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満洲国の経験と日露関係 ~我が国はロシア勢といかに向き合うか~

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マーケットで勝つ!ための先行指標のつかみ方
  • 米国/イランは戦争に突入するのか
    米国/イランは戦争に突入するのか

    はじめに ~なぜ米国は米軍増派を行っているのか~

    去る2015年に米英仏ロ中の国連安保理常任理事国に独国を加えた6か国とイランの間で、2012年から継続している経済制裁の一部緩和と引き換えに核開発を制限する合意(イランの核問題を巡る「7か国協議」)を締結した背景には、当時勢力拡大を図るイスラム系武装集団「イスラム国(IS)」への対抗勢力としてイランの役割に期待する譲歩がありました。

    合意の中で今次米トランプ政権が問題視するのが、①高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間生産凍結、②貯蔵濃縮ウラン10トンを300キロに削減、③1万9,000基の遠心分離機を10年間で6,104基に制限する条項に対してであります。

     

    期限を過ぎた後に無制限での核開発が可能となり弾道ミサイル開発も制止していないことが理由であります。
    そして昨年(2018年)5月に米国はこの合意からの離脱を公表し9月に二次制裁を復活させ、今年5月にイラン産原油輸入禁止を猶予されていた我が国を含む8か国に対しても全面禁輸を迫るに至っているのが今日の政治情勢であります。

    つまりイランが米国との間で核合意に関する再交渉に臨めば良いわけであるが平和利用目的の核開発は国家主権であるとイランは応じないです。

    一方、米欧州軍第6艦隊から第12リンカーン海軍空母打撃群、第7空母航空群、アーリントン海兵強襲揚陸指揮艦、米国ルイジアナ州空軍基地から空軍爆撃部隊B-52H戦略爆撃機、ペトリオット迎撃部隊等を中東に派遣するに至りました。英国、スペインからの部隊支援も見受けられるものの駆逐艦、特殊部隊といった規模に限定されています。

    イスラエルからの情報によりイラン革命防衛隊及びその支援を受ける民兵組織によるイスラエルやサウジアラビア、駐留米軍からなる約40,000人及び基地施設に対する攻撃の警鐘がもたらされ、米中央軍がこの警鐘に基づき部隊防護と抑止力強化のため増派要請を行ったからであります。

     

    イスラエルの危機感はイランが支援するレバノンのヒズボラ、パレスチナ・ガザ地区のハマス、シリアに展開するイラン革命防衛隊からの脅威の拡大認識であり、アラブ首長国連邦(UAE)沖でのサウジタンカーへの攻撃、イエメンからサウジ領内のパイプラインへの攻撃、バグダッド中心部の政府施設や大使館が集中する旧米軍管理地区へのイラク民兵組織からの攻撃は全てイランの支援を得たものとされ危機感の証左となって米軍増派を誘導したものであります。

     

    戦争の可能性 ~戦争に突入する可能性はあるのか~

    本格的な武力衝突や国家間戦争の事態となれば中東全域が巻き込まれるというシナリオは容易に推定されています。

    イスラエルはシリアから米軍が撤退したことによりイランから支援を受ける勢力やシリアに所在する革命防衛隊、パレスチナのハマスから異方向同時攻撃に晒され、ハマスとイスラム同胞団繋がりのエジプトの介入を招きます。

     

    同様にシリアからの米軍撤退によってそれまで米軍に守られていたクルド部隊はトルコ、ロシアの進駐を受け、東西に分断されているクルドの統一に危機感を抱くトルコの攻撃に晒されています。

     

    この間隙をぬってISは勢力を回復しアフガン内の勢力と呼応してアフガニスタン政権を脅かしパキスタンに波及します。サウジアラビアはイランの支援を受ける勢力及びイランからの直接攻撃に晒されイラク国内のシーア派民兵組織も呼応します。

     

    ロシアとイラン間の正式な軍事協定は無いものの、ロシアの関与も懸念され、中国はパキスタンのグワダル港に軍事プレゼンスを進出させます。パレスチナとの交流を維持する北朝鮮にとっては武器輸出の機会であり同時に自国に置き換え対峙するインド太平洋軍の動向を注視する事態となります。

    一方でイランの原油輸出能力は日量250万バレルであるが米国の二次制裁開始に伴い本年5月時点では100万バレルに減少している模様である。最大の輸入国である中国は約80万バレル規模と推定され、中国が禁輸に応じたとも伝えられることから、イランの石油輸出はほぼ完全に停止状態となりました。サウジアラビアの生産余力は330万バレルでありイランの減産分を補填し得れます。しかし本格的な戦争となれば主要なペルシャ湾沿岸地域に集中する石油関連インフラはほぼ壊滅するであろうことから全世界規模での経済的混乱に発展します。

    イラク戦争当時と作戦環境は大きく異なり米地上軍の戦略侵攻は困難であるためオスプレーで海兵隊部隊を侵攻させるのが限界であります。よって完全な制圧には短期で至らず大規模な戦略爆撃に依存することとなる。革命防衛隊を中心に非対称戦闘が展開され米軍側が劣勢に陥ればイランへの戦術核兵器使用も否定できない。いずれにせよ米軍は大被害を生じイランは国家壊滅の危機に瀕します。

     

    このシナリオ認識があるからこそ米国、イラン双方の姿勢は抑制的となっているのであります。
    5月24日に米軍増派と喧伝されたが、1,500人規模であり海兵隊部隊の最小単位(中隊)レベルに留まっています。
    現時点で米国とイランの間での本格的武力紛争(国家間の戦争)が生起するかと言えば、答えは否であるります。

    おわりに ~戦争突入の時期を考える時の指標は何か~

    米国において宣戦布告及び戦争予算承認の権能は議会に在るが、米軍最高司令官である大統領は「戦争権限法」により60日間、最大90日間の軍事行動を独自の決断において採り得れます。

     

    ベトナム戦争、イラク戦争おいても議会の宣戦布告は結局無くなし崩しの感も否定できないです。一方で9.11米国同時多発テロ後に制定された「武力行使権限の承認(AUMF)」に基づき米軍は個別的に議会から承認を得ることなくテロ組織を攻撃可能な状態にあります。

     

    去る2007年に既にその指定が成されているにも拘わらず今年4月8日にイラン軍事組織であるイスラム革命防衛隊に対し改めて「外国テロ組織(FTO)」の指定が成された。また主権の象徴である米軍部隊や米軍人に対する攻撃が発生した場合直ちに米国は自衛権を発動し得れます。

