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マーケットで勝つ!ための先行指標のつかみ方
   
  • 「世界で最も住みやす都市」に選ばれ続ける日本
    「世界で最も住みやす都市」に選ばれ続ける日本

    世界で「最も住みやすい」都市として、オセアニアと日本がトップに上がりました(参考)
    新型コロナ・パンデミックの影響でこれまでの欧州勢優位であったトレンド(順位)がひっくり返った形となったと言えるでしょう(参考)
    英エコノミスト誌が毎年発表している「The Global Liveability Index 2021」(「住みやすさ」のグローバル・インデックス)によると、12位に転落したウィーン(オーストリア)に代わり、オークランド(ニュージーランド)が1位となり、次いで、大阪(日本)、アデレード(オーストラリア)、東京(日本)、ウェリントン(ニュージーランド)とアジア太平洋地域の街が並びました。

    1位 オークランド (ニュージーランド)  96.0

    2位 大阪 (日本) 94.2

    3位 アデレード (オーストラリア) 94.0

    4位 ウェリントン (ニュージーランド) 93.7

    4位 東京 (日本) 93.7

    (図表:ニュージーランド・オークランド市)

    (出典:Wikipedia)

    今回の世界の中における「住みやすさ」の平均スコアは、パンデミック前の平均スコアと比較して7ポイント低下。国境の閉鎖によって守られた都市、健康危機への対処能力、ワクチン接種キャンペーンの展開速度などが、ランキングに大きな変化をもたらしました。欧州やカナダの多くの都市が、文化やスポーツのイベントを制限したり、学校やレストランを閉鎖したりして、ランキングを下げました。

    東京、大阪といったすでにネームバリューがあり、自動的に人が集まるような大都市とは違い、人口減少という問題に直面している街は多く、
    「人口増加」には「規模(size)」と「密度(density)」という2つの基本的な要因があるといいます。

    カンザスシティ連邦準備銀行のエコノミスト、ジョーダン・ラパポート(Jordan Rappaport)博士らが発見したところによれば、「人口増加は、人口50万人程度までは(都市の)規模と正の相関があり、50万人から300万人までは規模の増加とは無相関となり、300万人以上になると規模の増加と負の相関関係」というパターンがあります(参考)
    他方で、人口急増に伴う「混雑(congestion)」という問題もあります。
    たとえば、都心への利便性が良く、タワーマンションが10棟以上立ち、商業施設も増加したことで、「住みたい街」として人気が高まり、上位の常連であった武蔵小杉では、駅の改札に入るために住民は毎朝行列に並ばなければならないという事態まで生じました(参考)。2021年「住みたい街」のランキングでは14位と大幅に順位を下げています(参考)

    「美のプレミア(割増金)」(beauty premium)と経済学者らが呼ぶ有名な現象があります(参考)
    「容姿端麗な人ほど収入が高く、キャリアで成功する傾向がある」というものだが、「街づくり」にもそれが当てはまるという研究結果が出されました(参考)

    (図表:カナダ・ケベック市)

    (出典:Wikipedia)

    フィラデルフィア連邦準備銀行のジェラルド・A・カルリーノ(Gerald A. Carlino)博士とマサチューセッツ工科大学(MIT)のアルバート・サイス(Albert Saiz)博士が2019年に発表したもので、都市(cities)や街区/区域(neighborhoods)に大きな「美のプレミア」が存在していたというものです(参考)
    「都市の美しさ」は、「税金の低さ」と並んで、都市全体の人口増加の最も重要な予測因子となっていました。
    「絵のように美しい(picturesque)」場所が他の都市の2倍ある都市では、1990年から2010年にかけて、人口と仕事の増加率が10%以上となりました。
    「絵のような美しさ(picturesqueness)」において上位25%の都市は、下位25%の都市に比べて、大卒者数の増加率が3%近く高くなりました。
    そして、「絵のように美しい」都市の上位4分の1では、下位4分の1よりも住宅価格が16%高くなっていた。

    (図表:神戸)

    (出典:Wikipedia)

    さらに「街の美しさ(city beauty)」は「大きさ(size)」の影響は受けないこともこの研究で明らかになりました。小さい規模でも、中程度の規模でも、公園や歴史的建造物がより多く、水辺や山が近くにあり、空が澄んでいて雨が少ない場所を人は同等に「美しい」と感じる傾向がありました。
    街の「構造」は「イノベーション」にも関係があります。
    20世紀初頭のアメリカで「都市計画(urban planning)」の分野に変革をもたらしたジェーン・ジェイコブス(Jane Jacobs)は、都市の密集した地域に住むことが、ダイナミックなイノベーションを掻き立てると主張しました。
    昨年(2020年)末に彼女の言葉が正しかったことを示唆する研究結果が発表されました(参考)
    この研究によれば、道路の密度や接続性(connectivity)が10%向上すると、イノベーションが0.05〜1%増加していました。
    これは、雇用密度が10%増加すると、一人当たりの特許件数が10年間で2%増加し、高速道路の接続性が10%増加すると、都市圏全体の特許件数が5年間で約2%増加するという先行研究とも一致するといいます。
    世界各国における経済が回復していく中で、これから我が国への海外渡航者の増加に拍車がかかります。そのとき、東京と大阪以外の日本の美しさも目にして欲しいと願います。

  • ウズベキスタンは「買い」か?中央アジアで注目を集めるウズベキスタンの魅力に迫る。
    ウズベキスタンは「買い」か?中央アジアで注目を集めるウズベキスタンの魅力に迫る。

