2021年06月22日

新たな国富の奪い合いが世界で始まる!? G7で決まった「国際法人税」とは。

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

先日(2021年)6月4日(ロンドン時間)に開催されたG7財務大臣会合において「歴史的な」合意となった【国際法人税(global tax)】。

(主要7カ国(G7)財務相会合に出席するため英国を訪れたイエレン米財務長官=ロイター)

法人税の国際的な最低税率(global minimum tax)を「15%」とする米国案が最終的に通った形となりました。イエレン米財務長官は「長年、世界は法人税率の底辺の競争を繰り広げてきた。この有害な動きを終わらせるための重要な一歩を踏み出した」と成果を強調しました(参考)
多国籍企業に対する世界的な課税の議論を前進させた今次G7財務大臣会合において議長を務めたのがリシ・スナック(Rishi Sunak)英財務大臣です。


リシ・スナック英財務大臣 出典:Wikipedia

ところが、彼の義父がインドにおける「多国籍企業」の大株主であることが明らかとなり注目を集めました。
その義父とは、インドの大富豪ナラヤナ・ムルティー(Narayana Murthy)(『フォーブス』誌によると総資産約31億ユーロ)です。米アマゾンが事実上支配しているクラウドテール(Cloudtail)社の大株主であり、世界に25万人以上の従業員を擁するInfosys Limited(NYSE: INFY)の創業者です。同社は2020年には130億ドル以上の収益を上げ、時価総額は750億ドル以上に達しています。2005年には、英エコノミスト誌の「最も賞賛されるグローバル・ビジネスリーダー10人」、2012年には『フォーチュン』誌による「現代の最も偉大な起業家12人」に選ばれ、フランスの最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章や英国の大英帝国勲章なども受賞しています(参考)
現在、プリンストン高等研究所および国連財団の理事を務め、ニューヨークのフォード財団、ロンドンのHSBCおよびユニリーバの取締役も務めている人物です(参考)

クラウドテール(Cloudtail)社は米アマゾン社との提携によってインドで設立された合弁会社です。

しかし、ここで1つ気になる点があります。
アマゾンは世界最大級の企業であり、2020年の市場価値は1.6兆ドル、売上高は3,860億ドルに達しています。ルクセンブルクの子会社は、欧州全域からの440億ユーロの売上収入に対し、2020年の法人税をゼロにしており、今回の法人税の国際的な最低税率(global minimum tax)における有力なターゲットとなっている・・・はずです。

ところが、今回のG7公式声明(コミュニケ)では、「10%を超える利益率(profit margin)」にのみ適用されるとなっており、これに則るならば、アマゾンは「除外」される可能性があると専門家が指摘しているのです(参考)
実際、2020年の同社の利益率はわずか6.3%でした。多額の再投資を行っていることもありますが、市場シェアを獲得するために非常に低い利益率でオンライン小売事業を運営しているからです。
クラウドテール(Cloudtail)社はアマゾンにとってインド最大の販売会社です。その事業体の76%をナラヤナ・ムルティー(Narayana Murthy)の投資会社であるカタマラン・ベンチャーズ(Catamaran Ventures)社が所有しています(参考)

今回、義父のビジネスに「巻き込まれた」とする報道もあったものの、実際にはむしろその逆で、元々ゴールドマン・サックスや投資会社といった金融出身であるリシ・スナック自身、最近までこの会社の取締役を務めていました。そして、英政界へ進出した2015年に退き、以降、彼の妻すなわちナラヤナ・ムルティー(Narayana Murthy)の娘が彼に代わって取締役となっています。まさにアマゾン・インドと大いに関係があるのです(参考)


UKにおけるCatamaran Ventures社の法人登記情報 出典:UK Companies Houseより筆者作成

今次G7の直後にスナック英財務大臣が「ロンドン・シティ(City of London)」を国際法人税合意の「対象外」とするよう要請していたことも明らかになりました(参考)
実のところ、昨年(2020年)10月時点で経済協力開発機構(OECD)が発表した案では、銀行、保険会社、投資ファンドに加えて、鉱業や石油・ガス会社などの採掘産業を除外することが盛り込まれていたのです。これに対し、米国は主に自国に拠点を置く大規模なハイテク企業が標的になることを防ぐため、これらの除外項目を削除する計画を今年(2021年)4月に発表しました。その案が今回のG7財務会合で通ったのです。
英国と欧州(EU)が復活を求めているのは、この金融サービスと資源採掘企業に対する「カーヴアウト(除外措置)」です。
英国においては、EU離脱(BREXIT)に伴い、株式やデリバティブの取引に変化が生じています。離脱直後の今年(2021年)1月には、オランダにおける株式取引量が昨年(2020年)12月の4倍以上にまで増加し、もはや金融取引はアムステルダムにシフトしたとも言われています(参考)

英国がロンドン・シティ(City of London)を国際法人税合意の「対象外」とするよう要請し、欧州は鉱業や石油・ガス会社などの採掘産業も除外することを求めているのに対して、米国は自国に拠点を置く大規模なハイテク企業が標的になることを防ごうとしています。

形を変えただけで、「国富の奪い合い」は引き続き行われているのです。。。







こんな方にオススメです

  • ■納得した情報を得たい方
  • ■確かな資産形成の根本を身につけたい方
  • ■今の状況に不安を感じている方



© 2021 コロナ後の人生。| 気づきに満ちた世界と私. All rights reserved.