     

    こえらの点を考慮すると、イスラム革命防衛隊が駐留する米軍部隊施設に極地的攻撃を仕掛けた場合や偶発的な衝突が発生した場合戦闘が発生する。国際法上の復仇の要件、限度の判断は当事国が行うため米軍は反撃します。軽視してならないのはペルシャ帝国の末裔との誇りに火が付いた場合イランは徹底抗戦するであろうことから、高烈度の国家間戦争に発展する。したがって革命防衛隊の動向が戦闘突入の時期を決定ります。

    一方で計画された武力侵攻であればこの場合ラマダンの時期(今年は5月5日から6月3日)や気候(例えばペルシャ湾沿岸の昼間気温50度、砂嵐の時期等)、気象、地形特性などが侵攻開始時期・時間を決定する。近年メディア対策も重視されていることから第一報は随伴するCNNの臨時ニュースであろうが、戦闘開始のタイミングが近づけば情報は一時途絶するものであり、それがまた戦闘開始時期を示唆するシグナルとなります。

    現時点で最も重視すべきなのは5月8日イランのロウハニ大統領が60日間の濃縮ウラン及び重水の売却停止を宣言する一方で関係5か国に対し60日間は再協議に応じる姿勢を見せたことであります。銀行や石油の分野を含めイランの基本的な利益が確保されるのであれば停止措置を解除するもののそうでない場合には核合意以前の状況、つまり核開発を進めるとした。したがって7月7日までは膠着状態が継続し戦争突入は無いと考えられます。

  • 成長する製紙業「多様性」へ戻る紙の世界
    成長する製紙業「多様性」へ戻る紙の世界

    新型コロナウイルスの世界的な流行によって私たちの日常のさまざまなことが劇的に変わりました。その中の1つに「紙」の利用があります。数年前からすでにデジタル化、ペーパーレス化で使用量が減ると言われてきた。これが外出自粛やテレワークによってそのスピードが速りました。

    確かに「書く」「情報を印刷する」という目的のための新聞紙や印刷などグラフィックペーパーの需要は減少傾向にあります。しかし、需要が増加しているセクターもあります。

    製紙業では「古紙」と「木材(パルプ)」を原料に、それぞれを単独で用いたり、または配合したりしながら各種の「紙・板紙」製品を生産している。原料の内訳は約6割が「古紙」、約4割が「木材(パルプ)」であります。

    (図表:パルプ)

    (出典:Wikipedia)

    「紙」ではティッシュペーパーやトイレットペーパーといった「衛生用紙」の需要が拡大しました。「エリエール」ブランドで知られる大王製紙株式会社3880)は「衛生用紙」でトップシェアを誇ります。商業施設や医療福祉施設などの法人向けの販売が中心だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で人々の衛生面の意識が向上し、家庭向けの需要が増えています。海外でもCOVID19の発生が病院からのティッシュペーパーといった「衛生用紙」の需要を高めています。米キンバリークラーク社(KimberlyClarkCorporationはCOVID19対策のためにトイレットペーパーの増産と寄付を行いました。

    「板紙」では「段ボール原紙」の需要が増加しています。オンライン・ショッピングの利用増加が背景にあると考えられる。具体的には、段ボールやクラフト紙袋といった包装の需要が拡大しました。さらにここ数年CO2排出量に対する懸念が加わったことで、化石由来の包装材に変わる素材として期待されている。昭和パックス株式会社3954は産業用包装資材のトップ・メーカーであります。

    そして「紙・板紙」と並ぶ次の柱として期待されている素材の1つがセルロースナノファイバーCNF)だ(参考記事)。木を構成する繊維をナノレベルまで細かくほぐすことで生まれる最先端のバイオマス素材であります。たとえば、日本製紙株式会社(3863)はセルロースナノファイバー(CNF)の技術開発、用途開発を進めています。

    植物由来の素材で鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度等の特性を有するためCO2の効果的な削減が期待されています。

    (図表:行灯)

    (出典:Wikipedia)

    今、製紙業界は続々と変わっていっている。ペーパーレス化が進み、求められる商品が変わっています。従来の「書く」「情報を印刷する」紙から「包装」「産業用包装資材」といった新たな用途へと移行し、石油由来に変わる新たな素材を開発しているといった条件を満たしている企業が注目されます。

    世界の歴史を遡れば、原初の紙はもともと「包む」ためのものでありました。その後、筆記可能な紙が開発されることによって「書く」「情報を記録する」「伝達する」という用途が加わりました。江戸時代には襖や和傘、扇子、提灯などといった建築・工芸材料でもあった。製紙業が衰退していると考えるのは「紙」に対する現代の私たちの認識の狭さから来ているだけであって、紙そのものの利用可能性はまだまだ思いがけないところに転がっているのかもしれないです。

  • 「OPEC」から「OMEC」へ~国際組織の栄枯盛衰が示すグローバル社会の変転~
    「OPEC」から「OMEC」へ~国際組織の栄枯盛衰が示すグローバル社会の変転~

    ロシア勢によるウクライナ侵攻が長期化する中、自らの政治的目的を達するためにエネルギー資源を武器に行動する力を持つ同国勢は、世界的なエネルギー市場が脆弱性を抱えていることを浮き彫りにしていると言えます(参考)。

    アメリカン大学のジェフ・D・コルガン准教授は、「原油埋蔵量の所有をめぐる『資源戦争』の脅威はしばしば誇張されるものの、石油が戦争の主要な原因になってきたと明らかにしています。去る1973年以降の国家間戦争の4分の1から2分の1は、一つ以上石油関連の因果関係メカニズムに関連しています。国際安全保障にこれほどの影響を与えたものは他にはない」という見解を示しています。そのメカニズムとは具体的に、(1)「資源戦争」:国家が力によって埋蔵された原油資源を獲得しようと試みること、(2)「石油侵略」:石油がサダム・フセインやホメイニのような攻撃的な指導者を国内の反対勢力から遮断し、危険な外交的冒険主義に積極的に着手させる、(3)産油国における内戦の表面化、(4)「反乱への資金提供」:イラン勢がヒズボラ勢にオイルマネーを注ぎ込むこと、(5)「石油市場を支配すると見込んで引き起こされた紛争」:1991年のクウェート勢をめぐる米国勢のイラク戦争など、(6)「石油輸送ルートの支配をめぐる衝突」:輸送レーンやパイプラインなど、(7)「石油関連の不平不満」:石油国家における外国勢からの労働者の存在は、アルカイダのような過激派集団による地元民の勧誘を促している、(8)石油関連の問題が多国間協力の障害になるケース、といった事例を明らかにしています(参考)。

