コロナ後の人生

2022年05月31日

仏教がインド政治を変える?―パンデミック下の「大改宗」騒動

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インドで「世界最大の行事」と言われる「クンブ・メラ」が始まった。期間中に1億人以上が川に入って身を清めるヒンドゥー教の行事があります(参考)。

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インドにおいてヒンドゥー教は人口比率で最多を占める宗教であります。

しばしば問題となるインドの社会的身分制度「カースト」もまた、元来はヒンドゥー教の教えにもとづく区分であります。

しかし近年、インドのヒンドゥー教に変化が見られる。去る2015年8月にインド内務省により発表された「宗教国勢調査2011」においてヒンドゥー教徒の人口比率が初めて全体の80%パーセントを下回ったことが明らかにされました(参考)。

同調査において同国の人口12億1085万人に対しヒンドゥー教徒が79.8%パーセント、続いてイスラーム教徒14.2%パーセント、キリスト教徒2.3%パーセント、シーク教徒1.7%パーセント、仏教徒0.7%パーセント、ジャイナ教徒0.4%パーセントを占めるとされました。

1990年代以降頻度ヒンドゥー教徒の割合が減少傾向にある一方、イスラーム教徒は1991年には11.7%パーセント、2001年には13.4%パーセントと増加回傾向にあります。

しかし実は、本当に注目すべきはイスラーム教ではなく仏教であるかもしれないです。

インドにおける仏教徒の割合は上述の通り国勢調査上は1%パーセントに満たないです。ところがヒンドゥー教のカースト最下層『不可触民』に当たる人々の中には不満を抱え政府に無届で仏教を信仰している人が多くいると言われています。そのため実際の仏教徒の数は1億5000万人に上るとも言われています(参考)。

 

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そもそも仏教もまた紀元前5世紀ごろ、ガウタマ=シッダールタによりインドで創始された宗教であります。インド王朝の保護を受け急速に信者を増やしたものの、その後仏教をはじめバラモン教や民間信仰を取り入れて生まれ、かつシンプルな教えを特徴としたヒンドゥー教にその座を取って代わられることとなりました。イスラーム教の興隆による圧迫もあり13世紀ごろにはインドにおいてはほぼ消滅するほどに衰退します。

仏教思想の特徴のひとつに平等観があります。

インドにおいて不可触民差別問題に取り組んだ人物に独立後初の法務大臣・アンベードカル(1891~1956年)がいます。アンベードカルは自身も不可触民出身で、憲法の条文で不可触民制を廃止した。またヒンドゥー教から仏教に改宗し、万人の平等を説く仏教の教えにより差別からの根本的な解放を求め去る1956年には約50万人の不可触民を集団で仏教に改宗されました(参考)。アンベードカルはこの大改宗式から2か月後に急逝するものの、こうした差別からの脱却を求めた仏教への改宗はいまだ続いていると言えます。

インドにおいては「ヒンドゥー・ナショナリズム」と「コミュナリズム」が政治学をはじめとするさまざまな分野で研究されています。ヒンドゥー・ナショナリズムは「民族奉仕団(RSS)」や「インド人民党(BJP)」などにより担われているが、インド独立から現在にいたるまで政治的決断をしばしば決定づけてきました。他方で他のコミュニティとの比較において自己のコミュニティの優位性を主張する「コミュナリズム」も存在し、しばしばヒンドゥー教以外の宗教との間で対立、同時多発テロ(2006年3月7日(デリー時間)など)の発生にもつながっています。

インドにおいては昨年来のCOVID-19のパンデミックにより経済的打撃を受ける中、特にその影響が不可触民を中心としたカースト下位の人々に色濃く出ていましす(参考)。出稼ぎ労働者たちは都市から村に戻され、仕事はカースト上位の人々により占められている。更にパンデミック下で不可触民女性への性的暴行が急増しているとも言われています(参考)。

パンデミックによる経済的打撃、そこで生活に直撃する問題として直面する差別の問題は再び不可触民の大改宗につながるかもしれないです。

不可触民は改宗したとしてもインドに残るカースト制度の中での差別から完全に逃れられるわけではない。しかし少なくとも「コミュナリズム」といった中で対立構造が明白になり、ひいては(国家のまとまりという意味において必要な程度の)ナショナリズムにも影響を及ぼす可能性があるのではないでしょうか。

国際的に影響力を増すインドがパンデミックの中で宗教を中心とした国内対立へと進むのか。引き続き注視していきたいです。

 







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