2021年10月19日

岸田首相の掲げる【成長と分配の好循環】は実現するのか~「国民皆保険制度」をめぐって~

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2021年10月新たに就任した岸田首相が掲げる最も特色ある政治姿勢といえば、就任後初めて行った所信表明演説の中でも表明された「新しい資本主義」というキャッチフレーズではないでしょうか。

「新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されています。成長を目指すことは、極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます。しかし、『分配なくして次の成長なし』。成長の果実を、しっかりと分配することで、初めて、次の成長が実現します」(参考)

所信表明演説の中でこのように訴えた岸田首相は「成長も、分配も」実現するために、あらゆる政策を用いていくとしています。
つまり、「成長と分配の好循環」を作り出すという戦略です。
新型コロナウイルス感染拡大は、様々な経済的混乱をもたらし、公的な支援策が実施されるに至りました。
我が国でも10万円一律給付や、売上が減少した中小企業に対して、最大200万円を支給する「持続化給付金」や、賃料の負担を軽減する「家賃支援給付金」などの対策が行われました。
今次の感染拡大が世界的に懸案となっていた貧富の格差拡大の問題をより一層表面化させたともいえるのではないでしょうか。
所信表明演説の中で岸田首相が訴えたように、社会におけるセーフティーネットの役割が改めて注目されているのもごく当然の流れと受け止められます。

(図表:所信表明演説に臨む岸田首相)

(出典:内閣広報室)

我が国でセーフティーネットとして機能してきた代表的な制度に「国民皆保険制度」があります。
すべての国民がなんらかの医療保険に加入し、けがや病気の際に医療給付が受けられることを保障するものであり、1961年に始まり半世紀以上の歴史があるものです。
この公的な医療保険制度には、「職域保険」と「地域保険(国民健康保険)」という2つの柱があります。

まず、「職域保険」は軍事的労働力を確保という時代の要請によるものでした。
1922年の健康保険法の制定により、10人以上の従業員をもつ企業は健康保険組合を通して従業員の健康保険を提供することが義務付けられました。
政府主導の「職域保険」の形へと移行したのは1927年であり、これ以降、戦況の進展とともに制度が深まりをみせることになりました。一方の「地域保険」の制度は戦前から存在していましたが、国民すべてに行きわたるような完成された姿に至るには1958年に国民健康保険法が改正されたことによって全ての市町村における地域保険制度の設立が義務化され、1961年に国民皆保険が達成されるまで待たねばなりませんでした(参考)

制度の完成から長い年月が経過し、その間に進展した少子高齢化社会によってもたらされる将来的な生産年齢人口の減少で「国民皆保険制度」の維持が困難といわれていることから、医療費負担に対する保険制度をどう維持するのか検討が加えられてきました。2006年の医療制度改革により、75歳以上の後期高齢者を対象とした医療保険制度の見直しが実現したのはその代表的な事例でしょう。

目指すべきは「成長か、分配か」という、不毛な議論からの脱却だと首相は訴えます。岐路に立っている我が国の社会保険モデルをどのように維持するのかを考えるにあたって、「成長」を通して国富を増やす方法を描き出すことが不可欠であるといえるでしょう。
所信表明演説で岸田首相は「デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙など先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行います。民間企業が行う未来への投資を全力で応援する税制を実現していきます」と述べ、今後成長させていくべき産業分野について言及しています。
我が国として新たな成長産業を作るという命題を掲げた以上、外国資本や移民をどう受け入れ国富の増大につなげるのか、またはロボットで不足した労働力を補うことがどれほど可能なのかといった次なる具体論に至る転機ではないかと考えられます。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)

元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

 







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