    こうして長らく、戦争の主要な原因になってきた石油であるが、ロシア勢への依存度を減らすために低炭素エネルギーへの迅速な切り替えがより加速していくと見られています。例えば、欧州勢(EU)は化石燃料の消費でロシア勢への依存を減らす方法として、来る2030年までの環境目標達成のための投資に追加する形で再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率化の加速、天然ガスの代替調達先を確保するなどの措置に1950億ユーロを投資するという計画を今月(5月)中に示す見込みであるという(参考)。また、バイデン米政権も電気自動車の普及など低炭素エネルギー移行のために必要な重要鉱物の国内生産を促進しています。同政権が冷戦期でもある去る1950年に制定された国防生産法(DPA)を発動することで、リチウム、ニッケル、グラファイト、コバルト、マンガンなどの鉱物がDPA対象品目なり、7億5000万ドル(約910億円)の資金が鉱山会社の下で活用できることになると言われています(参考)。

    (図表:米国勢における鉱物資源の輸入依存度)

    (出典:Bloomberg

     こうした事情から、世界の新しいエネルギー・システムは「OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries、石油輸出国機構)」から「OMEC(Organization of Mineral Exporting Countries)」へ移行する可能性があるとの指摘もあることは注目に値します。OMECは世界的コンサルティング企業であるKPMGとユーラシア・グループが新たに考案した造語で、こうしたグループはまだ存在しないものの、地政学的なパワーは石油を支配する諸国勢から重要な金属を支配する諸国勢へと移行する可能性があることを示したものであります。今後10年以内に炭素排出量のネット・ゼロを目指すという目標を達成するために、発電からの炭素排出を減少させ、石炭に依存している製造業や運輸業で脱炭素化が求められています。再生可能エネルギー技術を大規模に展開する必要がある中で、世界におけるこれら資源の埋蔵量は需要予測を満たすのに十分であるにもかかわらず、将来の供給は大きなリスクに直面しているとKPMGは指摘しています。つまり、これら「戦略的資源」へのアクセスや使用が広範な経済発展や技術革新、エネルギー転換にとって重要となることから、国家安全保障の名の下に政治化される可能性があり、こうした潜在的な需給ギャップや制約により、幅広い産業がこれら資源の生産や使用に関する陸上、海洋、経済におけるリスクにさらされることになるということであります(参考)。

    (図表:鉱物資源の採掘)

    (出典:エネルギー庁

     ではOMECとはどのような組織となりうるのだろうか。OPECとOMECの大きな違いについてKPMGは、OPECのような価格操作カルテルを結成しようとする試みではなく、積極的な気候変動目標を持つ国と、重要な鉱物にアクセスできる企業との間の協力であるべきだということであり(参考)、脱炭素化時代を見据えて、世界的に影響力を有する組織として存在感を発揮する可能性は十分にあるとしています。「ウクライナ戦争」が継続し、米欧勢が既存の国連などを含んだ国際的なスキームそのものをロシア勢に不利な形で変更することで対抗し始める可能性もあること、また国際通貨基金(IMF)の役割についても疑義が生じていることも一部で伝えられる中で(参考)、グローバル社会を理解する上で、今後どのような国際組織が形成され、力を有することになるのか、その動向により一層注目していくべきではないでしょうか。

    グローバル・インテリジェンス・グループ リサーチャー
    倉持 正胤 記す

     

  • 「華僑・華人ネットワーク」の 世界的影響力〜中華圏ビジネスで成功するためのカギとは〜
    「華僑・華人ネットワーク」の 世界的影響力〜中華圏ビジネスで成功するためのカギとは〜

    2021年も残りわずかとなる中、国際情勢においては北京冬季五輪をめぐる「外交ボイコット」による米中“角逐”が“演出”され、ロシア勢の軍事行動リスクが“喧伝”されているところで、
    『日本経済新聞』は2021年12月19日の記事にて年末の世界の焦点を3つの「A」としてまとめています(
    参考)

    その「A」とは、「米国勢(America)」、「同盟国(Allies)」、「専制主義(Autocracy)」です。
    確かに、バイデン米政権は、ここにきて、コロナ対策、物価上昇、与野党対立という「三重苦」により支持が急降下しており、
    年末年始にかけて「米国勢(America)」が外交において起死回生策に打って出る可能性も考えられます。
    また、去る9月には米英豪による安全保障枠組み「AUKUS」、日米豪印戦略対話「クアッド」が発足した中で、
    12月には、米国防総省にて「AUKUS」の初会合が開催されました。
    また、「クアッド」については、来年(2022年)に我が国で開催することで合意されたとの情報もあり、
    これら「同盟国(Allies)」の動きとそれに対する中国勢から何らかの“反抗”が“演出”される可能性も否定できません。
    他方で、2021年12月9日〜10日にバイデン米大統領が主宰し、オンライン形式で行われた「民主主義サミット」についても、
    主宰者である米国勢自身の民主主義も危ういという中で、専門家からも「大山鳴動して鼠一匹」、「学会発表のようだった」など、
    冷ややかな反応がでており、「専制主義(Autocracy)」を含め非民主主義的なスキームが改めてハイライトされる気配すらああります。

    (図表:「学会発表」とも揶揄された「民主主義サミット」)

    (出典:アルジャジーラ)

    もっとも、これら3つの「A」すべての根底に流れる動きこそ中国勢の動向であり、世界史上において多大な影響力を行使してきました。
    そして今もグローバル社会において影響力を誇示している「華僑・華人ネットワークのハイレヴェル」の意向に目を向けなければならないのではないでしょうか。

    (図表:「日本三大中華街」の一つである神戸・南京町)

    (出典:筆者撮影)

    例えば、米国勢との関係では、その成立の段階から実際のところ華僑・華人ネットワークのハイレヴェルからの莫大な財政支援の下で、
    19世紀後半以降成り立ってきたとの歴史を持つ点があります。また、戦後つくられたブレトンウッズ体制は「金融・融資・貿易」の3本柱でしたが、その背後には華僑・華人ネットワークのハイレヴェルが「中華民国」という形でそれぞれに対して深くコミットしたことが挙げられます。

