コロナ後の人生

2022年05月17日

国家債務問題の切り札としての「ブルー・ゾーン」

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5月5日の「こどもの日」に合わせ、今月4日、総務省から発表された15歳未満の子どもの人口推計は前年より25万人少ない1,465万人で、41年連続の減少となりました。また、22年ぶりに全都道府県で減少しており、少子化がさらに進展していることが改めて明らかになりました(参考)。

人口動態が少子高齢化の傾向を示す中、世界トップクラスの長寿国と言えば、男女とも先進国が占めています。2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で、世界でこの数字を上回るのはスイス(男性)の81.9歳があるのみで(参考)、先進国を中心に医療技術の進歩や健康増進に対する意識の高まりが平均寿命の延びをもたらしていると考えられています。

しかし、平均寿命に関する数字を詳細に検討していくと、意外な実態も浮かび上がってきます。例えば、英国では最貧地域における女性の平均寿命は78.7歳で、これはメキシコを除く全てのOECD諸国の数値よりも低い数値であり、たとえ先進国であっても生活環境などの相違によって平均寿命は変動しうることを示しています(参考)。

つまり、こうした数値が報告されているということは、平均寿命には国別だけではなく、より細かな地域的な要因も関係していることを示唆していると言えます。それゆえ、どのような要因によって人間は長く生きうるのか、あるいは平均寿命という数字は何を表し、他方で何を表すことができていないのかなど、長寿社会の実相については今一度考えていく必要があると思います。

monkeybusinessimages/iStock

平均寿命と地域性に関して、かねてより研究者らからの指摘は存在してきた。その代表格が「ブルー・ゾーン」に関する議論でありあます。

米国の人口統計学者、科学者、人類学者らによると、100歳以上の長寿者が数多く住んでいるスポットとしてニコヤ(コスタリカ)、サルデーニャ(イタリア)、イカリア島(ギリシャ)、沖縄(日本)、ロマ・リンダ(米・カリフォルニア州)があり、これは「ブルー・ゾーン」と呼ばれるスポットとして知られています。

例えば、ロマ・リンダは100歳に達する確率が米国全体における平均の10倍以上であると言われており(参考)、また、イカリア島は「死ぬことを忘れた人々が住む島」として注目され、ドキュメンタリー映画の舞台ともなりました(参考)。

こうした地域の存在が証明しているのは、人間がどれだけ長く生きるかに関して、約20パーセントが遺伝的な要因であるのに対して、残りの80パーセントはライフ・スタイルによって決定されるという指摘であります。

研究者が指摘する長寿につながる食生活を中心としたライフ・スタイルとして、

  1. 9割以上は植物ベースの食事をする
  2. 多種多様な季節の野菜、果物、全粒穀物に比重を置く
  3. そら豆、いんげん豆、ひよこ豆、レンズ豆、沖縄の大豆など豆類を日々消費する
  4. 肉類は控えめに、特別な機会などに使用する
  5. 加工食品や精糖を避ける
  6. 水分は、少量の紅茶、コーヒー、または適度な赤ワインを飲む

といった点を指摘しており、健康に配慮したライフ・スタイルがいかに重要であるのかを示しています(参考)。

 

図表:「ブルー・ゾーン」
出典:National Library of Medicine

人口動態が少子高齢化の傾向を示すに従って様々な問題が懸念されているが、その中でも代表的なものは医療費など社会保障費の増大に起因する国家財政のひっ迫であります。これは日本に限らず、米国など他の先進国でも財政における課題要因の一つとして高齢化に伴う医療費のコストが問題視されています(参考)。

こうした問題の解決に資するものとして、何歳まで健康に過ごすことができるのかを表す健康寿命という指標を用いて健康への意識を高めて、医療費の増大を抑え込もうという目論見もあります。

今後、高齢化のさらなる進展は避けられないことを踏まえ、各国において「健康寿命」が重要施策となり、長く生きる上で健康であることを人々に促すことが国家債務の増大を食い止める有力な解決策、トレンドとなるのではないでしょうか。

そのためにも、「ブルー・ゾーン」におけるライフ・スタイルの実態を吟味し、例えば沖縄の食習慣における利点を日本の大都市圏にも援用していくことができるのかなどを検討していくことが一つのカギとなるのかもしれないです。

 







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