エネルギー - コロナ後の人生。| 気づきに満ちた世界と私
2022年03月29日

「ポスト・コロナ社会」の理想と現実:2022年の地政学リスクから読み解く

2022年に入り、世界各地で地政学リスクの高まりがみられている。中央アジアのカザフスタンでは、年明けから大規模な反政府デモに揺れており、事態鎮静化のためにロシアの精鋭部隊が派遣される展開となった。他方、西側ではウクライナ情勢を巡って緊張が続いている。我が国では大きく報道されていないものの、ロシアは、ウクライナを巡る米国との安全保障協議が暗礁に乗り上げていることを受け、このまま緊張が続けばベネズエラかキューバに軍を派遣することも示唆しています。

炎上したアルマトイの市庁舎
出典:Reuters

そうした中で、毎年のことであるが、米コンサルタント会社「ユーラシア・グループ」は2022年の世界「10大リスク」を発表し、我が国でも大きく報道されていた(参考)。さらに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の卒業生によって運営されている地政学リスクに関するwebサイト「Global Risk Insights」も同様に2022年の地政学リスク・トップ11を掲げ、2022年の世界を展望しています(参考)。

いずれの展望でも「COVID-19」「中国問題」「エネルギー」「テロ」「巨大IT規制」などの項目を掲げているが、付け詰めるところ、焦点は「グローバル」「金融資本主義」「デジタル」の三点に帰結するものと分析できます。

特に、最も恐ろしいリスクとして懸念されるのが、これら三点すべてに影響を与え得る「COVID-19」であろう。「Global Risk Insights」は、この点、より毒性が強く、ワクチン耐性のある変異株の出現が2022年の最も恐ろしいリスクとする中で、特に、腺ペストの発生が人類最大の脅威となりうるとの懸念を示しています。

去る(2022年)1月15日には、トンガでの大規模噴火を受けて、地球はかつてのように、巻き上げられた火山性エアロゾルにより太陽光が遮断され寒冷化する「火山の冬」が起こるのではないか、という分析もある(参考)。寒冷化がもたらす負のフィードバックとしてやはり懸念されるのが、感染症の流行であるところ、人類と「COVID-19」との戦いは、今後生じ得る新たな「パンデミック」との戦いの序章に過ぎないのかもしれないです。

2022年1月のトンガ大噴火
出典:Indian Express

かつて14世紀、フィレンツェから起こったペスト(黒死病)では、当時の中世ヨーロッパの人口のうち3分の1が犠牲になったという。この時の要因としては、よく14世紀のヨーロッパは「小氷河期」の始まりで気候が寒冷期に移行しつつある中で、冷夏が続き、農作物は不作続きで、食糧は不足し、飢饉が拡大していた、ということが挙げられるが、この度のトンガの噴火がフラクタルに当時の惨禍を再現することも十分考えあり得ます。

また、中世ヨーロッパで起きたペストのインパクトは、生き残った農奴の地位向上に伴う経済構造の転換から、死生観の転換によるルネサンスの胚胎など、まさに世界史の転換を伴うものであった点も忘れてはならないです。

今次パンデミックもこうした世界史の転換に位置づけても過言ではない中で、上述した2022年の各リスクといかに対峙していくかが、この転換を乗り切るカギとなるのではないでしょう。

 

14世紀、ペストの流行を背景に広まった絵画『死の舞踏』
出典:Wikipedia

「ポスト・コロナ社会」は、決してコロナ前の平和な日常が戻ってくるのではなく、むしろさらに複雑化・多様化した社会が到来するということが明らかであります。

そうした中で、中世ヨーロッパでは「生き残る」ことのみが求められていたのに対して、今次パンデミックでは、「グローバル」「金融資本主義」「デジタル」という3つのリテラシーを駆使して、新たな時代を切り開くことが求められるのではないかでしょう。そして、これらのリテラシーをもたぬ者は、早晩、「ポスト・コロナ社会」からの脱落を余儀なくされることになると思います。

 

2022年03月15日

「資源小国・日本」という幻想からの解放

ウクライナを巡る情勢が緊迫化している中、もしロシアがウクライナに侵攻した場合、米国とEUは、ロシアに対して経済制裁を行うと警告しています(2022年2月20日現在)。