    米政界とのつながりも長く深い歴史があります。
    とくに、リチャード・ニクソン米大統領による電撃訪中以降は、中国共産党勢という意味でのチャイナ・ロビーの影響力も次第に増強しています。
    トランプ前大統領が自身のSNS立ち上げのために設立した「デジタル・ワールド・アクイジション(DWAC)」にも、
    表向き中国勢のメディア王ブルーノ・ウー氏も関与する形で、中国共産党勢によるチャイナ・マネーが流入していることも指摘されており、これはトランプ氏にとっても想定外であったとの情報もあります(参考)
    去る2020年の米大統領選は「ロシア・ゲート」が焦点となりましたが、
    来たる2024年の米大統領選では、あるいは「チャイナ・ゲート」が“喧伝”される展開も考えられます。

    そもそも歴史上、中国大陸から海外への「移民ブーム」は3度ありました(参考)
    1回目のブームは、清朝の支配が安定し、急速に中国経済が発展して人口が増加した18世紀後半に到来しました。
    この時、東南アジア勢や、一部は米国勢へ流出し現在世界に分布する「チャイナ・タウン」の原型が形成されました。
    中国近代史上最も激動の時期であった20世紀初頭には、2回目のブームが到来しました。この時期には貧困層の他、上流階級も広く世界に広がっていきました。
    1970年代末頃には、鄧小平の指導体制の下で行われた「改革・開放」政策によって中国社会の近代化が始まると同時に、3回目のブームが到来しました。彼らは、「新華僑」と呼ばれ、それ以前に流出した「老華僑」とは区別されています。階層も、「新華僑」は高学歴者、社会エリート、富裕層が多くを占めています。

    他方で、我が国では、「老華僑」「新華僑」の時代的区分は、1990年代ともされています。
    実際、筆者が神戸・華僑より側聞した情報によると、それ以前は「老華僑」、以降は「新華僑」とされているのが実態であり、
    彼らは我が国における情報収集においても違いがあるといいます。すなわち、「老華僑」はほぼ我が国に同化し、情報も我が国のメディアから得ているが、
    他方で「新華僑」は我が国においても中国勢の検閲を経たソース、例えば、「WeChat」などからしか情報を得ておらず、いわば「洗脳」されている状態にあるといいます。
    それゆえ、とくに若い世代の「新華僑」をビジネス的に取り込むには、やはり「WeChat」などを活用して情報発信するのが有効となるとの由だ。

    「グローバル・マクロ(国際的な資金循環)」というマクロ的な視点でも、他方で、我が国で中国ビジネスを展開するというミクロ的な視点でも、
    いずれにしても、華僑・華人ネットワークの動向がカギになる点に変わりはなく、このカギをつかむことで、あるいは今後の米中関係、
    そして世界の把握した上での「次の一手」を打ち出すことになるのではないでしょうか。

  • 『億万長者』はなぜ宇宙を目指すのか?
    『億万長者』はなぜ宇宙を目指すのか?

    ジェフベゾスが宇宙を目指す

    コロナ後の人生

    大富豪が牽引する宇宙ビジネス

    去る1969年、プリンストン大学の物理学者ジェラード・K・オニールは人類の移住先として宇宙空間に建造される大型人工衛星
    「スペースコロニー(宇宙植民地)」を提唱し、SFオタクやNASA職員、年齢を重ねたヒッピーらの間で話題となりました。

    地球と月との間で互いの引力がつりあう領域(ラグランジュ・ポイント)に設置される「スペースコロニー」では、
    居住区域が回転し遠心力によって擬似重力を得ることができ、人間が地球上と変わらない生活ができるようになるという構想です。

    (図表:シリンダー型「スペースコロニー」の想像図)(出典:Wikipedia)

    1980年代、プリンストン大学のオニール・ゼミで、オニールの構想に熱心に耳を傾ける学生がいました。
    彼は世界経済が拡大し人口が増加し続ける中でも、人類が未来を確保するための唯一の道が宇宙であると悟り、
    いつかこの構想を実現すべく莫大な財産を蓄え続けました(参考)

    学生の名は、ジェフ・ベゾス。Amazonの創業者である。

    大学卒業後ベゾス氏はインテルや、AT&Tの研究開発部門として独立したベル研究所などのオファーを受けましたが、
    彼が選んだのは金融決済システムを手掛けるスタートアップFitel社でした。
    その後、米有力投資銀行バンカース・トラスト、ヘッジファンドD. E. Shaw & Co.社を経て、1994年にシアトルでインターネット書店「Cadabra.com」を開業。
    現在の「Amazon.com」の誕生でした。21世紀初頭のITバブル崩壊を生き残り、「世界で最も影響力のある経済・文化的勢力の一つ」となりました(参考)

    (図表:カーター米国防長官(左)と会談するジェフ・ベゾス氏(右))
    (出典:Wikipedia)

    そうした中で2000年、民間宇宙開発企業『Blue Origin』を設立しオニール構想の実現に向けて動き出し、
    ついに2021年7月20日(米東部時間)、ベゾス氏ら4人を乗せた宇宙船のロケット打ち上げが成功し、ベゾス氏は10分間の宇宙飛行を実現させたのです。

    またこれに先立ち、(2021年)7月11日には英実業家リチャード・ブランソン氏は、自ら創業したヴァージン・ギャラクティック社の宇宙船で、
    NASAや米空軍が「宇宙」とする高度約80キロ(50マイル)を超える高度約85キロに到達しています(参考)
    そして、米Tesla社のCEOイーロン・マスク氏も、宇宙開発企業SpaceXで同じく宇宙を目指している。

    気候変動、パンデミック、拡大する格差など、全人類が地球規模の課題に直面している今このタイミングでの宇宙旅行など「道楽であり、大富豪にしかできない贅沢」だとする批判もありますが、
    他方でこれら地球規模課題が極大化している今だからこそ宇宙を目指しているともいえます。

    現時点では、その法外なコストゆえに大富豪でもなければかかわることのできない宇宙ビジネスですが、
    今後、さらに宇宙旅行が収益性のあるビジネスとして確立すれば、これは巨大なフロンティアとなることは間違いないでしょう。
    その市場規模は、2040年代には全世界で1兆ドル(約109兆円)以上になるとの試算も出ている(参考)

