2021年05月13日

アメリカの中国に対する「5つの圧力」の意味することは。

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4月21日、米上院外交委員会から「2021年の戦略的競争法」(“Strategic Competition Act of 2021″)が提出されました(参考)
あらゆる側面から中国に圧力をかけることを目的とした大規模な法案となっています(参考)

上院外交委員会のロバート・メネンデス(Robert Menendez)委員長は発表に際し、「米国の戦略的、経済的、外交的手段を総動員してインド太平洋戦略に取り組むという前例のない超党派の取り組み」であり、「統一された戦略」を目指したものであると述べました(参考)

 


米上院 (出典:Wikipedia)

全体的な構成として、

「競争力のある未来」への投資
「同盟およびパートナーシップ」への投資
「米国の価値観」への投資
「経済政策」への投資
「戦略的安全保障」の確保
の5つの領域において「中国に対抗する能力」を米国がつけるための投資戦略を提案しています。

「競争力のある未来」への投資では、「科学技術」、「グローバルなインフラ整備」、「デジタル・コネクティビティおよびサイバーセキュリティ」の3つへの投資により米国の競争力を強化します。たとえば、「科学技術」においては、中国市場からの撤退や中国国外での生産または調達のための代替市場の特定などを目的とした国務省および商務省主導の支援プログラムに、2022~2027年度毎に1500万ドルを充当することが許可されます。

「デジタル・テクノロジーとコネクティビティ(接続性)」における競争力については、新興市場における安全なインターネット・アクセスとデジタル・インフラを拡大・増加したり、中国からの輸入品への依存度を下げるためにICT商品やサプライチェーン・サービスの多様化を促進したりするプログラムに2022~2026年度毎に1億ドルを充当するとしています。また「中国共産党の影響力に対抗する」ための基金として、2022~2026年度毎に3億ドルを充当することを認めています。

2つ目の「同盟およびパートナーシップへの投資」は「戦略および外交」、「国際安全保障」、そして「中国に対抗するための地域戦略」の3つの領域で構成されています。米国の外交戦略を強化し、インド太平洋地域への安全保障支援を優先することにより、同盟国とパートナーに対する米国のコミットメントを更新することを求めており、その範囲は「西半球」から「大西洋同盟」、「南アジアと中央アジア」、「アフリカ」、「中東・北アフリカ」、「北極圏」、「オセアニア」をカバーし、世界各地で展開する中国に対抗することを提案しています。

たとえば、2022~2026年度にインド太平洋地域への対外軍事融資として総額6億5500万ドル、インド太平洋の海上保安に関するプログラムなどに総額4億5000万ドルの拠出を求めています(参考)

そして、「米国の価値観」への投資として、香港の民主化支援、新疆ウイグル自治区での強制労働、強制不妊手術、その他の虐待に対する制裁措置など、人権および市民社会に関する広範な措置を認めます。

米国の「経済政策」への投資では、知的財産権侵害者の追跡、中国政府の補助金、中国が米国の輸出規制を回避するために香港を利用することへの監視、米国の資本市場における中国企業の存在の追跡などの措置も含む。また、外国の腐敗行為への対策に取り組んでいる国への技術支援や、COVID-19パンデミックのために延期を要請した最貧国への債務救済を行うよう米国政府に指示しています。

「戦略的安全保障」の確保においては、軍備管理に関する同盟国との調整と協力を強化することを求め、中国の弾道ミサイル、極超音速滑空ミサイル、巡航ミサイル、通常兵器、核、宇宙、サイバー空間、その他の戦略領域に関する報告を求める内容となっています。


米国務省 (出典:Wikipedia)

同法案が立法化されるためには、これから「上院(Senate)」、「下院(House)」、「大統領」を経る必要があるものの、外交、軍事、テクノロジー、サイバー、安全保障と、包括的に、かつ世界の全地域も網羅した対中政策となっています。

それでも、米国がその通りに動くのかどうかについては今後も注視すべきではないかと考えます。矛盾が窺えるからです。

たとえば、3月に行われた米中アラスカ会談では「米中で激しい応酬が繰り広げられた」とされている一方で、メディアが退室した直後に緊張が和らぎ、「ブリンケン米長官が場を和ませる発言をした」ことが米ニューヨークタイムズ紙によって明らかにされている。「米中双方が国内向けに強いメッセージを出す必要があった」からだと言います。本気の非難ではなく、実際にはカート・キャンベル・インド太平洋調整官が描いた「シナリオ通り」であったとも言われています。(参考)

さらに、米国務省内でもバイデン政権の中国政策に関して混乱が生じている(参考)。2022年に開催される北京オリンピックをボイコットするかどうかについて、数時間のうちに同政権はその可能性について矛盾した声明を発表したり(参考)、トランプ前米政権が新疆でのジェノサイドを宣言し、ブリンケン米国務長官を始めとするバイデン政権もこれを支持したにもかかわらず、国務省の法律顧問は、中国におけるジェノサイドを証明するには証拠が不十分であると結論づけました(参考)

5月3日、ブリンケン米国務長官は中国が「世界の支配国家」となることを目指していると強い警戒感を示しました(参考)。ところが、同日に中国と米国が近々、互いの国に新しい特使を派遣することも明らかになりました。経験豊富で評価の高い2人のキャリア外交官が新たに加わることになっています(参考)

時系列で見てみると同じタイミングで真逆の動きをしている米国。歴史的にも中国と手を組んでいたことがあった背景からも、日本としては引き続き注視しておくべきかもしれない。






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