中国 - コロナ後の人生。| 気づきに満ちた世界と私
2022年03月08日

ウクライナ情勢から見る「近くて遠い中露関係」

去る2022年2月4日(北京時間)、氷点下の冷気が「鳥の巣」と呼ばれる国家体育場と選手らを包む中、2大国のトップによる「新時代の幕明け」を象徴するかのように握手が交わされた。ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席であります。

この2大国により共同で声明が発せられたことは歴史上大きな意味を持ち、プーチン大統領も、「世界中で比べられない程一番強固な関係である(“a relationship that probably cannot be compared with anything in the world.”)」と発言しました(参考)。

握手を交わす中国の習近平国家主席(左)ロシアのプーチン大統領(右)
出典:GlogalResearch

実際中国とロシアは首脳会談で、西側諸国の安全保障の枠組み「AUKUS」や北大西洋条約機構(NATO)から我が国の東京電力福島第一原子力発電所に係る処理水の海洋放出についてなど包括的に話し合いました(参考)。

では、この2か国が共同声明で示した通り、中露の蜜月という単純な「新時代」の構図を見せるのでしょうか。昨今のウクライナ情勢も踏まえつつ、今後の国際秩序について考えてみたいです。

まず中露関係だが、これまで幾度となく蜜月な関係を対外的に示してきました。例えば、米中貿易関係が激化した去る2019年6月5日、習近平国家主席がクレムリンに足を運びプーチン大統領と首脳会談を行きました。会談では、習近平国家主席がプーチン大統領を「親友」と呼ぶなど、中露関係の良好さを対外的に示しています(参考)。

また、この蜜月関係は民間の研究にも及んでおり、特に宇宙開発はその最たる例であるでしょう。ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスは去る2021年3月9日に、宇宙開発の分野で互いの連携を強調し、米国が主導する有人月探査「アルテミス計画」に対抗する構えを打ち出しました(参考)。

しかし、こうして定期的に中国とロシアの友好的な関係を発信しつつも、実際にシリア内戦などで事態が推移すると両国とも表面上は単独行動を見せ、安保理決議で反対表明をするとき以外は単独行動が目立っていました。こうした両国の関係性から、単に米国の秩序に挑戦する蜜月の関係というわけではないのではないかという疑問が生じています。

カーネギー・モスクワ・センターのアレクサンドル=ガブ-エフ上席研究員によると、中露関係の築く重要なファクターとして、「国境の安定化」と「経済的な依存」、それから「特異な統治体制」を提示しています(参考)。

国境については、両国とも広大な国土を有していることから接する国境線も長く、かつて冷戦時代には、ダマンスキー島で武力衝突にまで至っている。経済的依存については、ロシアが世界有数の資源大国であり、中国はその主な輸出相手国となっています。そして、言及するまでもなく特異な統治としては、西側諸国に対抗する構図で両国の正統性を確立しています。

ダマンスキー島に侵入している様子
出典:RUSSIA BEYOND

こうしてみると中国とロシアにとって蜜月関係でいることで関係の安定化を図っており、中露間の対立要素を可能な限り払拭するためには米国の存在が不可欠であるということがわかります。

しかし、緊迫しているウクライナ情勢を契機に、中露の単独行動にも変化が見え始めています。例えば、去る2022年2月16日(北京時間)、ウクライナ情勢を巡り米国とロシアが対立を見せている中、中国外務省は米国が軍事的脅威を“演出”し、緊張を作りだしていると批判して、ロシア側に立ちました(参考)。

またロシアがウクライナ侵攻後も、中国外務省はイギリスやEU諸国と会談し、ロシアの安全保障に関する訴えは重視され、適切に解決されるべきだと、対外的にロシアの主張に理解を示す内容が発表されています(参考)。

 

ウクライナ問題を巡り関係国に交渉再開を求める王毅中国国務委員兼外相
出典:日本経済新聞

ウクライナ情勢における中国の介入は、確かに今後発生しうる台湾問題を想定したものと捉えられるかもしれないです。

しかしここで重要となるのは、今回ロシアが引き起こしている問題のウクライナは中国にとって一帯一路の重要なハブであるということであります。中国にとってウクライナは中国とヨーロッパを繋ぐ重要な拠点となっており、一帯一路への参加表明をいち早く表明した国であることも忘れてはならないです。すなわち今回中国とロシアとの利権が重なりあう場所がウクライナであり、今後の展開次第では中国とロシアの関係の死角となり得るファクターとして重要なのであります。

このことから米中露関係、とりわけ中国とロシアとの関係の歪みを呈する契機となるのがウクライナ情勢である可能性が高く、ロシアのウクライナ侵攻には中露関係の死角を突いた米国の思惑も見え隠れするのであります。