    そして我が国企業の技術力もその巨大なフロンティアの最前線で活躍しているということは、「はやぶさ2」の帰還をみても明らかです。
    三菱重工業(7011)の機体姿勢制御装置や、NEC(6701)のイオンエンジン、富士通(6702)の軌道を計算するシステムなど、大企業の活躍がフォーカスされますが、
    これらを支える中小企業の技術力にも注意が必要です。
    なぜなら我が国の中小企業がもつ技術力やノウハウ、頭脳を米国を中心とした海外勢も注目しているためです。
    例えば、米ベンチャーキャピタル「In-Q-Tel」社は、投資パートナー「nTopology」社を通じて、Yamaichi Special Steel(YSS)社との覚書を発表していますが、
    この「In-Q-Tel」社は米中央情報局(CIA)直下の投資機関であることは「公然の秘密(open secret)」です(参考)

    宇宙ビジネスは、電子、部品、新素材等、多岐にわたる産業分野です。
    大富豪が牽引する宇宙ビジネスとそれに連動する我が国の「宇宙開発関連銘柄」に注視すべきでしょう。さもなくば早晩、海外勢に刈り取られる恐れもあるのです。

  • 「金(ゴールド)」=「安全資産」の神話が崩れた今、再び「金保有」を高める中央銀行の思惑とは
    「金(ゴールド)」=「安全資産」の神話が崩れた今、再び「金保有」を高める中央銀行の思惑とは

    シンガポール金融管理局(MAS)は、2021年5月~6月にかけて合計約26.3トンもの金(ゴールド)を購入し、数十年ぶりにその保有量を拡大させているとの報道がありました(参考)
    「FXStreet」の報告書によると、世界的なインフレ圧力とエネルギー市場の混乱もあって、中央銀行の金への欲求が再開される中で、
    シンガポールに限らず、セルビア、ハンガリー、タイ、フランス、ドイツ、ブラジルの各中央銀行も、
    ここ数カ月で金準備を追加しており、とくに、金準備を20%以上に増やしたロシアは、現在、金準備の規模で世界第5位にランクしています(参考)

    図表:金準備のランキング
    出典:U.S. Global Investors

    価値が相対的に安定し、「有事の金」とも言われる金(ゴールド)は不確実性が増す世界情勢の中にあっても、国家財政の安定性を保つ手段の一つとして、いつの時代もその存在感を維持してきました。
    中央銀行による大量の金の蓄積は、世界の基軸通貨としての米ドルからの継続的なシフトを示し、
    世界的な経済力学の継続的なシフトを示しているともみられていますが、果たして、昨今の各国中央銀行による金(ゴールド)の蓄積の背景には、
    やはり地政学リスクの炸裂といった警告を意味するものでしょうか。

    まず、我が国でもよく「有事の金」「安定資産」と言われる金(ゴールド)ですが、その価値は歴史上、他の金融商品同様、ボラティリティに満ちたものであったといえます。

    近代以降、金貨と銀貨が混在して使用されるようになる中で、その価値は、金と銀の相対価値である比価によって変動していました。
    例えば、大規模な金山が発見されると、銀の相対価値が高くなり、金の価値が下がる、という構造です。

    大航海時代の幕開けにより、スペインが南米でポトシ銀山を発見して以来、欧州には大量の銀が流入し、16世紀で欧州では価格革命が勃発しました。
    当時イングランドでは、金1に対し銀15の交換比率にまでその差が開きましたが、
    他方で価格革命の影響がまだ及んでいないインドでは、金1に対し銀10の比率が維持されていました。
    そこで、インドで銀10を金1と交換し、イングランドに持ち帰り銀15と交換して、その銀を再びインドに持ち込めば、金1.5と交換することができ、
    (往復のコストなどを考慮しなければ)50%の利益率を確保できたわけです。

    この裁定取引のスキームを最大限利用して巨万の富を築いたのが、かの東インド会社でした。
    このスキームは、当然、中国や「黄金の国ジパング」も対象とされました。とくに開国直後の幕末日本は、大量の小判が流出していきました。
    2010年に紅茶会社として東インド会社を“復活”させたインド出身の実業家サジブ・メフタ氏
    出典:The East India Company

    18世紀に入るとこうした裁定取引のスキームを終わらせるべく、当時、英国の造幣局長であったアイザック・ニュートンは、最適な金銀比価として「金1につき銀15.2」を設定。
    その後19世紀に入ると、銀貨との交換はなくなり、イングランド銀行券と金貨の兌換による金本位制が始まりました。
    それ以降、各国は、海外債務返済用と兌換用としての金(ゴールド)の蓄積に奔走することになったのです。

    金本位制がなくなり、また金(ゴールド)が管理通貨を代替することも考えられない今日においても、
    金(ゴールド)は、国家財政にとり力の源泉であるとみなす向きは以前としてあり、2012年に米大統領選挙に出馬したロン・ポール議員(当時)は、金本位制の復活すら主張していました(東洋経済オンライン)

    金本位制への回帰を主張したロン・ポール議員(当時)
    出典:Wikipedia

    これに対し、ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ポール・クルーグマンは、
    「ニューヨークタイムズ」紙上に、金価格を消費者物価指数で割った「実質金価格」をグラフ化し、いかに金価格が不安定であるかを示し、最後にこう付け加えています:

    「金本位制の下で、米国には大きな経済危機は起こらなかった。1873年、1884年、1890年、1893年、1907年、1930年、1931年、1932年、1933年を除いては」

    図表:実質金価格(=金価格÷消費者物価指数)
    出典:NewYork Times

    このように「安全資産」というのはもはや神話に近いですが、
    他方でこれまで見てきた歴史を振り返っても金準備増減の背景には、その国の思惑が透けて見えるのが、まさに金(ゴールド)の存在であるといえるでしょう。

    では、昨今の各国における金準備増加の背景とは何なのでしょうか。
    例えば、ロシアであれば緊張深まるウクライナ情勢をにらみ、米国による経済制裁を受けた場合に備えて、金準備を増やしている、との見方もできるかと思われます(Reuters)