そのように事態が進展した場合、ロシア側はEUへの天然ガス輸出を減少させる報復措置にでるのではないかと見られている。EU側には、電力供給のために輸入している天然ガスの多くをロシアに依存しているという弱みがあるためでありあます。

それゆえ、日本政府は輸入しているLNG(液化天然ガス)の一部をヨーロッパ向けに融通する方針であることを明らかにした。萩生田経産相は融通するにあたって、国内の発電事情には影響がないような措置に留めることも同時に表明しているが、米国からの要請を受けた異例の対応を行ったと見られています。

石炭やLNGに依存する日本の電力供給を考えると、冬の寒さによって電力消費が高まることが懸念されているこの時期に、こうした決定が行われたことは、改めて日本のエネルギー資源戦略とはどのようなものであるのか、波紋を広げています。

これまで、日本におけるエネルギー資源を巡る議論といえば、エネルギー消費大国でありながらも、国内で資源をまかなうことができないため、多くを外国からの輸入に依存する以外に方法はないと指摘されてきました。

天然資源に恵まれていない日本としてのとるべき道は、原材料や半製品を輸入して、加工して製造された工業製品の一部を輸出するという加工貿易国としての発展モデルであり、それゆえに、自国における「資源」の存在、あるいは有効活用の可能性にはあまり目が向けられてこなかったと考えられます。

その理由のひとつとして、GHQは占領当時、日本にいくつかの天然資源が存在していることを把握していたため、占領期を経た戦後の日本は、国際協調のためにエネルギーを買い、加工製品を売るというモデルを選択してきたという事情も考えられます。

▽主要国のエネルギー自給率(2017年、日本のみ2018年度)

しかし、エネルギーや資源を他国に依存している一方で、日本は自らが持つ技術力如何によっては資源となる物資を生み出し、活用できるという能力も持ち合わせているにも関わらず、そうした方法を模索せず、工業輸出国としての立ち位置に終始してきたともいえるのではないでしょう。

その1つの例として、放射性物質「トリウム」の存在を指摘することができます。

「トリウム」とはレアアースが採掘される際には必ず副産物として出るのであるが、日本企業も出資したマレーシアにおけるレアアース製造工場にて、レアアース製造後の「トリウム」が放射性廃棄物として投棄されたという事件などもあり、「トリウム」に関して深く研究がなされてこなかったです。

「トリウム」を用いた原子力発電が実用される可能性もありうると指摘されてきた中で、日本として「トリウム」の利用に及び腰だったことは、資源を自前で調達することができる見込みがあったとしても、あえてその方向には進んでこなかった証左であると指摘できるでしょう。

他方で、目下の世界では各国が自らの存立をかけてエネルギー確保のための戦略に邁進しているという状況である。それゆえに、日本でも自前で資源を調達すべく、自国における未開発、未着手である資源の存在がにわかにクローズアップされようとしています。

たとえば、2022年1月、島根・山口両県の沖にある天然ガス田について、試掘調査(探鉱)を3月から開始すると資源開発大手インペックス(INPEX)が明らかにしました。

見込まれるガス生産量は、年間消費量の1.2%に及ぶとの計算もあり、実現への期待が高まっているが、巨額の投資が必要となる案件であるため、専門家の間では、国家的な関与が必要であるとの声が早くも上がっている模様でありあます。

こうした状況において課題といえるのは、天然ガスの輸送や貯蔵には気体であるがゆえに、原油よりもコストがかかるという点でありあます。液化プラント、専用の輸送船、貯蔵施設の建設など、巨額の投資を回収するためには、売り主は買い主に対し、安定的な収益を確保できるよう、長期的な売買契約の締結を求めるため、競争が十分に働きにくいという特徴がありあます。

参考:経済産業省>資源エネルギー庁>第3節 原油の価格変動リスクに備えるためのLNG市場等の構築

つまり、天然ガス採掘の動向だけでなく、様々な利権構造に左右されずに適正な価格が実現できるのかという点にも留意していく必要がありあます。


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