2021年06月15日

パンデミックによりもたらされた「ドライアイス需要」は日本を救うのか。

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インド勢において「ムコール症」患者が急増しています。
去る(2021年)5月26日までに確認された症例は1万2000件近くに上り、各州が緊急措置を命じています。
ムコール症はパンのカビを含む、ケカビ目に属するカビを吸い込む(まれに皮膚の傷から体内に侵入する)ことにより引き起こされる感染症です(参考)

鼻脳(鼻・副鼻腔・眼・脳)、肺、皮膚への感染がみられ、抗真菌薬の投与や病巣の切除といった積極的な治療を行っても致死率は54パーセントに及びます。

原因となるカビは環境中に多数存在しており、誰もがこうしたカビの胞子を絶えず吸い込んでいます。しかしムコール症は世界中で見られるものの発症頻度は高くありません。
これらのカビが感染症を引き起こすのは、基本的に以下のいずれかに該当する場合と考えられています(参考)

・糖尿病が適切にコントロールされていない

・薬(ステロイドなど)や病気(白血病など)により免疫機能が低下している

・鉄過剰症の治療にデフィロキサミンを使用している

インド勢における今次ムコール症の流行は、新型コロナウイルスによる感染症からの回復期にある人及び回復した人の間で起こっています。
このことからインド勢において新型コロナウイルスに対する治療で投与されているステロイドがその要因として指摘されているのです(参考)
そもそも新型コロナウイルス感染患者に対するステロイド治療については、世界保健機構(WHO)が昨年(2020年)9月2日に発表した改定ガイドラインにおいて推奨されています(参考)
ただしこれは重症患者に対して7日から10日間の間投与することを推奨するもので、非重症患者には効果が期待できず副作用の可能性もあるとの注意を促しています。

日本でも中~大量のステロイドが治療に用いられています(参考)。指摘されている通りステロイドが危険因子となっており、原因菌が世界的に存在することに鑑みれば、ムコール症の感染拡大は全世界的な問題になり得ると言えるのではないでしょうか。
ムコール症は上述の通り適切な治療をしても致死率が54パーセントに及び、適切なタイミングと方法で治療を受けなければそれは94パーセントにまで上がることもあり得る、と指摘されています(参考)
ムコール症の治療としては、病巣切除の他に抗真菌薬である「アムホテリシンB」の静脈注射などが用いられます。
実はアムホテリシンBは冷凍(ドライアイス輸送)が保存条件とされています(参考)

ここで注目すべきはドライアイスです。

ドライアイスや炭酸飲料に使われる液化炭酸ガスは主に原油の精製過程で副産物としてでる気体の二酸化炭素を利用して作られます。「脱炭素化」などによるエネルギー需要の変化を受けて従前より液化炭酸ガスの原料不足が指摘されてきました(参考)

(図表:ドライアイス)

(出典:Wikipedia)

日本でドライアイス製造を手掛けるのはエア・ウォーター社(4088)や日本酸素ホールディングス(4091)など「ドライアイスメーカー会」に参加する企業や岩谷産業(8088)など数少ない企業で、供給不足分については韓国勢からの輸入に頼ってきました。
しかしよく知られている通り新型コロナウイルスに対するワクチンについても、米ファイザー社製ではマイナス75℃前後、米モデルナ社製はマイナス20℃前後での保管が必要であり、輸送・保管にドライアイスは必須なのです。
他方でドライアイスはマイナス79度を上回ると気化してしまうため備蓄にはコストがかかることからそもそも在庫がほとんど存在しない点も特徴です。
新型コロナウイルスのワクチン接種の進展に伴いドライアイス需要が増加するのは韓国勢でも同様と考えられ、日本における需要に見合う輸出がなされるのか懸念されます。
こうした点に鑑みると、日本において新型コロナウイルスのワクチン接種を進めるためにはドライアイスの供給は重要な課題となるのではないでしょうか。

他方でワクチン接種がひと段落すれば、ドライアイス需要は落ち着いてしまうでしょう。
先述の通り備蓄にコストがかかることから、在庫はあまり持たないのが通常であることを考えると、過剰な生産設備はコストとなります。
こうした中でもしドライアイス輸送を必要とするアムホテリシンBが大量に求められる事態になるとすれば、ドライアイス需要は再び盛り返すでしょう。
今後のワクチン・マーケティングの進展及び新型コロナウイルスの感染(治療)に伴う新たな感染症の拡大がドライアイス需要を拡大させるのでしょうか。







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