    中央アジア、とりわけウズベキスタンが現在活況を呈しています。あの内陸の地域がなぜ!?と疑問に思われるかもしれませんが、歴史の紐を解くと何ら不思議なことではなさそうです。
    中央アジア5か国(カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス)はユーラシア大陸の中央部に位置し、古来よりシルクロードを通じて栄えてきました。地政学の租マッキンダーが「ユーラシアの心臓部(ハートランド)を制するものは世界を制する」と言ったように、中央アジアをめぐっては絶えず各国の思惑が錯綜してきました。
    19世紀から20世紀にかけては、大英帝国とロシア帝国の間で中央アジアの覇権をめぐる抗争「グレート・ゲーム」が展開されました。一進一退の経緯をたどった抗争であったことから、チェスになぞらえてつけられた言葉です。
    この抗争は1907年の英露協商の成立をもって終結したとされていますが、その後も中央アジアをめぐっては、エネルギー資源獲得を目論んだ米国、中国、日本などが新たなプレーヤーとして参戦し、「新グレート・ゲーム」として現代まで継承されてきたのです。

    そして近年では中国が「一帯一路」政策の下、シルクロード基金(400億ドル)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)をつうじて経済的な取り込みを図っています。もちろん欧米諸国の進出も盛んです。米ハイアット・ホテルズ・コーポレーションは、中央アジアへの進出を強化しており、2022年にはブハラにハイアット・リージェンシー開業を予定しています(参考)。他に、リッツカールトンやヒルトン、ラディソンなどの外資系ホテルチェーンも中央アジアへ進出しており、これはすべからく西側インテリジェンスの拠点化への布石ともとれます。

    (図表:1848年頃の中央アジア)

    (出典:Wikipedia)
    中央アジアの中でも国土・経済規模ともにトップクラスであるカザフスタンはかねてより注目されていましたが、近年はこれに加えウズベキスタンも活況を呈しています。ウズベキスタンでは2016年9月にソ連時代末期から約27年間にわたって君臨し続けたカリモフ大統領が死去し、ミルジヨエフ首相が大統領に選出されて以来、急進的に改革(「ウズベク風ペレストロイカ」)が推進されています。ソ連崩壊後、国家による厳格な管理下にあったウズベキスタン経済だが、今では外貨規制の緩和を軸とするビジネス環境の整備が進められています(参考)。具体的には、通貨「スム」への交換性付与、不正搾取の温床になっている機関の権限の制限などで自由を取り戻しつつあります(参考)

    また国家歳入の4分の1を占める綿花の栽培をめぐっては、長らく強制労働・児童労働問題が指摘されていましたが、2019年には米国、国際労働機関(ILO)などから改革姿勢が評価されたという経緯もあります。特に綿花生産高第2位の中国において、新疆ウイグル自治区での強制労働問題がフラクタルな形でハイライトされている現在、ウズベキスタンの綿花生産に対するマーケットの視線は無視できません(参考)

    (図表:ウズベキスタンの綿集積センター)

    (出典:Wikipedia)

    ビジネス環境の整備、人権問題の是正、さらには3,000万人以上の人口規模による人口ボーナス期にあることに鑑みても、ビジネスチャンスが拡大しつつあるウズベキスタンに対しては、もちろん日本企業も資源開発の分野で進出をすすめています。日本との直行便がある中央アジアの都市が、カザフスタンの首都ヌルスルタン(旧称アスタナ)とウズベキスタンの首都タシュケントの2都市のみという点からもそれは明らかです。

    日本とウズベキスタンとの関係は、近年では日本の外務省が2004年以来進めている「中央アジア+日本」対話による枠組みでの協力がハイライトされていますが、実はそれ以前より両国は深く関係しています。第二次世界大戦後のシベリア抑留によって多くの日本人がウズベキスタンへ連行され、オペラハウス「ナヴォイ劇場」やファルハドダムなどの建設に従事させられていたのです。しかし、この時の日本人の勤勉な働きぶりや地元住民との交流の様子は今日まで伝えられており(参考)、1966年のタシュケント大地震でもこの「ナヴォイ劇場」は倒壊を免れたことから、国内では日本製品への信頼が非常に高いといいます(参考)。また、現在のウズベキスタン副首相(投資・対外経済関係担当)であるアブドゥハキモフ氏は一橋大学に2年間留学した経験もある親日家である点も見逃せません(参考)


    では最後に、ウズベキスタンでの資源開発をめぐるグレート・ゲームの現状と課題はどうなっているのでしょうか。ウズベキスタン大統領府によると、2019年時点でウズベキスタン国内には73種類の鉱物資源と約2,000の埋蔵地域があり、このうち111の埋蔵地域で14の採掘事業が実施されており、うち6つで外国資本を含む事業が展開されています(参考)

    外国資本では、ソ連時代から関係が深いロシア企業や中国企業の存在感が高い中で、日本企業の進出については、サマルカンドでのいすゞ自動車株式会社による中型バス・トラック組立事業といった投資成功事例は存在するものの、大部分はODA関連による経済協力にとどまっています(参考)。インフラ整備や資源開発というウズベキスタン経済の「コア」の部分への進出も「政治レヴェル」では合意されているものの、ビジネス・レヴェルでこれがいかに展開していくか、引き続き注視していきたいと思います。

