2021年05月12日

コロナ下での選挙が「殺人罪」になる日~「民主主義」終焉の始まりはインド勢から始まるか~

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2020年来のパンデミックは様々な変化をもたらしました。
緊急事態宣言や外出自粛、海外ではよりきびしい「ロック・ダウン(都市封鎖)」が敷かれ、世界的にマスクをつけるのが“当然”になりました。
こうした中で新型コロナウイルスは、私たちの社会がよって立つ原理そのものにも挑戦を突き付けていのを皆様気づいているでしょうか。
その原理とは「民主主義」のことです。

いまや世界の多くの国が―建前にしろ―「民主主義」の原則を掲げています。
民主主義を支え、かつその最低条件であるのが選挙です。政治学においては一般に、自由で公正な選挙が定期的に行われていることが民主主義の条件とされています。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりこの選挙が危機に瀕しているのです。

2021年4月ごろより新たな変異株による感染が急拡大しているのがインド勢です。同国勢においては医療用酸素の不足が叫ばれ、1日に4000人以上の人々が亡くなる事態となっています。
インド勢においては2021年3月末から5月にかけ有権者が約1億8700万人にのぼる地方議会選や補欠選挙などの実施が予定されていました。新型コロナウイルス対策や農作物取引の自由化が主な焦点となっている同選挙戦は、5月末で2期目就任から2年となるモディ印首相にとって政権運営への審判でもあります(参考)

(図表:ナレンドラ・モディ)

The Prime Minister, Shri Narendra Modi with the Prime Minister of Ireland, Mr. Enda Kenny, at Government Buildings, Dublin on September 23, 2015.

(出典:Wikipedia)

ところがモディ印首相が属するインド人民党(BJP)は新型コロナウイルスの感染拡大の中で選挙に関する大規模集会を開くなどし、批判が上がっていました。
同国勢の最高裁判所長官であるサンジブ・バナルジー(Sanjib Banerjee)を筆頭とする判事らは、同国勢の選挙委員会を“殺人罪”に処すべきとして強く批判し、実際にカルカッタ高等裁判所やチェンナイ高等裁判所は選挙関連のキャンペーンなどにより感染「第2波」を招いたとして同選挙委員会が“殺人罪”に相当する旨、判決したのです(参考)

(図表:カルカッタ高等裁判所)

(出典:Wikipedia)

こうした判決を受け、2021年5月5日(ニューデリー時間)に同選挙管理委員会はいくつかの州での議会選挙及び議会の補欠選挙を延期すると発表しました(参考)
他方で同日、スブラマニヤム・ジャイシャンカル(Subrahmanyam Jaishankar)印外務大臣は「インド勢のような民主主義国では選挙を止めることはできない」としてパンデミック下での選挙に対する批判に反論しています。

実はこの選挙延期が決定される直前の2021年5月3日(同)、すでにいくつかの州で議会選挙の開票が行われていたのです。モディ印首相が属するインド人民党(BJP)はアッサム州北東部においては与党の座を維持したものの、重要な選挙場とみなされる西ベンガル州をはじめ、タルミナードゥ州やケララ州においては敗北を喫しました(参考)
これらの州での投票はほぼ2021年3月に実施されていたのですが、この際に選挙集会及び投票において群衆がソーシャル・ディスタンスやマスク着用に関する規制を無視していたことが直近の同国勢における新型コロナウイルス感染拡大を招いた旨、専門家らが非難しているのです。

この決定の根拠には国民の生存権があります。確かに個々人の生存の確保は、何にも先立ち重要です。他方で先述の通り、今次インド勢における議会選挙ではその主要な焦点のひとつにパンデミック対策がああります。もし選挙を介して感染が拡大したとすれば、そうした選挙活動を行った政党、すなわち現政権にとっては打撃となるでしょう。選挙延期の決定は、政権により恣意的に決められていないということができるのでしょうか。

2020年にはパンデミックの下で米大統領選が行われました。
前回(2016年)の選挙に比べ16倍以上の有権者が郵便投票を申請するなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響がみられました(参考)。
他方でトランプ前米大統領は郵便投票において、例えば郵便での投票が到着する前に投票所に行けば二重で投票が可能となるといった不正投票の可能性を再三指摘していました。
バイデン「新米大統領」の当選が決まった後も、合法な票のみを数えれば自分が当選した、などとする主張も続けています。

「民主主義」国家である米国勢においてすら―実際にトランプ前米大統領が主張する不正が行われたか否かはともかく―このように郵便投票に対して不正の可能性を主張する余地があるとすれば、より制度の整っていない国家において問題は深刻となるのではないでしょうか。
今次パンデミックの下でインド勢が下した決断は選挙制度、ひいては私たちの社会がよって立つ民主主義制度そのものを揺るがすことになるのでしょうか。







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