2021年03月14日

日本人が発明した「塗る」太陽電池は世界の救世主となるか

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菅義偉首相は去る10月26日に行われた首相就任後初めての所信就任演説で
「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、
すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と述べました(参考)
具体的な目標年度を設定して温室効果ガス排出ゼロを表明するのは初めてのことです。

「2050年に温室効果ガス排出実質ゼロ」という目標に関連して注目が集まっているのが、
次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」です。

太陽電池とは太陽光エネルギーを直接電気に変換する電池です。
その種類は大きく分けて
(1)シリコン系、
(2)化合物系、
(3)有機系、
という3種があります。
現在量産されている太陽電池の多くは(1)シリコン系と(2)化合物系に当たります。
これらの太陽電池は壊れにくく高変換効率(高いもので25パーセント)を達成している一方で、
材料や製造コストが高いという点にデメリットがありました(参考記事)。

 

(図表:単結晶シリコン型太陽電池)

(出典:Wikipedia)

 

これらに代わる太陽電池として注目が集まっているのが、
2009年に宮坂力教授が提案して以来世界的な注目を集めている「ペロブスカイト太陽電池」なのです。

ペロブスカイト太陽電池には低コストで高変換効率、さらには設置場所を選ばないという利点があります。

ペロブスカイト太陽電池ではNH3CH3PbI3という化学式で表される
ペロブスカイト結晶を含む溶液を金属酸化物の膜上に塗布して可視光を吸収させ、
その膜の上層にプラスの電気(正孔)が集まる正孔輸送(HTL)材料を接合します。
このHTL材料が非常に高価であったことがデメリットとされていたのですが、
2016年にはスイス勢のEcole Polytechnique Federale de Lausanne(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の
研究者がペロブスカイト太陽電池を従来より大幅に低コストで製造する技術を開発したと発表しました。
HTL材料の5分の1と比較的安価な材料FDTを用い、高変換効率を保ちつつ低コスト化を実現しました(参考)

他方で高変換効率や実際の設置という点では課題も残されています。

ペロブスカイト太陽電池が従来のシリコン系及び化合物系太陽電池に迫る
20パーセントを超える変換効率を達成したとの報告がなされる一方で、
そのように変換効率の高い太陽電池を再現性良く製作することが困難です(参考)
そもそも「ペロブスカイト太陽電池」発電層形成メカニズムはいまだ解明されておらず、
研究は進められているものの変換効率の高い太陽電池の安定供給という点では大きな課題であるといえます。

さらにペロブスカイト太陽電池は劣化が非常に早く耐久性が低いとされるが、
そのメカニズムも未だ明らかではないことも課題なのです(参考)
また室温で有機溶媒に溶けるため印刷や塗布で作ることが出来るため
製作が比較的容易であり設置場所を選ばないということが利点に挙げられる一方で、
大型化すると変換効率が大きく低下するという点で普及に向けた障壁となっています。

日本におけるペロブスカイト太陽電池研究・開発はいわゆる「産官学連携」によって行われています(参考記事)。
しかしこの「産官学連携」による研究はそれ自体について失敗事例が目立つことも指摘されています(参考)

加えて菅首相が打ち出した2050年という目標年度までに
気候変動の原因として取り沙汰される温室効果ガスがどういった事態をもたらす“演出”がなされるのか、
そしてそれとの関係で太陽電池の開発がいかにして進められるのか。
引き続き注視していきたいと思います。







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