2021年06月29日

スマホ片手にマネー・ロンダリングが行われる時代到来!?

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新型コロナ・パンデミックの影響で延期となっていた「金融活動作業部会」(FATF)による第4次対日相互審査の発表を8月末に控え、各金融機関は態勢整備が求められています。

そもそも「金融活動作業部会」(Financial Action Task Force: FATF〈ファトフ〉)とは、1989年のアルシュ・サミットでの経済宣言を受けてパリに設立された政府間機関であり、「マネー・ロンダリング防止(anti-money laundering: AML)」に関する協調指導、協力推進に取り組んでいます。G7を含む37か国と2つの地域機関(欧州委員会〈EC〉・湾岸協力会議〈GCC〉)が加盟しており(参考)、加盟国へは実質的に強制力を持つガイダンスを“Reccomendation(勧告)”という形で公布されています。当初はAMLのみを目的としていたが、2001年の9.11同時多発テロ事件以降は、「テロ資金供与対策(combating the financing of terrorism: CFT)」にも取り組んでいます。

さらに、2012年のFATF勧告以降は、これに「拡散金融対策(Counter Proliferation Financing: CFP)」も3つ目の柱として加わっているCFPとは、大量破壊兵器(WMD)拡散の疑いのある個人・団体の資金凍結等を通じて行われる金融面からの不拡散措置のことです。去る本年(2021年)4月7日に出されたG20財務相・中央銀行総裁会議の声明でも、「マネー・ロンダリング(ML)、テロ資金供与(TF)及び拡散金融(PF)と闘い、…」とあるように、現下の金融犯罪を理解するポイントはこの3つのキーワードとなります。

同声明には他にも金融犯罪の最新のトレンドとなるキーワードが散りばめられています。たとえば、仮想通貨(暗号資産)についても「FATF基準のグローバルな履行」を求めています。先日(2021年5月10日)、中国公安省は暗号資産を使ったマネー・ロンダリングの一斉摘発に踏み切り、1,100人以上を逮捕したことを明らかにしたように、今やマネー・ロンダリングには、パナマやスイス銀行などを利用する従来の方法に加えて、仮想通貨を利用した新たな手法も登場しているのです。


図表:マネー・ロンダリングの舞台としても有名なスイスの観光地ツェルマット 出典:Wikipedia

決済業務の自主規制機関である中国支付清算協会は、「匿名性があり世界に通用して利便性が高いことから仮想通貨が越境資金洗浄に利用される事例が増えている」と述べています(参考)。もっとも、仮想通貨での取引は、改竄がほぼ不可能なブロックチェーン上に記録されるため、移動を監視しやすいという点もあり、国際銀行間金融通信協会(SWIFT)の報告書では「現金を利用する従来の手法がマネー・ロンダリングの主流であり、仮想通貨を使う事例は依然として少ない」ともしています(参考)

では最後に、我が国における金融犯罪対策の動向をみみましょう。ここで特に注目しておきたいのが、地方銀行による取り組みです。
ある地方銀行は、太平洋戦争で被災するも2日後には営業を再開し、無印鑑、無通帳でも行員の記憶を頼りに営業を再開するなど地域密着型で取り組んできたといいます。一見するとマネー・ロンダリングのような金融犯罪には無縁のような地方銀行だが、逆にその脆弱性に国際的な犯罪組織がつけ込み、金融犯罪に利用されるというケースが多々あるのです。

マネー・ロンダリングは、プレイスメント(口座開設~入金)、レイヤリング(資金移動)、インテグレーション(出金)を経て実施されるが、各フェーズにおける監視の強化が要となります。
具体的には、窓口での口座開設においては、その理由の合理性を詳細なヒアリングを経ることで判断したり、アプリであればアカウント作成時、取引時など各段階で多要素認証を必須とすることで、リスクを軽減しています。窓口の行員からすると業務の増大、一般ユーザーからすると手続きの煩雑化にみえてしまいますが、マネー・ロンダリング防止(AML)という本来の趣旨を改めて想起することで、自らも金融犯罪対策に貢献しているとの意識の転換につながるのではないでしょうか。

従来は金融犯罪というと、マフィアや巨大企業など雲の上の次元で展開されるもので、一介の市民には無関係のように捉えられていた節がありましたが、グローバル化、デジタル化の進展により、今や金融犯罪の触手はすでに手元のスマートフォンにまで伸びているのです。







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