2021年06月08日

日本における人型ロボット研究がもたらす未来は世界の中心となるのか。

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「ロボット」と聞くとどのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。
どれほどリアルかはともかく、人に似せた姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

(図表:An artificial hand holding a lightbulb)

(出典:Wikipedia)

 

日本ではロボット研究の中で多くのヒューマノイド・ロボット(人型ロボット)が生み出されてきました。
産業技術総合研究所、東京大学、大阪大学をはじめとする研究機関、
またASIMOで有名なHONDAをはじめとする多くの企業によって研究がなされており、
ヒューマノイド・ロボットの開発数は日本が圧倒的に多いのです(参考資料)。

 

なぜ日本においてヒューマノイド・ロボット開発がそれほど活発なのでしょうか。

 

そこには宗教的価値観が大きく影響していると考えられます。
日本においては「八百万の神」といった万物に神が宿るという思想が広く根付いています。
他方でキリスト教をはじめとする一神教では創造主としての唯一神を信仰し、
自らを被造物として捉えます。こうした信仰の下では「人を模した」ロボットを作るということには、
神の領域に踏み入るものと考えらえるため未だ反発は根強いのです。

技術の発展は目覚ましく、ヴァチカンですらもそれを無視することはできない状況です。
第266代教皇フランシスコは2019年3月に
“Roboethics: Humans, Machines and Health”と題したワークショップを主催しました。
開会に際しての書簡の中でフランシスコ教皇は「画期的な変化と最先端の技術を理解し、
それによって人の本質的な尊厳を尊重し促進しつつ人間のためのそうした技術を
どのように配置するかを決定することが急務である」と述べています(参考記事)。

しかしヒューマノイド・ロボット開発で知られる大阪大学の石黒浩教授は、同ワークショップにおいて
「1万年後には人間は生身の人間として認識されなくなる」とする仮説を発表しました(参考記事)。
地球や太陽において何らかの事態が発生し地球で生きていくことが出来なくなった場合に
宇宙で生きていくことができるよう、人間の身体を無機物に置き換えることで不老不死を実現することが
人類の進化の究極目的であるというのです。
こうした開発には「創造主」を代替する役割を人間が担うものとして反発が容易に想像されます。
2018年にはThe European Group on Ethics in Science and New Technologies (EGE)が
AIとロボット工学の進歩によって提起された緊急かつ複雑な道徳的問題を強調した報告書を発表しています。
ここではロボットが権利を持つという議論が強く否定されています。

他方で日本におけるヒューマノイド・ロボットの研究は、
各国が直面する問題に対する解決策として注目されてもいるのです。
石黒浩教授の前述のような意図はともかくとして、
一般的にヒューマノイド・ロボットの意義については、
例えば高齢者の介護のような人間に直接かかわる作業を人間に代替して行う際に
より親密感や安心感を与えることが強調されます。

日本では他国に比べ移民の受け入れが少なく、
不足する労働量の供給源としてヒューマノイド・ロボットの活躍が期待されています。

急速に進む少子高齢化、人口減少といった日本が直面する問題は多くの国が抱えている、
もしくはこれから抱え得る問題です。
この意味において自国内で労働力を供給する方策としてのヒューマノイド・ロボット開発は
他国にとっても同様の問題を解決するにあたり注目すべき議論なのです。
日本におけるヒューマノイド・ロボットの活用と倫理にまつわる議論の行方は
世界全体としてのヒューマノイド・ロボットの未来を方向付けるものとなるではないでしょうか。







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