2021年03月28日

「イスラム圏」マーケットを目指して『ハラル』認定を進める日本の課題

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日本でインバウンドが叫ばれてからかなりの月日がたちます。
2015年2月の春節に多数到来した中国人が大量の買い物をすることから「爆買い」が日本の小売マーケットを活性化するとして期待を集め、2011年以来、来日外国人数は右肩上がりです(※1)
訪日外国人旅行者の内訳をより詳しく見ると、地理的に近い韓国人、中国人、そして台湾人がやはり圧倒的に多いようです。
近いからこそ気軽に来ることができるという訳です。
しかし、近いからこそ問題が生じればこうした訪日客はあっさりと来なくなってしまいます。

たとえば韓国では、韓国人の元徴用工や元朝鮮女子勤労挺身隊員が三菱重工業(証券番号:7011)に損害賠償を求めた上告審で、韓国大法院(最高裁判所に相当)は同社の上告を退ける判決を言い渡しました(※2)。日本での韓国ブームは2000年代前半に始まり、たとえば東京・新宿の隣にある新大久保は「韓流ブーム」のメッカでしたが、それが日韓関係の悪化を受けて2012年から2017年までで韓国系店舗が38.8パーセントも減少し、同地ではミャンマー人など別のアジア人が多くなり、韓国人が消えたと言われていた時もありました。
しかし、実は新たな「韓流アイドル」ブームで再び新大久保に韓国人が戻りつつあります。
そうした中での今回の判決は、訪日韓国人数へも少なくない影響を与えることは明らかでしょう。
中国人も日中関係が今は融和ムードを演出しているものの、2010年に尖閣諸島問題を巡り日中関係が一気に冷却化しています。
台湾についても、3.11以来、日本からの食料品輸入をストップし続けるといった姿勢を堅持しており、従来の良好な日台関係に胡坐をかいていて良いわけではない状況なのです。

このような東アジアへの偏重に対し、日本はASEAN諸国を新たなパートナーとして迎えるべく進んでいます。
その中でも世界有数の人口を有するインドネシアを筆頭とした「イスラム圏」への門戸をさらに押し広げようとしています。

イスラム教はその経典である「コーラン(クルアーン)」や、ムハンマドの言行録であり日々の生活ルールを定めている「ハディース」などに依拠する独自のルールに則り、日々の立振る舞いを厳格に定めています。
たとえばイスラム教徒が豚肉を食べず酒を飲まないことは良く知られています。他方で酒、つまりアルコールを飲まないとして、では手を拭くウェットタオルが含有するアルコールを手の皮膚から吸収することは許容されるのかといった応用的な課題があり、また生産設備といった商品そのものとは離れた部分にも気を払わなければならなりません。

こうしたルールに則った「許されたもの」を「ハラ(ー)ル」といいます。日本でもこうしたイスラム圏をマーケットとして取得すべく様々な取組みを進めています。その典型が、非イスラム圏の国・企業がイスラム圏へ「ハラール」に則った製品を販売していることを証明すべくイスラム諸国などが組織しているハラール認証機関から“認証”、すなわち「お墨付き」を得ることです。
東京にある観光地を見渡すと、ハラール認定を受けたというステッカーを貼った飲食店が増えています。しかし、ここで問題が1つ。京都大学が主催したハラールに関するセミナーでハラール認定機関の統合・設立、そしてその研究を行うマレーシア人教授から日本の状況についてご教示を賜ったことがあります。
同教授曰く、日本では民間組織が独自のルールに則り設立したハラール団体が乱立しており、イスラム圏の人々から見れば“異常”と言わざるを得ない「ザル」なルールを定めた粗悪な団体もあるのだといいます。そもそもイスラム教は世界中に拡散しているため、実に多様な宗派があり、その宗派や地域に応じてハラールの解釈も異なるのです。またハラールに関する基準を国家レベルで統一して定める国もあれば、そうではない国もある。したがってインドネシア人をターゲットにハラール認定を受けた所で、サウジアラビア人がそれを受け入れるとは限らないのです。ひとえにイスラム教徒のインバウンドを迎えると言っても、そのハラール認定には、たとえばどこの国のどこの認定機関から認定を受けるかといった複雑な問題があります。

とはいえども、日本はイスラム圏からの訪問客を受け入れるための環境整備を着実に推進しつつあります。たとえば日本政府はマレーシア政府と「ハラール」協力に関する覚書(Memorandum of Cooperation)を結んでいます(※3)
またこうした“ハラール認証ブーム”が到来する以前からイスラム圏に進出してきた企業も存在しています。たとえばヤクルト本社(証券番号:2267)は古くからイスラム圏に進出しており、2013年にはその子会社が製造した糖に対するハラール認定を受けています(※4)。またマルハニチロ(証券番号:1333)はインバウンド客に日本の魚食を推進すべくハラール認定を進めてきた経緯があります(※5)

日本でのイスラム圏の取込は未だ始まったばかりです。こうした企業の取込に対し、よりマクロに見たエコシステムの観点から言えば、公共交通機関や空港における礼拝堂の整備など、まだまだ課題は山積みです。しかし、課題が多いからこそ、成長を見込めるということでもあるのではないでしょうか。そしてその先に広がる新たなマーケットは日本の成長にそう関わってくるのか見守りたいと思います。






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