  • 銅価格高騰の行方 ~パンデミックと「脱炭素化」が与えるインパクト~
    銅価格高騰の行方 ~パンデミックと「脱炭素化」が与えるインパクト~

    銅価格が高騰を続けている。
    今年(2021年)5月、銅の国際価格は過去最高値を更新しました。去る2011年以来、10年ぶりの高値です。新型コロナウイルスが世界的に感染拡大した昨年(2020年)3月の安値からは2倍以上となっています。

    (図表:銅先物)


    (出典:
    Investing.com)
    銅は導電性の高さから、車や電化製品、半導体など様々な製品に利用される典型的な産業用金属で、「ドクター・コッパ―」と呼ばれその価格動向が世界の景気動向を診断します。
    近年の銅価格の上昇期としてはまず去る2011年、リーマンショック後の世界的な金融緩和による需要回復を受けておよそ9000米ドル/トンを超えました。銅鉱山の新規開発や米国の金融緩和終了、また2014年後半からの原油価格の急落・低迷などを受け価格は下落基調となりました。

    2016年以降になると、中国によるインフラ投資拡大などの影響により価格は再び上昇傾向となりました。中国の銅消費量は世界の半分近くを占め、中国生産者物価指数と銅価格の変動はほぼ同一の動きを示しています(参考)。今年(2021年)3月以降、中国の生産者物価指数は大幅に上昇しており、4月は去る2017年10月以来の伸びとなりました(参考)

    今次銅価格の高騰の要因のひとつは昨年来の新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で銅鉱山が閉鎖されたことなどによる供給源です。
    しかしもうひとつ大きな要因がとされているのが、世界的な「脱炭素化」への動きです。
    化石燃料に依存しないエネルギーへの転換にはスマートグリッド(次世代送電網)や風力タービンなどの環境インフラが不可欠です。同は導電性が高く発電設備に必要なエネルギー消費量も低減できることから、地価の送電線の材料に多く用いられます(参考)

    需要の増加とともに気になるのが供給量です。
    国際銅研究会(ICSG)がまとめた今年(2021年)1月~10月の世界銅地金需給バランスは48万2000トンの供給不足となっています(参考)。可採埋蔵量は年々増加している一方で推定可採年数は2011年の43年から減少傾向にあることも懸念材料です(参考)
    商品会社トラフィグラ・グループは脱炭素化により銅価格は今後10年以内に1万5000米ドルに達するとの予想を発表しています(参考)

    高騰する銅の代替品はあるのでしょうか。
    「脱炭素化」で需要が急増している送電線としての利用に関しては、銅の代わりにこれまですでにアルミが用いられてきました。
    アルミは銅に比べて伝導性が劣るものの、価格は銅に比べて安く、かつ産地が広いために比較的価格が安定しています。

    架空送電線では電線が軽いほどコストが下がることから選の直径を太くすることで導電性を補い、送電に用いられています。鋼心アルミより線(ACSR/AC)や鋼心耐熱アルミ合金より線(TACSR/AC)、鋼心イ号アルミ合金より線(IACSR/AC)、アルミ覆インバー心超耐熱又は特別耐熱アルミ合金より線(ZTACIR/XTACIR)、イ号アルミ合金より線(AAAC)、硬銅より線(HDCC)などがあります(参考)。 他方で都市部や市街地など送電鉄塔を新規に建設することが難しい地域などでは地中送電方式が用いられており、これにより自然現象の影響を受けないためより安全・確実に送電が可能となる。地中送電方式は架空送電方式に比べて送電容量が小さく、導電性高い銅が求められています。

    更に注目すべきはカーボンナノチューブ(CNT)を用いた電線です。
    カーボンナノチューブは同に比べて5分の1の軽さでありながら、銅鉄の20倍の強度を持ちます。銅の4倍程度の電気抵抗があるものの、開発途上であることから銅と同程度の電気抵抗にできる可能性があるとされています(参考)

    昨年にはオークリッジ国立研究所(ORNL)研究チームがカーボンナノチューブと銅マトリックスから構成される高導電性複合材料を開発しました。
    送電性における電力損失を低減されると期待されるのみならず、EV車における電動モーターのエネルギー効率を高め小型化することも可能といいいます(参考)

    新型コロナウイルスによるパンデミックの影響及び「脱炭素化」による需要の急増による銅価格の高騰は、銅の代替品にスポットライトを当てることになるのでしょうか。

  • パンデミックが終わる日とは!?『出口戦略』を探る。
    パンデミックが終わる日とは!?『出口戦略』を探る。

    70年前に発売されたアルベール・カミュの小説『ペスト』に、次のようなセリフがあります。

    「ペストと戦う唯一の方法は誠実さです」

    翻って新型コロナウイルス「第4波」を受け3回目の緊急事態宣言下にある日本ですが、政府は解除に向けた条件の設定や解除後のリバウンドを防ぐ手はずなどの「出口戦略」を未だ示せずにいます。
    他方でワクチン接種が進む米欧勢では、トンネルの出口がみえる状況になっています。
    では政治的、経済的、疫学的にパンデミックはいつ終わったといえるのでしょうか。欧米勢は「誠実」にパンデミックと戦っている中、我が国は「誠実さ」に欠けるというのか。各国がとる出口戦略を探る中で、日本に求められるメルクマールを導きたいと思います。