    では、冒頭に述べたシンガポーでの動きの背景には何があるのでしょうか。参考になるのは、1968年にシンガポールが、ブレトン・ウッズ体制の崩壊を予見したNgiam Tong Dow上級顧問によるアドバイスを受けたゴー・ケンスイ副首相(当時)が南アフリカから金(ゴールド)を購入したという記録です(Zero Hedge)

    その後、1971年8月、ニクソン米大統領は金ドル兌換の停止を含む新経済政策を発表し、名実ともに金・ドル交換性に基づくブレトン・ウッズ体制は崩壊することになりましたが、
    昨今の金(ゴールド)蓄積もこうした金融秩序変転の序章となるのではないでしょうか。

    原田 大靖
    株式会社 原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
    東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科(知的財産戦略専攻)修了。(公財)日本国際フォーラムにて専任研究員として勤務。

  • 「音楽」が国境、宇宙を超える。~外交を司った音楽の歴史とこれから~
    「音楽」が国境、宇宙を超える。~外交を司った音楽の歴史とこれから~

    2021年11月7日に岸田総理大臣は、第2次岸田内閣の外務大臣に林芳正・元文部科学大臣を起用する意向を固めました。
    林氏は、東京大学法学部とハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)を卒業後、三井物産などでの会社員生活を経て、父、林義郎・元大蔵大臣の秘書官となり、
    1995年の参議院選挙で初当選、これまでに防衛大臣や農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任しています。先の選挙では、衆議院に鞍替えして立候補し、初当選しています。

    岸田総理大臣としては、みずからが率いる派閥の幹部を務めるなど信任の厚い林氏を外務大臣に起用することで、
    日米同盟の強化をはじめとする外交政策を着実に進めたいというねらいがあるものとみられています(
    参考)
    メディアでは親中派の林氏の外相起用により、我が国の外交路線も親中路線に転換するのでは、との憶測も飛び交っているが、
    私が林氏ときいて真っ先に想起したのが、今や群馬県知事となった山本一太氏(当時、参議院議員)と共に結成したという国会議員によるバンド「Gi!nz(ギインズ)」です。


    博多のクリスマス・マーケットで演奏するGi!nz
    出典:FUKUOKA CHRISTMAS MARKET

    音楽の素養をもつ外交関係者は意外と多いのをご存じでしたでしょうか。
    ジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏(現在は学界に戻り、スタンフォード大学教授)も、
    母親は音楽教師で、幼少期よりピアノを始め、デンバー大学では音楽学部ピアノ科に入学していたが、ジョセフ・コーベル大使(オルブライト元国務長官の父)のロシア政治に関する講義に感銘を受けて、
    専攻を国際政治学に変えたという。とはいえ、そのピアノの腕前はプロ級で、大統領補佐官時代にはヨーヨー・マとブラームスのソナタを共演し、
    ブッシュ政権末期には国務長官としての任期終了前、最後の挨拶としてバッキンガム宮殿でエリザベス女王の面前でも演奏を披露しています。

    政界入り後もピアノの腕前はプロ級であったライス元国務長官
    出典:(左)Wikipedia 、(右)NBC News

    我が国にもかつて、プロ級の音楽センスをもつ外交官がいました。
    というより、本来、作曲家であったが外交官になればドイツで音楽の勉強ができると思い、外務省に入ったという異色の経歴をもつ人物がいます。
    それが戸田邦雄氏(1915~2003)です。外務省に入ると、実際にヒトラー時代のドイツに赴任し、フルトヴェングラーやカラヤンの演奏に、
    その後、モスクワ大使館へ転任すると、ショスタコーヴィッチの演奏にそれぞれ接している。
    帰国と同時に、十二音技法という作曲技法を我が国にもたらしたとも言われています。(「悪魔の音列」とも称される十二音技法は、「調性がなく、ひたすら難解」な現代音楽の基底をなす作曲技法です)
    戦後は、音楽を超える広い視野から豊潤な知性に溢れた音楽論を発表し続けましたが、そうした教養というレヴェルを超えた圧倒的な知識と技術は外交の現場でも活かされていたことでしょう。

    外交の歴史上、音楽が全面に「使われる」ことも多々ありました。東西冷戦時代であっても、調べは国境を越えていました。
    1951年という冷戦初期には、米国の故アイザック・スターン氏が西側諸国のバイオリニストとして初の旧ソ連公演を行っています。
    また、去る2008年には、ロリン・マゼール氏が率いるニューヨーク・フィルが米朝関係の改善を目的に、平壌で初の北朝鮮公演を行いました(参考)

    ニューヨーク・フィルの北朝鮮公演
    出典:The New York Times

    だが、音楽をめぐる人類の歴史を辿れば、この「意外な親和性」はあるいは感得できるのかもしれません。
    古代ギリシャでは、プラトンがピュタゴラス派の4課目(算術、幾何学、天文学、音楽理論)を重視し、自身が設立した学園アカデメイアでも必修科目としています。
    とくに、音楽は、精神と肉体を調和(ハルモニア)させ、人間関係を調律して協和させる理論として必要だと説いています。
    自然の創造物を数によって解き明かすことができるこれら四科目(数学的な「四科」)は、やがて、アリストテレスが重視した文法、修辞学、弁証法という三科目(言語的な「三科」)とともに、
    「自由七科」としてリベラル・アーツに組み込まれていきました。

    その後、とくに音楽に関しては、6世紀の哲学者ボエティウスによって著された『音楽綱要』(De institutione musica)が中世まで読み継がれる音楽の教科書とされました。
    ボエティウスは音楽を「器楽演奏や声楽による音楽(ムジカ・インストゥルメンターナ)」、「人間の音楽(ムジカ・フマーナ)」、「宇宙の音楽(ムジカ・ムンダーナ)」の3種類に分けて論じています。

    このうち、とくに「人間の音楽」は、音楽をして精神と肉体の調和のための理論とした、プラトンの思想を踏まえています。
    前述の十二音技法を「不協和音」のように感じることもあれば、バッハの『平均律クラヴィーア曲集』が「良く調整された(well-tempered)」ように感じることもできるのは、
    ムジカ・フマーナの機能ゆえの感覚といえるでしょう。他方で、「宇宙の音楽」とは、四季の変化や天体などを司る「宇宙の秩序」を指しており、これら3種類の音楽の最上位に位置づけられています。

    普段、我々がイメージする音楽は、第一の「ムジカ・インストゥルメンターナ」ですが、
    後二者の音楽理論も改めて想起すると、あるいはそこに外交との親和性を見出すことができるのではないでしょうか。
    外交は国境を超えるが、音楽は、国境はおろか宇宙も司るわけです。
    昨今、人工知能(AI)の発展により言語の壁は無くなりつつあるが、音楽をつうじた国際関係の調和は、古来よりその役割を静かに果たしてきていたのかもしれません。

    原田 大靖
    株式会社 原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
    東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科(知的財産戦略専攻)修了。(公財)日本国際フォーラムにて専任研究員として勤務。(学法)川村学園川村中学校・高等学校にて教鞭もとる。2021年4月より現職。

  • 世界的環境NGOから痛烈批判を受ける日本。“ブルー“水素はどれだけグリーンなのか?
    世界的環境NGOから痛烈批判を受ける日本。“ブルー“水素はどれだけグリーンなのか?