グローバル社会においてヴォラティリティ―を繰り返し生んできた米中露の3か国だが、「グローバル共同ガヴァナンス」も変容しつつあり、この意味でウクライナ情勢とその先の展開から目が離せないです。

中国とロシアとの関係に影を落とす皮肉な“新時代”となってしまうのか、ポスト・ウクライナ危機へ向けた国際秩序形成とその先の展開に注視すべき展開であります。

2022年02月16日

公務員給与削減に乗り出した中国:日本のバブル崩壊に学ぶしたたかな戦略とは

中国では労働市場の低迷に直面していると伝えられている。都市部における失業率は5パーセント程度でほとんど変わらないが、この数字は地方から都市部で出稼ぎして働く労働者数の実態を反映しているわけではないです。

都市部ではパンデミック以前には、農民工の数が毎年200万~300万人増加していたが、パンデミック以降、農民工の数は増えていないです。また、サービス業は中国における最多の就業先で、労働力の約47パーセントを占めているが、パンデミック以前の水準を下回ったままであり、製造業の雇用も伸び悩んでいます(参考

こうした労働市場の変調を反映して、大学卒業後の進路選択として、公務員試験、または大学院受験に向かう傾向が強まっています。

2022年に行われる国家公務員試験に応募した人数は212万人余りで過去最高となりました(参考)。その後、正式に応募し、受験料を支払ったのは約174万人、実際の受験者数はその中の約142万人でした。この結果、応募倍率は46倍となり、採用ポストの数が変動していることもあって前年と変わらない数字であるが、応募者数の増加はパンデミック以降の経済的混乱を反映して、就職先として国家公務員が人気であることを示しています。

また、地方公務員も同様に高倍率となる傾向を示しており、2020年の雲南省と貴州省では、平均競争倍率が84倍でした。(参考)。公務員試験受験者が増加している一つの影響として、公務員試験受験塾がかつてないほど市場規模を急速に拡大させている傾向であるとのデータも存在しています。(参考

図表:中国における国家公務員試験応募数(資格審査を通過した人数)(単位:万人)
出典:Baidu

 

図表:中国における公務員試験受験塾の市場規模(単位:億元)
出典:Baidu

 

しかし、中国の公務員、特に地方公務員は就職先として安定であるとも限らないといえるような内容の報道も伝えられています。

サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、パンデミックの影響で地方政府の債務超過は深刻であり、中国本土の中で上海だけが昨年(2021年)11月の時点で財政黒字を達成しました。そのため、広東省の公務員の場合、主に住宅補助金のような非給与給付に削減が適用されるなど、地方公務員の一部に対しては、給与削減策が行われている模様であります(参考)。

もっとも、公式に地方公務員の給与削減が行われているとの発表はなく、中央の公務員にも給与削減が及んでいるとの情報は見当たらない。それでも、パンデミックによる支出の増加や住宅市場低迷などのため収益が減少し、土地売却を主要な収入源として依存する地方自治体の財政が悪化していることは間違いなさそうであり、中国のネット上にも公務員給与が削減されているという情報は存在しています(参考)。

また、中国は日本のバブル崩壊過程を注視し、教訓を得ていると考えられることから、大幅な公務員の給料削減を行わずに推移してきた日本を反面教師として対処している可能性も考えられます。

それでもなぜ中国勢で公務員は就職先として人気があるのでしょう。

中国メディアによると、その理由として、

  1. 公務員試験は大学入試と同様に公平な試験であること
  2. 仕事上のやりがい
  3. 給付金支給などの福利厚生
  4. 社会的な地位
  5. 安定性

といった理由が列挙されています(参考)。

つまり、パンデミックの影響により、民間企業が直面している苦境を反映する形で安定性の高いキャリアとして公務員人気が高まっていることが推察されています(参考)。また、給与が削減されているとしても依然人気が高い理由として考えられるのは、給与削減はすべてのポストではなく、地域やポストによるとも考えられ、従来、ボーナスや福利厚生が充実していた一線都市が減給策をとっており、その他の地域などでは減給されていないという事情も考えられいます(参考)。

他方で、こうした安定性や待遇に関わる議論以外にも、汚職による賄賂が手に入るためではないかとの推測も消えてはいないです。例えば、新疆ウイグル自治区のトップ交代については左遷である可能性も指摘されているが(参考)、チベット開発の際に出土したヒスイなどを「貢ぎ物」として北京の幹部に送っているとされ、出世という可能性もあるかもしれない。こうした「貢ぎ物」として、他にも、歴史的な絵画なども出回っています。

就職先としての人気度の推移は、経済・社会情勢における変化を如実に表す指標の一つであり、日本でも同様な傾向があります。中国における社会不安がどれくらい表れていると見るべきなのかについて、公務員への就職人気やその給与削減の動向が一つのカギとなるのかもしれないです。

 


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