2021年03月14日

コロナ特需による「栄養学」発展の裏にあるアメリカとイギリスの戦い。

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来る2023年に「栄養学」の転機となるかもしれない大規模研究が開始されるのだという。

米国立衛生研究所(NIH)が1億5,600万ドルを費やし5年間で1万人の米国人を対象に
食べ物がどのように消化されているのかを調査するというのです。

これまで「曖昧(fuzzy)」だと言われてきた「栄養学」をより精度の高い
「精密栄養学」(Precision Nutrition)へと押し上げることが狙いとなります(参考)

ご存じかもしれませんが、「万人に良い」という食べ物も食べ方も実は存在しないのです。
お菓子よりもバナナで血糖値が急激に上がってしまう人もいるのです。
「精密栄養学」は「いつ」「何を」「何のために」「どのように」食べれば
「健康」と「生活の質」を最高の状態にできるのか個別対応の食の処方箋を目指しているのです。

栄養学の基本は19世紀後半のドイツにおける工場労働者の状況が発端です。
栄養学の祖とされるドイツ勢の生理学者カール・フォン・フォイト(Carl von Voit)によって
高たんぱくを中心としたカロリーベースの考え方が重視されるようになりました。
そしてフォイトの下で学んだ米国勢のウィルバー・オリン・アトウォーター(Wilbur Olin Atwater)が
それを母国に持ち帰り「カロリー」を基礎とする栄養学が世界中に広まったのです。

(図表:カール・フォン・フォイト)

(出典:Wikipedia)

他方で肉の「食べ過ぎ」に警鐘を鳴らし、
多剤併用(Polypharmacy)よりも「生活習慣(life style)」を強調したのが
デンマーク勢の栄養学者でデンマーク国立栄養研究所の所長だったミケル・ヒンドヘーデ(Mikkel Hindhede)です。
しかし、すでに「カロリー信仰」が浸透していた欧州勢において当時のヒンドヘーデの意見は先駆的過ぎました(参考)

そんな中で第一次世界大戦が勃発します。
英海軍が北海を封鎖し欧州勢は食糧危機に直面することに。
中立を保っていたデンマーク勢も封鎖の影響を大きく受けることになりました。
デンマーク勢はヒンドヘーデを食糧顧問に任命しました。
彼の提案に基づいて肉中心の食事から当時は家畜の餌とされていた野菜と穀物を中心とした食事に切り替えたのです。

結果はどうだったのでしょうか?

肉を豊富に食べることの重要性を信じ続けていたドイツ勢は
1914年から1918年にかけて40万人以上が栄養失調で死亡する結果となりました。
対するデンマーク勢では1917年から1918年の間に死亡率は34パーセント低下し、
6,300名の命が救われたのです。これはデンマーク勢の死亡率としては戦争前を含めても最低の死亡率になりました(参考)

 

(図表: ミケル・ヒンドヘーデ)

(出典:Wikipedia)

実は「栄養学」にはまだまだ解明されていないことが多くあります。
その理由の1つが従前の栄養学研究の多くが小規模にとどまっていたことにあります。

今回の米国立衛生研究所(NIH)による大規模研究は
参加者のDNA構造から郵便番号まで広範囲に渡る個人データを収集します。
将来的には個々人にとっての最良の食事療法を予測するモデルを作成することを目指しているというのです。

しかし、結局のところ米国勢は何を売ろうとしているのでしょうか?

米国立衛生研究所(NIH)が現在進めているのは、
史上最も多様性に富んだバッググラウンドを持つ人々の健康データベース『All of Us』の構築なのです。
全米から100万人を募っているがこれまでに366,000名以上が登録していいます。
集められたデータにはゲノム配列決定のため279,000人以上の生体サンプル(bio-samples)、
233,000件以上の電子カルテ(EHR)と134万件以上のアンケート回答などが集められています(参考)

研究者たちはこれらのデータを使って生物学、
ライフスタイル、環境が健康にどのような影響を与えているかを調べてゆくことになります(参考)

人類の寿命が延び、長期的で複雑な疾患の蔓延が進むことになると、医療費といった社会的コストは上昇します。
すると、病気の予防と早期診断を向上させるためにゲノミクスの発展を活用せざるをえない状況になるのです。
結局のところ、個人の身体と人生全体がわかる情報のプラットフォームは新たな仕組みビジネスとなるのです。

他方で遺伝学とゲノミクスにおいては英国勢が世界的リーダーです。
去る2012年から10万人のゲノムを解析するプロジェクトを立ち上げ
ゲノム研究は英国勢における科学の大きな柱になっています(参考)
コロナによる今次パンデミックによって(遺伝子情報の)登録者数も増え続けている状況下で、
今後益々その地位を維持する戦略を取っていくことでしょう。

米国勢と英国勢でどのような競争を見せていくのでしょうか。
それとも第3の勢力が出てくるのでしょうか。







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