    世界保健機関(以下「WHO」)によると、そもそもパンデミックとは複数の国や大陸での「世界的な大流行」を指し、アウトブレイク(一定のコミュニティーでの集団感染)やエピデミック(特定地域での流行)とは区別されます(参考)。もともとCOVID-19はWHOによってエピデミックに分類されていましたが、昨年(2020年)3月11日にテドロス事務局長によってパンデミックとの認識が表明されました。そのため今後、米欧勢でのワクチン接種が進み、パンデミックの終息がみえてきても、日本を含めインド勢やシンガポール勢などのアジア勢などにおいて依然として感染拡大の様相を呈すれば、今次パンデミックは再びエピデミックへと転換される中で、地域間、国家間における格差がコントラストを強めるという次のフェーズも考えられます。

    (図表:WHO事務局長・テドロス=アダノム)

    (出典:Wikipedia)

    そのWHOが出した「COVID-19戦略」からは、以下の6つの指標が日常に戻るための「出口戦略」の参考となりそうです。
    すなわち、
    ①散発的な感染に抑える
    ②すべての感染者を検査・隔離する態勢の構築
    ③医療や介護現場での防護具確保など、拡大防止のリスク低減
    ④職場での感染予防
    ⑤他地域からウイルスの持ち込み警戒
    ⑥社会全体の理解と参画
    です。

    英オックスフォード大学は、この指標をさらに20の指標(学校閉鎖、職場閉鎖、公共イヴェントの中止など)に具体化し、パンデミックへの各国勢の対応(厳格度)を体系的に数値化したサイト「オックスフォードCovid-19政府対応トラッカー(OxCGRT)」を公開しています。裏を返せば、これらの指標がすべて緩和され0に近づけば、少なくとも政治的にはパンデミックの出口がみえることになりそうです。

    (図表:オックスフォードCovid-19政府対応トラッカー(OxCGRT))

    (出典:オックスフォード大学)

    では経済的にはどのレヴェルから出口がみえる、すなわちアフターコロナ経済へと移行したといえるのでしょうか。「危機は常に違う顔で現れる」といわれます。例えば、1929年の世界恐慌であれば(諸説あるものの)過剰生産と過剰投機の帰結として、2008年のリーマン・ショックであれば低所得者向け住宅ローンの焦げ付きの帰結として、それぞれ発生したとされますが、今次パンデミックによる経済危機は、これまでのようにマクロ・バランス(総供給=総需要)の悪化や、金融市場の混乱でもなく、新型コロナウイルスという「目に見えない敵」に対する個人レヴェルでの社会心理的要因に端を発している点に特徴があります。それによって、本来であれば安定的に推移する個人消費が大打撃を受けているのです。

    これを受け、各国勢では未曾有の財政金融政策が講じられており、その規模は世界全体で11兆ドルに迫るといいます(参考)。中でも米国勢は、今年(2021年)3月に1兆9,000億ドル(約200兆円)規模の経済対策を打ち出しており、特に3度にわたる現金給付(2020年3月に1,200ドル、2020年12月に600ドル、2021年3月に1,400ドル)を行い、景気回復の柱としています。他方で我が国でも昨年(2020年)4月に1人10万円の現金給付が行われたましたが、米国勢のように景気回復へは向かっていません。この違いは給付のタイミングにあります。

    すでにワクチン接種が昨年(2020年)12月以降に始まった米国勢においては、その現金給付は「景気対策」としての性格が強いものとなりましたが、日本のタイミングは生活維持のための「社会保障」という性格を強く帯びており、それゆえ生活に余裕のある中所得者層を中心に約7割が貯蓄に回ったとみられています(参考)

    米国勢の例をみても明らかなように、アフターコロナ経済への転換点は個人消費の回復に大きく依存していることから、特に日本において今後、現金給付や消費税の減免措置、GoToキャンペーンなど消費の喚起策が提示された時点で、経済的なトリガーが引かれることになるのではないでしょうか。

    最後に疫学的にパンデミックはいつ終わったといえるのでしょうか。これは政治的・経済的な出口戦略を考える上でも前提となる重要な指標ですが、結論としてはワクチン接種が進み、集団免疫を獲得した時点となります。問題はワクチン接種率ですが、WHOは人口の60~70パーセントがワクチンを接種する必要があるという見方を示していますが(参考)、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長ら米国勢の感染症専門家の間では70~85パーセントが転換点になるとの説が主流になっています(参考)

    現時点(2021年5月)で、イスラエル勢(62.8パーセント)は集団免疫に近づきつつあり、米国勢(47.3パーセント)でも来たる2022年正月までにこの水準に到達する見込みですが(参考)、アジア勢やアフリカ勢では後れを取っている状況を踏まえると、世界全体では7年を要する見通しです(参考)

    以上みてきたように、パンデミックからの出口戦略は政治的、経済的、疫学的なフェーズでそれぞれ開かれるものと思われます。そしてこれらのフェーズは世界的な協力のもと開かれるのではなく、各国の取り組みに大きく依拠しています。とくにオリンピック開催を控える日本としては、いかに「誠実」な取り組みを国内外に“喧伝”することができるかがカギとなってくるが、今後の展開を注視していきたいと思います。

  • 世界がデジタル「複数通貨体制」に動き出す。アメリカの失われゆく経済制裁力。
    世界がデジタル「複数通貨体制」に動き出す。アメリカの失われゆく経済制裁力。

    ロシア勢がSWIFT離脱の準備中であることを示唆しました(参考)

    欧州(EU)勢がロシア勢を「SWIFT」から追放するよう求めていることを受け、ロシア外務省のマリア・ザハロワ(Maria Zakharova)報道官がその可能性はまだ仮説の段階だとしながらも、イランによる決済システムである「SEPAM」を含む代替システムとペアを組む準備をしていると5月3日テレビ・インタビューで発言したものです。