    2021年11月3日、我が国では「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)内で日本が化石賞という不名誉な賞を授与された」というニュースが広く報道されました。
    しかし、これはミスリードな報道であり、実際はCANという環境NGOが自身のメディア・プラットフォームで「化石賞」と名付けた賞を様々な国の政策批判の場として発表しているにすぎません(
    参考)

    我が国は、ノルウェー勢とオーストラリア勢と並んで批判の的になりました。何が批判の的になったかと言えば、石炭火力発電の継続的な利用に取り組んでいるという点です。
    CANにより「岸田首相はアンモニアと水素が脱炭素化達成の燃料であるという夢を信じている」と痛烈批判を受けました。(参考)

    ではなぜ、ここまで国際社会から批判を受ける化石燃料の最たる資源である「石炭」の使用を日本政府は「ネット・ゼロ」の目標達成の文脈の中で挙げるのか。

    我が国は東日本大震災後、それまで描いてきたエネルギー政策をゼロベースからの見直しを迫られた結果、日本国内では化石燃料への依存度が85.5パーセントと高まり、特に天然ガスの輸入に大きく依存する結果となりました。
    しかし、液化天然ガス(LNG)の国際的な需要の高まりにより価格は年々高騰していきます。
    そういったエネルギー供給問題を解決しようと去る2010年代後半に我が国では石炭火力発電所の新設が相次ぎました。
    新設された石炭火力発電所は硫黄酸化物(Sox)や窒素酸化物(NOx)の排出量がきわめて少なく、米欧勢と比べてもクリーンなレベルを誇っているとされ、今後も新設の予定が多くありました。
    しかし、「脱石炭」の国際的な圧力は厳しく、我が国の石炭火力最大手Jパワーも去る2021年4月に山口県宇部市での新設計画を断念する結果となっています(参考)

    そこで、日本政府がよりクリーンなエネルギーへの経済にインパクトを与えずに移行していく戦略の一つがアンモニアの利用です。
    クリーン燃料アンモニア協会の岡島裕一郎氏によれば、今後2030年までの政策としては、
    ①燃料アンモニアの実現と②液化天然ガス(LNG)との混焼の実現を目指していくということです。
    アンモニアを単体の燃料として現在は実現しておらず、IHIなどが石炭との混焼実験を行っており(参考)、現在はアンモニアが2割、石炭が8割の割合で二酸化炭素が2割減少させられたことから、
    アンモニアの割合を次第に上げていく段階です(参考)
    この混焼実験は、JERAとJパワーも開始しており、今後世界に向けて研究結果を発表していく予定です(参考)
    ②のLNGとの混焼実証実験はIHI(参考)の他にも東北電力が来たる2024年度に開始することを発表しています(参考)
    今後も、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が重点的にアンモニア混焼火力発電技術の先導研究をしていくものと見られ研究発表への注視が必要です。

    しかし、この試みはあくまで「ブルー・アンモニア」の燃料利用として区分けされます。この色分けの区別は新しく、また非常に危うい標識です。
    この色分けに関しては、誰がいつどこで定義し広まったか定かではないが、英国勢の王立学会で細やかな定義がされたものが去る2020年2月に政策提言として発表されており(参考)、それに追従するように言葉が使われ始めています。

    (図表:グレイ、ブルー、グリーンの区分け)

    (出典:経済産業省)

    去る2021年11月17日から11月19日にかけて東京国際展示場にて開催されたINCHEM TOKYO 2021でも、講演会では「石炭が悪者にされていることは明白で、次はLNGだ。いつブルーエネルギーと現在規定されているものがグレイ認定されるかわからない」という危機感を持っていることが何人もの登壇者の話から伺えました(参考)

    日本の水素エネルギー産業では、そういった指標は欧州勢によりコントロールされており、彼らのビジネス展開が優位に進められるように規定されると認識されています。実際に、去る2021年8月頃からは、“ブルー”水素の批判の喧伝が始まり(参考)、日本勢がアンモニアの輸入を依存するオーストラリア勢はブルー水素を得る過程で排出する二酸化炭素(CO2)を「二酸化炭素回収・貯留」技術(CCS)で解決している点についてCOP26で批判される展開となっています。

    (図表:我が国―豪州勢間のクリーン燃料アンモニア・サプライチェーン概念図)

    (出典:JOGEMC)

    しかし、“グリーン”水素を先進している大陸欧州勢においても、彼らが掲げている“グリーン“水素への置換え目標を達成するのはほぼ不可能であるという見通しが持たれています。
    水素エネルギーの開発競争でイニシアティヴを取るためにはもっと大量の資金投入が行われなければ、太陽光発電の競争のように中国勢に競争で負けてしまうと危機感を募らせています。
    スペイン勢に本拠地を置く多国籍電力公益企業イベルドローラ社の新CEOは、コロナ復興支援金を“グリーン“水素に投入すべきだと主張しています(参考)

    2021年11月10日にオーストラリア国立大学より発表された論文によると、“グリーン”水素の方がコスト面でも“ブルー“水素より優れている中で、“ブルー”水素に関しては現在の「二酸化炭素回収・貯留」技術(CCS)で排出が抑制できるとされているメタンなどの漏えい排出物に問題があり、天然ガスからの水素製造は効率的ではないと断じています(参考)
    我が国の水素製造産業界が問題視している、「“ブルー”水素が“グレイ”水素の烙印を押される」日は予想よりも早く現実のものになるのではないでしょうか。

