくは日光の照射量が多い地域に人口が集中するといった事態に進展していき新しいマーケットが生まれるのでしょうか。
中国が「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」に関するグローバル・ルールを提案した旨の報道がなされています(参考)
中国は去る2014年来、世界に先駆けた中央銀行デジタル通貨(デジタル人民元)の導入に注力してきました。これを推進する中国人民銀行(PBOC)のデジタル通貨研究所局長が国際決済銀行のセミナーにおいて中央銀行デジタル通貨発行に関わる一連のルールを提案したのです。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入の議論は世界的に活発に行われています。しかし特に資本主義国においてはその導入により中央銀行以外の民間銀行の地盤沈下を招くといった問題が懸念されており、実現には至っていないのが現状です。
こうした中、日本の中央銀行である日本銀行(以下「日銀」)は去る(2021年)3月26日、「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」を新たに設置すると発表ました(参考)
日銀は直近での中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行は予定していないものの、将来的にこうした決済システムが世界のスタンダードとなる可能性から「準備をしておくことが重要」である旨、同「連絡協議会」冒頭あいさつにおいて日銀総裁が述べています(参考)。
また中央銀行デジタル通貨(CBDC)の決済システムを担うのが民間企業となることなどから、今月(2021年4月)開始予定の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験の円滑な実施に資するよう、民間事業者との情報共有を図ることが同「連絡協議会」の目的であるとしています。
では日銀はどのような中央銀行デジタル通貨(CBDC)を構想しているのでしょうか。
2020年7月2日、日銀は「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題したレポートを発表しました。
ここでは中央銀行デジタル通貨(CBDC)が現金と同等の機能を持つために「ユニヴァーサル・アクセス(電子端末へのアクセスが難しい子どもや高齢者の考慮)」と「強靭性(地震等の災害時にも利用できるオフライン決済機能)」が要件とされます。さらに同レポートではブロックチェーンを含む分散型台帳技術(DLT)の活用が示唆されています。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)はもともと、デジタル化の中キャッシュレス社会が推進されるとともに是非が議論されてきました。
ビットコインをはじめとする多くの仮想通貨はブロックチェーンをその取引データ(トランザクション)の技術的基盤としています。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)が世界規模で発行されその特性が最大限活かされるためには、各中央銀行デジタル通貨(CBDC)インター・オペラビリティ(相互互換性)が重要となります。
こうした観点から中央銀行デジタル通貨(CBDC)がもし発行されるとすればブロックチェーンを基盤としたものとなる可能性が高いと言えるのではないでしょうか。
ブロックチェーンは「ハッシュ関数」と呼ばれる取引データの暗号化技術などを用い、改ざんされることはないとされていました。
ところが去る2018年には国産仮想通貨である「モナコイン」が大規模攻撃を受けブロックチェーンの書き換えにより1000万円以上の損害を受けたのです(参考)。
また翌2019年にはビットコインやイーサリアムでもデータの書き換えによる二重引き出しといった手法でのハッキングが行われました(参考)
これらの実行された手口に対しても現状対抗策は出されていません。
加えて2021年2月末から我が国のメガバンクのひとつであるみずほ銀行ではシステム障害が相次ぎ、通帳がATMに取り込まれるなどといった事例が相次いだことも記憶に新しいのではないでしょうか。
民間企業が中央銀行デジタル通貨(CBDC)全体の決済システムを担うとき、こうしたトラブルが起これば決済システムは機能するのでしょうか。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入への動きは、デフォルトへのカウントダウンとなるのでしょうか。