    ベルギー勢に本拠を置くSWIFT(国際銀行間金融通信協会)は、世界中の1万以上の銀行とつながっており、2つに1つの主要な国際送金が同ネットワークを介して行われています(参考)

    (図表:16世紀ドイツの商人たち)

    (出典:Wikipedia)

    ロシア勢には現在、国外の決済手段との組み合わせとして欧州(EU)勢のSEPA、イラン勢のSEPAM、中国勢のCIPSといった複数の選択肢があります。
    実はSWIFTから除外されるリスクをかねてより抱えていたロシア勢は2014年に独自の国際送金網「SPFS」を開発し始め、2017年12月に使用を開始していました(参考)
    そして2018年、イラン勢がSWIFTから遮断されたことを受け、翌年(2019年)にはロシア勢はイラン勢とSWIFTを介さない銀行間取引を確立しました(参考)

    同じころ(2018年8月)、ハイコ・マース(Heiko Maas)独外相は、イラン勢との繋がりを維持できるようSWIFTに代わる決済手段の開発に取り組んでいることを明らかにしました。このとき、ドイツ勢はSWIFTに対して米国勢の決済支配からの脱却も要請しています(参考)

    米国勢は経済制裁の効果を高めるためにSWIFTを利用してきました(参考)
    「政治的中立性(political neutrality)」を主張してはいるものの、SWIFTは過去には米国勢の影響でキューバやイランへの取引を遮断しました(参考)
    去る19世紀のタフト米大統領によるドル外交に始まる、米国勢が使ってきた「ドルの兵器化」(dollar weaponization)という手法です。為替を支配することで、米国勢は国境を越えたドルの動きを監視することができます。その監視に加えて、世界の金融商品から人々を締め出すこともできるという、驚異的な権力です(参考)
    SWIFTを押さえることで経済制裁という力を行使してきたが、皮肉にも、これがかえって「暗号通貨」市場を加速させ始めたかもしれません。

    (図表:financial transaction)

    (出典:Wikipedia)

    2020年にはバハマ勢が「サンド・ドル(Sand Dollar)」を発行し、世界初の政府保証型デジタル通貨(sovereign-backed digital currencies)の一つとなりました(参考)
    2021年3月にはパウエルFRB議長をはじめとする世界の主要な中央銀行は、デジタル通貨や安定したコインの進化が進んでも脅威にはならないと述べていました(参考)
    しかし、その翌月(4月11日)、パウエルFRB議長は「FRBがデジタル・ドルに向けてかなり精査している」と発言しました(参考)
    さらにその1週間後(4月19日)には、英国勢とイングランド銀行(BoE)が、中央銀行発行のデジタル通貨を家庭や企業が利用できるようにする可能性について調整するタスクフォースの設立を発表しました(参考)。中国勢やスウェーデン勢と共に、貨幣の未来における次の大きな一歩を模索しているといいます。

    また、イングランド銀行内に「中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)」部門が新たに設置されます。これには欧州中央銀行(ECB)やスウェーデン中央銀行(Sveriges Riksbank)も、2025年頃に追随する可能性が示唆されています(参考)

    5月13日、イングランド銀行(BoE)のジョン・カンリフ(Jon Cunliffe)副総裁が「政府はデジタル通貨を採用すべきである」との見解を示しました(参考)
    戦後、米国勢が主導してきた枠組みは、英国勢が容認してきたからこそ成り立ってきました。その英国勢も含め、諸国勢が根底から新たな金融システムの構想、さらには実装に向けて進展しているということになるのでしょうか
    米ドルによる国際基軸通貨体制からデジタル「複数通貨体制」への転換の可能性を中心に引き続き注視していきたいと思います。

     

  • コロナワクチンに影響を受けるマーケットの存在 ~日本経済を牽引する高級志向トレンドを考える~
    コロナワクチンに影響を受けるマーケットの存在 ~日本経済を牽引する高級志向トレンドを考える~

    ワクチン接種が完了し、マスクでの外出もなくなり、大人数での会食も解禁されたとしたら、あなたは友人との数年ぶりの乾杯のお酒に何をチョイスしますか。
    私なら、オードリー・ヘップバーンのセリフを借りてこう応えることに決めています。

    “Champagne. By all means, Champagne…”

    華やかな祝いの席にシャンパンほどマッチするものもないのではないでしょうか。事実、ワクチン接種が進む欧米では、すでにシャンパン・バブルの萌芽が見られています。新型コロナウイルスが全世界的に広まり、バー、レストランは閉鎖され、会食も規模の縮小または禁止を余儀なくされた昨年(2020年)はシャンパンにとって試練の年でした。しかし今年(2021年)3月の米国におけるシャンパンの売上げは前年比88.5パーセント増加しており、さらにドン・ペリニヨンやモエ・エ・シャンドンなどの高級ブランドを擁する仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンも同時期で前年比22パーセントの増加を報告しています(参考)

    またコロナ禍をつうじて、これまでシャンパンを飲まなかった層にもシャンパン需要が拡大していると言います。日本でも「巣ごもり需要」「宅飲み」へと消費形態が大きく変化しましたが、これは欧米でも同じで、外出や海外旅行のために貯めた資金が、「宅飲み」でのシャンパンへの需要に回ったためです。そして、ワクチン接種が完了した暁には、ここ数年間の「コロナ疲れ(“pandemic fatigue”)」からの解放感から、シャンパン・バブルが到来するものと期待できるのではないでしょうか。

