2021年03月16日

金銀比価と“金融ショック”:日本のマーケットはどの国から一番影響を受けるのでしょうか。今だからこそ株式マーケットにおけるリスクを知る。

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世界各国の株式マーケットにおいて実際にリスクが本当に迫っているのでしょうか。
そうだとしたらどのようなメカニズムでそのリスクが波及していく可能性があるのかを今回は分析していきます。
具体的には、まず一般的にリスク尺度とされる金銀比価と株価との関係性を見ていきます。そして、時系列分析と呼ばれる数学的手法を用いて、ある株式マーケットにおいてショックが発生した場合、どの程度のショックが他マーケットに波及するのかを定量的に試算したいと思います。

金融マーケットにおいて「安全資産」と呼ばれるものが複数あるのはご存じでしょうか。典型的なのが国債です。
国家による税金が返済原資であることなどから、株式マーケットにおいて急な下落が生じるとまずは国債(債券)マーケットに逃げるという流れがあります。しかしこれは、「あった」と言うべきものになってしまいました。リーマン・ショック以来、皆様ご存じの通り、国債が安全でないことは周知の事実となったからです。
それ以上にグローバルで「安全資産」として重要視されているのが金(ゴールド)です。他方で、歴史的に通貨として金と並んで使われてきたのが銀でした。現在はその需要の殆どを工業用や医療用・消費者製品用が半数近くを占めており、銀は景気に敏感な貴金属とされています(参考)。リスク局面では「安全資産」であるとされる金への逃避(「金買い」)が進む一方で実需の強い銀は売却(「銀売り」)が進むため、この2つの貴金属の価格比(金銀比価(Gold Silver Ratio))(参考:金銀比価は銀の価格に対する金価格の倍率として算出する)はグローバルにおけるリスク指標として重要なものであると言えるのではないでしょうか。
この金銀比価を日本(日経平均)や米国(ダウ平均)、英国(FTSE)、欧州(その代表としてドイツ(DAX))、さらには中国(上海総合指数)と韓国(韓国総合指数)の各国株式マーケットと比較したのがこれから紹介する図表1から図表6です。
これらを見ると概ね各株式指数と「逆相関」があることが分かると思います。逆に特徴的なのが、2011年以降の日本です。2011年中旬から昨年中旬までは順相関を有しています。1980年代中旬から後半(1988年)でもこのような動きを見せています。ここからもアベノミクスが平成バブルの“相似象(繰り返し)”である可能性が示唆されています。
他方で注目したい点が、日本や米国、中国、そして韓国の直近の動きがそれまでから一転し順相関を見せている点です。こうなった場合、三度反転が示唆されます。

(図表1 日経平均と金銀比価の日次推移)

(図表2 ダウ平均と金銀比価の日次推移)

(図表3 英FTSEと金銀比価の日次推移)

(図表4 独DAXと金銀比価の日次推移)

(図表5 上海総合指数と金銀比価の日次推移)

(図表6 韓国と金銀比価の日次推移)

(出典(いずれも):筆者作成)

では、仮にある株式マーケットにおいてショックが生じた場合、他国マーケットに対して如何なるショックを与える可能性があるのでしょうか。これを検証するのに頻用されるのが時系列解析と呼ばれる数学的手法です。これを用いて定量的に分析してみます。
ここで用いるのは、ある株式マーケットの終値が、前日の終値およびその他マーケットの前日の終値で説明されるという時系列モデルです(※10)。このモデルを用いると、ある指数の基準時点(0日目)に1標準偏差分のショック(上昇ないし下落)が生じた場合に、それ以後(1日目、2日目…)の自分ないし別指数にどの程度のショックがどちらの方向(上昇なのか下落なのか)に生じるかを算出できるのです。
この算出結果をまとめたのが、下記の図表7から図表12です。たとえば図表7を見てみてください。これは日経平均がある基準日(横軸)に1標準偏差分だけ変動した場合に、左上段から右上段、左中段…、の順番で(1)日経平均、(2)ダウ平均、(3)英FTSE、(4)独DAX、(5)上海総合指数、そして(6)韓国総合指数のそれぞれが、翌日以降(横軸で1、2、3…)の最長5日後までにどの程度の変動を与えるかを示すものです。
たとえば最左上(日経平均への影響を表す)のグラフにおいて、0時点(横軸)において期待値よりも1標準偏差(縦軸)だけ余分にある方向へ変動したとき、翌日(横軸の1)に-0.156標準偏差分だけ逆方向に変動する可能性が示唆されます。他方で、その他の国では韓国を除きあまり影響が無いことが分かります。また2日目以降ではその影響が全てのマーケットにおいて影響が殆ど失われています。

(図表7 日経平均が1単位変動した際に各株式マーケットに与えるインパクト)

(図表8 ダウ平均が1単位変動した際に各株式マーケットに与えるインパクト)

(図表9 英FTSEが1単位変動した際に各株式マーケットに与えるインパクト)

(図表10 独DAXが1単位変動した際に各株式マーケットに与えるインパクト)

(図表11 上海総合指数が1単位変動した際に各株式マーケットに与えるインパクト)

(図表12 韓国総合指数が1単位変動した際に各株式マーケットに与えるインパクト)

(出典(いずれも):筆者作成)

各株式マーケットが動いたときに日本株が受けるインパクトに関して以上の結果をまとめます。

●日本が最も大きく影響を受けるのは米国です。米株式マーケットがその期待値よりも1標準偏差だけある方向に変動すると、日本株マーケットはその翌日に期待値よりも0.549標準偏差分だけ同じ方向に変動する可能性があります。
●次に影響を受けるのが欧州(英国、ドイツ)です。英国株マーケットが1標準偏差だけある方向に変動すると、日本株マーケットはその翌日に期待値よりも0.190標準偏差分だけ同じ方向に変動する可能性があります。他方でドイツ株マーケットが1標準偏差だけある方向に変動すると、日本株マーケットはその翌日に期待値よりも0.124標準偏差分だけ同じ方向に変動する可能性が在ります。
●他方で逆の影響を受けるのがアジア(中国、韓国)です。上海株マーケットが1標準偏差だけある方向に変動すると、日本株マーケットはその翌日に期待値よりも0.191標準偏差分だけ逆方向に変動する可能性があります。他方で韓国株マーケットが1標準偏差だけある方向に変動すると、日本株マーケットはその翌日に期待値よりも0.053標準偏差分だけ逆方向に変動する一方でその翌日には初日と同方向に0.096標準偏差分だけ変動する可能性があります。

このように日本株マーケットは米欧株と強い相関があることが示唆される一方で、それに比較するとアジア株の影響力は相対的に低いことが示唆されます。他方で興味深いのはアジア株が下落したときのショック到来までにラグが大きい(翌々日以降に到来する)蓋然性が高いことです。
日本におけるショックを考えると米国がまず重要と言われます。実際、その影響力が大きいことは定量的にも明らかとなりました。ただし、中国、そして韓国の直近の動きを無視することはできません。それは定量的に見るとすぐには日本に反映されない可能性があります。我が国の株式マーケットは外国人投資家が半数以上を購入しています。つまり外国株の動きに大きく影響を受けることを意味するのです。その中でも、特にアジアに目を向けながらつぶさに見つめる必要があるのではないでしょうか







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