街中を歩いていると、今や高齢層ですらスマートフォンを持つ時代になったのを実感します。
また子供家族とのやり取りを希望したり孫が教えたりするからなのか、スマートフォン、さらにはガラケーすら持ってはいないものの、iPadなどのタブレット端末は保有しているという高齢層も増えている印象があります。
総務省は日本人のスマートフォン保有率について、全年代平均で56.8パーセント、60代で33.4パーセントに上る旨公表しています(2016年ベース)。またスマートフォン保有率が増大するのに比例して日々のインターネット利用時間も増大しているといいます。グローバル規模で見てもスマートフォン・マーケットは成長し続けています。2018年第4四半期には1.2パーセントの成長率を記録しました。
このように私たちの生活にインターネットはかつてない程に侵入してきています。
だからこそ今まで以上に、仮にインターネットが私たちの生活から消えたときのインパクトは大きくなっているというわけです。
実はインターネットは今、世界的に分断の危機に陥っているのをご存じでしょうか。
2017年5月に世界的に発生した、ランサムウェア「WannaCry」によるサイバーテロを思い起こすだけでもそのネガティブ・インパクトがすさまじいことは明らかです。
英国会計検査院はこれにより英国にある全地域医療連携システムの約3分の1が多大な影響を被ったとの調査結果を報告しています。
コロナの影響もあり、今や預金も株式もデジタル化され、ほとんどの公的書類もデジタル上で管理が驚くほどのスピードで進んでいます。特に銀行がサイバー攻撃を受けた場合に世の中に与えるインパクトは致命的です。ところがこうした事態が仮に起こったとして救世主となり得るのが、実は最先端テクノロジーの結晶と想われがちな仮想通貨なのです。
今回はインターネットが現在抱えている状況を明らかにした上で、金融機関のインターネットへの依存度合いを紹介します。
金融がインターネットに依存しているからこそ、実は仮想通貨が一つの抜け道になり得るということをお話ししたいと思います。
~国家による分断を図るロシア~
まずは、インターネットの経済的な役割について振り返ることにします。
そもそもインターネットの導入が一般的になったのは1995年頃でしたが、米国では1980年代からすでにPCが一般に導入されてきていました。
これと同時に、それ以前までロケット・サイエンティストとして米航空宇宙局(NASA)や大学で宇宙開発・研究に携わってきた物理学者らが、宇宙開発予算の縮小と共にウォール・ストリートへと流れ、コンピュータ導入の一般化とも相まって金融工学の発達・普及を促していきました。そうした流れの中でインターネットは(米国流)金融資本主義のグローバル化を一挙に加速化させました。水野和夫・法政大学教授が「電子・金融空間」と呼ぶものの誕生です。
今ではスマートフォンを通じてインターネットへのアクセス率は飽和しつつあるとも言えなくもないでしょう。誰でもインターネットにアクセスし、もはや「21世紀の石油」とすら呼ばれている「情報(information)=データ(data)」を容易に誰もが取得しています。ユーザー数増加率が逓減しつつある中で新たに「加速化」という方向で情報通信技術は発展してきました。
すなわち5G、さらには6Gの導入によりインターネット通信をますます加速化させていく、また通信量を増大させるという方向性へと舵を切っていたというわけです。
こうした中でインターネットやデジタルの氾濫に対する反対が露骨化しているのは周知のところでしょう。直近で言えば、ニュージーランドでの銃乱射事件を受け、フェイスブックはライブ配信の制限をせざるを得ない方向へと追い詰められつつあります。そもそも2016年以来、「ポスト真実(Post-Truth)」が“喧伝”され、フェイク・ニュースが一般で議論されるようになり、グーグルなどいわゆるFANGなどと呼ばれる企業が影響を受けてきました。そうしたインターネットやデジタル経済への反抗として生じているのが国家によるインターネットの管理であり、その口火を切ったのがロシアなのです。
ロシアの連邦議会下院が2月12日(モスクワ時間)、外国とのインターネット接続を規制する法案を通過させました。この法案の主内容はこうなっているといいます:
1.送受信データの経路を制御するルールを策定し、ロシアのユーザー間で交換されるデータの外国移送の最小化を図る。
2.送受信データのクロスボーダーライン・ポイントの決定。危機に直面した際にデータ送受信の集権化を実施。
3.データ送受信元を特定する技術的手段の通信ネットワークへの導入。禁止された情報を伴うソースへのアクセス、通過するデータの制限。