    (図表:米国へのシャンパン出荷量の推移)

    (出典:Bureau du Champagne, USA)

    シャンパンの生産者団体シャンパーニュ委員会米国事務局も報告書で述べているように、シャンパンの売上げは通常、景気後退の翌年に回復するといいます。去る2008年のリーマン・ショック後も、やはり米国でのシャンパン出荷量は一時的に減少しましたが、その後2012年からは7年連続で上昇に転じています(参考)。さらに、我が国でも財務省の貿易統計によると、リーマン・ショックの翌年からスパークリングワインの輸入量は増加傾向にあります(参考)。こうした過去の傾向からも、シャンパン・バブルへの期待は高まるばかりです。

    もっともバブルがくるのはシャンパンのみではありません。これはコロナ前から進んでいる動きですが、外資系ホテルの日本への進出も見逃せません。都内では三井不動産(8801)が手掛ける八重洲の再開発プロジェクトでは「ブルガリホテル東京」が来る2022年に開業するほか、関西でも東急不動産(3289)が手掛ける「ヒルトン」や森トラスト(3478)などが手掛ける「マリオット・インターナショナル」などの出店が相次ぎます(参考)。さらに福岡には積水ハウス(1928)などにより「ザ・リッツカールトン」が誘致される予定です。東京五輪が終われば「需要は一気に冷え込む」との悲観論がア・プリオリに囁かれる中、グローバル・マネーは確実に日本に流入しているのです。

    (図表:再開発が進む東京駅エリア)

    (出典:Wikipedia)

    もはや景気の起爆剤としての機能を失った東京五輪ですが、アフターコロナ時代の日本経済はシャンパン、外資系ホテルといった高級志向が手堅く牽引していくのかもしれません。しかし注意が必要なのは、あくまでもこうした流れはワクチン接種の動向次第という点です。マーケットに与える影響として、金利の水準、為替の変動など様々な要因があるが、今やワクチン接種率も一つの要因となっていることを認識する必要があるためです。ワクチン接種の動向もおさえつつ、アフターコロナ経済を牽引する高級志向路線につき引き続き注視していきたいと思います。

  • 「2040年の世界」に向けた5つのシナリオ
    「2040年の世界」に向けた5つのシナリオ

    『グローバル・トレンド2040』が発表されました。(参考)

    米国の情報コミュニティをつなぐ存在である米国家情報会議(NIC、National Intelligence Council)が4年毎に米国家情報長官室(ODNI、Office of the Director of National Intelligence)に報告するものです。

    今回、「2040年の世界」のあり得べき姿については次の5つのシナリオが描かれています。


    アブリル・ヘインズ(Avril Haines)米国家情報長官 出典:Wikipedia

    未来シナリオ① 「民主主義の復活」(Renaissance of Democracies)
    米国と同盟国が主導する「開かれた民主主義」が復活した世界である。他方で中国やロシアでは、社会統制や監視が長年にわたって強化されたためにイノベーションが阻害され、主要な科学者や起業家は欧米諸国に亡命し、衰退する。

    未来シナリオ② 「漂流する世界」 (A World Adrift)
    リーダーがおらず、国際システムは方向性を失い、混沌とした不安定な世界だ。OECD諸国は経済成長が鈍化し、社会的分裂は拡大し、政治的麻痺に悩まされる。その隙に中国が影響力を高めるのだが世界的なリーダーシップは発揮できず、気候変動といった主要な問題が解決されないままになる。

    未来シナリオ③ 「競争的共存」 (Competitive Coexistence)
    米国と中国が二分された世界で競い合いながらも共存している。中国が引き続き閉鎖的な国家指導体制を堅持し、2030年代に米中は自国の経済的繁栄のためにお互いが必要であるとの結論に達し、相反する国家システムで共存しながら市場と資源を巡り競争し合う。

    未来シナリオ④ 「分断されたブロック」 (Separate Silos)
    「グローバリゼーションが崩壊した世界」だ。複数の経済ブロック、安全保障ブロックに分断され、情報もそれぞれ独立した「サイバー主権」(separate cyber-sovereign)の中を流れる。

    未来シナリオ⑤ 「悲劇と動員」 (Tragedy and Mobilization)
    壊滅的な地球環境の危機を背景とした、ボトムアップによる革命的な変化が起こった世界である。気候変動によって引き起こされた世界的な食糧危機が、国際機関を活性化し、世界的協調を促す。

    以上の5つの展開のいずれかを世界は歩む可能性が高いと米国が見ていることになります。
    今回の米国家情報会議(NIC)による「未来シナリオ」はいかなる視座(前提)に基づいているのでしょうか。


    図表:世界 出典:Wikipedia

    今後20年間、私たちが生きる世界の輪郭を形づくる「構造的要因」(structural forces)として「人口動態」「環境」「経済」「テクノロジー」という4つの視座を設けています。

    「人口動態」

    人口増加のペースが鈍化し、高齢化が急速に進む中において、各国は近年の発展を維持することが難しくなります。
    ラテンアメリカ、南アジア、中東・北アフリカといった一部の国では人口ボーナスを享受する一方で、紛争や気候変動の影響によって高齢化した先進国への移住がさらに加速します。そして、これは国家(政府)にとって「公共投資」と「移民管理」という圧力となり、さらなる緊張を世界に生み出します。