  • 「ロシア・ゲート(ロシア疑惑)」はすべて作られた物語だったのか。背後にある米リベラル系シンクタンクの存在とは。
    「ロシア・ゲート(ロシア疑惑)」はすべて作られた物語だったのか。背後にある米リベラル系シンクタンクの存在とは。

    「6次の隔たり」をご存じでしょうか。全ての人や物事は6ステップ以内で繋がっていて、友達の友達、またその友達と介していけば世界中の誰とでもつながることができる、という仮説です。
    米国勢のあるサイトは、この仮説をとおして、米リベラル系シンクタンクであるブルッキングス研究所は「ロシア・ゲート(ロシア疑惑)」に関連するアカウントに頻繁に登場することを指摘しています(
    参考)。「ロシア・ゲート(ロシア疑惑)」とは、去る2016年の米大統領選挙にロシア勢が干渉したとされる疑惑をめぐり、トランプ陣営の関与、「共謀」があったのか、トランプ前大統領による「司法妨害」はあったのか、などが問題とされています(参考)

    (図表:6次の隔たり)

    そうした中、同サイトによると、ブルッキングスは、様々な専門家を雇い、メディアで本疑惑を“喧伝”することで、「ロシア・ゲート」という「物語」を推し進める上で大きな役割を果たしたというのです。本疑惑を捜査するジョン・ダーラム特別検察官が、参照する資料では6次ならず2次以内にブルッキングス関連の資料にいきつくというのです。

    確かに、中道・リベラル系のシンクタンクとして長い伝統と実績をもつブルッキングスの名が、トランプ政権を糾弾する本疑惑の関連で多く出てくることは何ら不思議ではなく、この事実のみをもって、ブルッキングスが「ロシア・ゲート」という「物語(narrative)」をつくったとする主張はあまりに飛躍していえるでしょう。
    ですがブルッキングスに限らず、米国勢のシンクタンクの役割として政策立案や人材供給の他に、世論の形成あるいは非公然活動(covert action)に関与しているということは、「公然の秘密」ともいえるでしょう。

    (図表:2018年ヘルシンキでの米露首脳会談に臨む米露両首脳)

    (出典:The New York Times)

    去る(2021年)7月6日(ベルリン時間)には、「クラウス・L」なる人物がドイツ連邦検察庁によりスパイ容疑で拘束・起訴されたと発表されましたが、
    彼はミュンヘンのシンクタンク「ハンス・ザイデル財団(Hanns Seidel Foundation)」の代表で、政府高官らと面識があり、そこから得た情報を10年間にわたり中国勢の情報機関に提供していたといいます(参考)
    とくに米国勢ではシンクタンクは、政策形成の中で「第四の権力」とまで呼ばれるように、大きな役割を果たしていますが、その米国勢のシンクタンクの多様性、政治的立場などを探ってみると、おおよそ次のとおりではないでしょうか(参考)

    ブルッキングス研究所(参考):1916年、実業家のロバート・S・ブルッキングスによって設立された(少なくともワシントンD.C.においては)最初の民間・非営利・独立のシンクタンクである。
    経済・外交・統治機構の3つを研究対象としており、リベラルの色彩が強く、特に民主党政権には政策的な影響を及ぼすと共に、多くの人材を輩出してきました。
    オバマ民主党政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命されたスーザン・ライスや、ジャネット・イエレン財務長官も籍を置いていました。ニクソン政権によって作成された「政敵マスター・リスト」にもリストインされていたのです。
    ヘリテージ財団(参考):「小さな政府」による自由主義経済の樹脂、伝統的な米国勢の価値観、国防の強化などを掲げて1973年に設立された、保守系、共和党的色彩の強いシンクタンクです。
    1980年代のいわゆる「新冷戦」期における米国勢の外交政策(レーガン・ドクトリン)の策定において主導権を握りました。また、無名で若手の研究員を選考し、保守主義的な政策論争を広く展開したり、学究性(アカデミズム)をセールスに結び付け、世論の形成(アドボカシー)を重視したりしたという点で、新しいタイプのシンクタンクとも言われた。
    戦略国際問題研究所(CSIS)(参考):1962年にジョージタウン大学が設立。超党派を標榜し、民主党、共和党を含む幅広い人材、例えば、キッシンジャー、アーミテージ、ブレジンスキー、スコウクロフト、オルブライトら米外交の中枢を担う人物が関与している。「ジャンパン・ハンドラー」の典型でもあるマイケル・グリーン氏はここの副理事長である。我が国の政官財との関係も深い。

    (図表:マイケル・グリーン氏(左)同席の下、CSISで講演する菅前首相(右))

    (出典:CSIS)

    外交問題評議会(CFR)(参考):1921年に設立され、米国勢の対外政策決定に対して著しい影響力を持つといわれています。外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の刊行でも知られ、米国務省の政策企画本部長ジョージ・ケナンが匿名で執筆した「X論文」は、対ソ封じ込め政策の理論的根拠となりました。第一次世界大戦後のパリ講和会議中に、米英勢がアングロ・サクソンによる戦後秩序の構築を画策する中で、英国勢ではオックスフォード大学の研究者を中心として王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)が、米国勢では実業家や弁護士を中心としてCFRがそれぞれ設立されたという背景がある。それゆえ、米国勢の主要なシンクタンクがその本部をワシントンD.C.においている中、CFRはニューヨークにその拠点を置いています。
    これらの他にも、フーヴァー研究所、ランド研究所、カーネギー国際平和財団など多種多様なシンクタンクが存在し、政治的スタンス、財源、研究分野、人材の獲得・供給面などで競合する部分がないわけではないが、うまい具合に「棲み分け」を実現し、あるいは共存共栄しているともいえるのではないでしょうか。
    とくに人材面では、「リボルビング・ドア(回転ドア)」とよばれるスキームの下、政権に入っていないときはシンクタンクで待機する、という流れが定着しています。

    このように「公然」と人材が政官財の間で行き来している中で、当然、インテリジェンス機関との「知」の交流があることも想定されるわけですが、
    そうした中で、ジョージ・ケナンの「X論文」や、「クラウス・L」事件はまさにそうした“僭象”が“現象”としてあらわれたものといえます。
    多種多様で共存共栄する米国勢のシンクタンクから、次はいかなる「物語(narrative)」が展開されるのか、その設立の経緯や、人材面にも目を向けることであるいは先読みできるのではないでしょうか。

    IISIA グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
    原田 大靖 記す


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