4.外国のインターネットサーバーへの接続が不可能となった場合に備えた、ロシアのインターネットリソースの能力を保障するインフラの整備。
ロシア国内でも一般レベルだけでなく、関係省庁レベルで競争力低下や接続規制にかかるコストの観点から批判的な声が強いようです。それ以外にも、インターネットが世界規模で一時的なシャットダウンを経験したという設定でのテストを検討しているという話もあります。(なお同実験は2019年1日までに行われる予定だったというが、それが実施されたという報道はどうも見当たりません)。
もっとも、こうしたグローバルでのインターネットからの遮断は今に始まったわけではありません。北朝鮮があるからです。北朝鮮はいわば国全体を内部ネットワーク化しているわけで、ロシアの専門家の中には現在ロシア当局が進める形よりも、こうした北朝鮮のような内部ネットワーク化の方が低コストで簡単であると薦める声すらあるといいます。
「このような措置はいわば“独裁国家”が行う身勝手な動きだ」「民主主義が根付いた西洋諸国で起きるはずがない」という批判を述べる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、そうした方に考えて直して頂きたい動きが、実は英国を中心として起こっているのです。
個人によるインターネット奪還 ~英国が考えるインターネット解体~
インターネットを巡る技術はさまざまなものがありますが、その中でも多大な貢献をしてきたのがWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)でした。これを開発したのが英国人のティム・バーナーズ=リーです。同人が構想した当時のウェブとは、分散化されたプラットフォームで、誰もがサイトを公開し、ほかのサイトにリンクを貼れるというものでした。
この技術を開発しナイトの称号を有するティム卿が2018年、ウェブを支えるルールや基準を確立する必要があるとの認識をもつ人々と共同で、Contract for the Webというコミュニティを創設し、インターネットにあるデータを個人の下に取り戻そうとしているのです。同人はこれを「インターネット界のマグナ・カルタ」と呼んでいるそうです。
国家としての英国もこれを支援するかのような動きを見せています。いわゆるテクノロジー・ジャイアントに対してユーザーを「保護する義務」を強制させる法案を検討中のようです。英国ですら、インターネット空間の解体運動が生じている中、このまま何も起こらないとは決して言いきれない状況なのです。
~インターネット障害下で活躍し得る仮想通貨~
インターネットに障害が起きたとして最も影響を受ける一つが金融です。今や、あらゆる金融商品がデジタル上で取引されています。こうした中で国内の資金決済システムである全銀ネットは、元来公衆交換電話網を用いるデータ通信手段を利用してきました。しかし、2024年1月にNTTの固定電話網がIP網へ移行し、これに伴いISDNの「ディジタル通信モード」が終了することから、2023年12月末までに、金融機関や日銀、利用者ら間のコンピュータ接続方式であった全銀協標準プロトコルのうち、公衆交換電話網を停止する措置を取る旨、一昨年(2017年)に公表しています。もはや既存の金融システムはインターネットへの依存度をますます増大させているのです。
これに対し、一見インターネットが必須に想える仮想通貨が実は真価を発揮する可能性があるのです。仮想通貨(ブロックチェーン)はアクセスするのにインターネットが利用されており、またデジタル上の通貨だということでインターネットの必要性が前提視されてますが、実はそうではありません。
古くは2014年にフィンランドで実施されてきたのですが、ビットコインはアマチュア・ラジオを通じて送信することができるのです。
具体的にはインターネット非接続でアンドロイド携帯と4つのポータブル・アンテナをつかい、ニュージーランドでの実験では12.6km先に仮想通貨を送信することが出来たのです。
日本においても、金融とは関係ない形ですが、博報堂の子会社がトークンとして実装されたデジタル・アセット情報をラジオ番組の音声に埋め込むことで視聴者に転送し、視聴者はスマホのDappsでそれを受信するという配信方法を実証しています。
無論こういったシステムは現時点でインターネットを前提としたものですから、直ちにインターネットに置き換わることは無いでしょう。但し、ラジオというアナログ機器がデジタルを上回る可能性があるという「抜け道」が現前にあるのです。そのことを念頭に置きつつ、インターネットの存在といったこれまでの“当たり前”はもはや“当たり前”ではないという柔軟な発想に切り替えなければならないでしょう。