    「環境」

    2つ目は「環境」です。異常気象などが増え、その影響は特に開発途上国に偏って降りかかり、食料、水、健康、エネルギー安全保障へのリスクを強めることになります。

    「経済」

    今次パンデミックによって国内総生産(GDP)に対する国家債務比率は、米国や日本を含む先進国のほぼ90%において、2019年には世界金融危機よりも飛躍的に上昇しました。

    「テクノロジー」

    今後20年間、「テクノロジー」の発展が「高齢化」「気候変動」「生産性の低迷」などといった問題を緩和し得る一方で、社会、産業、国家の安全保障などに新たな緊張と分断を生じさせることになります。

    これらが「社会」「国家」「国際間」の3つのレベルで相互作用を起こします。
    さらに今回は「コロナ・ファクター(COVID-19 FACTOR)」がこれからの世界トレンドを加速させ、形作っています。

    たとえば、「ナショナリズム」と「分極化」はコロナ以前から存在していましたが、パンデミックによってその傾向はさらに強まりました。その他にも「不平等の拡大」、世界保健機関(WHO)や国連(UN)といった国際機関の脆弱性が浮き彫りとなったことによる国際協力の失敗、ゲイツ財団から民間企業に至るまでワクチン開発などを通じた「非国家主体(nonstate actors)」の台頭といった要素が加わりました。


    国際連合ジュネーヴ事務局 出典:Wikipedia

    しかし今後生じることはむしろこれらを遥かに超える展開なのではないかと分析しています。
    本件シナリオの問題点の1つは、そもそも中国の現体制が20年後も残るということが前提になっていることです。
    また、地球環境の「条件設定」がなされないまま、欧米諸国の環境基準ビジネスの“喧伝”になっていることにも注意が必要なのではないでしょうか。
    今とは全く違う形の中国が生まれるとしたらどうでしょうか。しかもそれは米中間で既に合意しているものだとしたら。。。

    たとえば、先日(4月14日)にケリー米大統領特別特使(気候変動担当)が中国へ、アーミテージ及びスタインバーグ両元米国務副長官が台湾を訪問しました(参考)。この動き1つからも単純な米中対立という構図は“表向き”のものであり、それ以外のアジェンダが水面下で進んでいることも窺えます。
    そして、米国そのものの在り方も今後変わることになるとしたらどうでしょうか。

    今回米国が提示しているパラダイムに対して、「他のパラダイムの可能性を考え抜き、さらに私たち自ら描き切ることの出来る能力」としての“情報リテラシー”が今一層求められているのかもしれません(参考)

  • アメリカの中国に対する「5つの圧力」の意味することは。
    アメリカの中国に対する「5つの圧力」の意味することは。

    4月21日、米上院外交委員会から「2021年の戦略的競争法」(“Strategic Competition Act of 2021″)が提出されました(参考)
    あらゆる側面から中国に圧力をかけることを目的とした大規模な法案となっています(参考)

    上院外交委員会のロバート・メネンデス(Robert Menendez)委員長は発表に際し、「米国の戦略的、経済的、外交的手段を総動員してインド太平洋戦略に取り組むという前例のない超党派の取り組み」であり、「統一された戦略」を目指したものであると述べました(参考)

     


    米上院 (出典:Wikipedia)

    全体的な構成として、

    「競争力のある未来」への投資
    「同盟およびパートナーシップ」への投資
    「米国の価値観」への投資
    「経済政策」への投資
    「戦略的安全保障」の確保
    の5つの領域において「中国に対抗する能力」を米国がつけるための投資戦略を提案しています。

    「競争力のある未来」への投資では、「科学技術」、「グローバルなインフラ整備」、「デジタル・コネクティビティおよびサイバーセキュリティ」の3つへの投資により米国の競争力を強化します。たとえば、「科学技術」においては、中国市場からの撤退や中国国外での生産または調達のための代替市場の特定などを目的とした国務省および商務省主導の支援プログラムに、2022~2027年度毎に1500万ドルを充当することが許可されます。

    「デジタル・テクノロジーとコネクティビティ(接続性)」における競争力については、新興市場における安全なインターネット・アクセスとデジタル・インフラを拡大・増加したり、中国からの輸入品への依存度を下げるためにICT商品やサプライチェーン・サービスの多様化を促進したりするプログラムに2022~2026年度毎に1億ドルを充当するとしています。また「中国共産党の影響力に対抗する」ための基金として、2022~2026年度毎に3億ドルを充当することを認めています。

    2つ目の「同盟およびパートナーシップへの投資」は「戦略および外交」、「国際安全保障」、そして「中国に対抗するための地域戦略」の3つの領域で構成されています。米国の外交戦略を強化し、インド太平洋地域への安全保障支援を優先することにより、同盟国とパートナーに対する米国のコミットメントを更新することを求めており、その範囲は「西半球」から「大西洋同盟」、「南アジアと中央アジア」、「アフリカ」、「中東・北アフリカ」、「北極圏」、「オセアニア」をカバーし、世界各地で展開する中国に対抗することを提案しています。

    たとえば、2022~2026年度にインド太平洋地域への対外軍事融資として総額6億5500万ドル、インド太平洋の海上保安に関するプログラムなどに総額4億5000万ドルの拠出を求めています(参考)

    そして、「米国の価値観」への投資として、香港の民主化支援、新疆ウイグル自治区での強制労働、強制不妊手術、その他の虐待に対する制裁措置など、人権および市民社会に関する広範な措置を認めます。

    米国の「経済政策」への投資では、知的財産権侵害者の追跡、中国政府の補助金、中国が米国の輸出規制を回避するために香港を利用することへの監視、米国の資本市場における中国企業の存在の追跡などの措置も含む。また、外国の腐敗行為への対策に取り組んでいる国への技術支援や、COVID-19パンデミックのために延期を要請した最貧国への債務救済を行うよう米国政府に指示しています。

    「戦略的安全保障」の確保においては、軍備管理に関する同盟国との調整と協力を強化することを求め、中国の弾道ミサイル、極超音速滑空ミサイル、巡航ミサイル、通常兵器、核、宇宙、サイバー空間、その他の戦略領域に関する報告を求める内容となっています。


    米国務省 (出典:Wikipedia)

    同法案が立法化されるためには、これから「上院(Senate)」、「下院(House)」、「大統領」を経る必要があるものの、外交、軍事、テクノロジー、サイバー、安全保障と、包括的に、かつ世界の全地域も網羅した対中政策となっています。

    それでも、米国がその通りに動くのかどうかについては今後も注視すべきではないかと考えます。矛盾が窺えるからです。

    たとえば、3月に行われた米中アラスカ会談では「米中で激しい応酬が繰り広げられた」とされている一方で、メディアが退室した直後に緊張が和らぎ、「ブリンケン米長官が場を和ませる発言をした」ことが米ニューヨークタイムズ紙によって明らかにされている。「米中双方が国内向けに強いメッセージを出す必要があった」からだと言います。本気の非難ではなく、実際にはカート・キャンベル・インド太平洋調整官が描いた「シナリオ通り」であったとも言われています。(参考)

    さらに、米国務省内でもバイデン政権の中国政策に関して混乱が生じている(参考)。2022年に開催される北京オリンピックをボイコットするかどうかについて、数時間のうちに同政権はその可能性について矛盾した声明を発表したり(参考)、トランプ前米政権が新疆でのジェノサイドを宣言し、ブリンケン米国務長官を始めとするバイデン政権もこれを支持したにもかかわらず、国務省の法律顧問は、中国におけるジェノサイドを証明するには証拠が不十分であると結論づけました(参考)

    5月3日、ブリンケン米国務長官は中国が「世界の支配国家」となることを目指していると強い警戒感を示しました(参考)。ところが、同日に中国と米国が近々、互いの国に新しい特使を派遣することも明らかになりました。経験豊富で評価の高い2人のキャリア外交官が新たに加わることになっています(参考)

    時系列で見てみると同じタイミングで真逆の動きをしている米国。歴史的にも中国と手を組んでいたことがあった背景からも、日本としては引き続き注視しておくべきかもしれない。

  • 中東マーケットに注目~争奪戦のベイルート~
    中東マーケットに注目~争奪戦のベイルート~

    中国、ドイツ、ロシア、フランスがベイルート港の再建を競い合っているのをご存じでしょうか(参考)
    日本からすると遠く離れた、名前だけを知っている中東の地という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

    2020年8月にベイルートの港湾施設で起きた化学物質の爆発は200名以上の死者を出しました。そして8か月が経った今、ベイルートの港を再建するために外国企業が競い合っているのです。

    (図表:2020年ベイルート湾爆発)

    (出典:Wikipedia)

    爆発以来、政治的な混乱が続いており、政府のあらゆる問題について意思決定が困難な状況下で、損傷したドックや倉庫の再建に加え、港湾の拡張やデジタル化にかかる費用は4億ドルから6億ドルと見積もられています。
    そしてその復興において、中でも特にドイツとフランスが復興の主導権を競っているというのです(参考)

    今年(2021年)4月、ドイツの代表団は大使立ち会いのもと300億ドルを投じてベイルートの港とその周辺地域を再建する壮大なプロジェクトを発表しました。ハンブルグ・ポート・コンサルティング社(Hamburg Port Consulting)をはじめとする企業が策定した計画は港を東に移し、周辺地域には社会住宅や「セントラル・パーク」、さらにはビーチを設けることを目指しています(参考)
    かつての植民地宗主国であるフランスもこの港の再建に向けて準備を進めています。
    爆発直後の2020年9月、マクロン仏大統領が2度目のベイルート訪問を行った際、フランスを本拠とする世界有数の海運大手CMA-CGMのレバノン出身のトップ、ロドルフ・サーデ氏が代表団に名を連ねていました。その際、同社はレバノン政府に対し、海辺の場所を再建、拡張、近代化して「スマートポート」にする3段階のプロジェクトを提示。現在3年以内にベイルートの港を再建するという積極的な計画を進めています(参考)

    (図表:都市再開発の一例)

    (出典:Wikipedia)

    では、ここで海外における都市開発/インフラ再開発事業として日本企業がベイルートの再開発をする可能性を考えてみたいと思います。
    レバノンの近隣地域に進出している日本企業として株式会社安藤・間(TYO:1719)や清水建設株式会社(FYO:1803)、大成建設株式会社(FYO:1801)などがあります(参考)
    レバノンはシリアと並んで「レバント」(Levant)の筆頭格です。レバントとは東部地中海沿岸地方の歴史的な名称で主にシリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル(およびパレスチナ自治区)を含む地域(歴史的シリア)を指すことが多いです。
    この「レバント」は歴史的にも重要な位置づけを与えられてきた経緯があり、現在「秩序」改変の焦点となっています。
    中東における既存構造の解体と再構築に向けた動きが進んでいる中、欧米を中心とする諸国勢の同地域における争奪戦が激化する可能性に引き続き注視が必要です。


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