コロナ後の人生。| 気づきに満ちた世界と私

HOME

Hot Topics

迷走する“北京オリンピック・ボイコット論”

ただいま 63 人が閲覧しています!

2021年9月21日

コロナがもたらした恩恵。コロナ禍で加速する「医療」の最前線を知る。

ただいま 181 人が閲覧しています!

2021年9月21日

日本の資金洗浄(マネー・ロンダリング)対策「不合格」の真相

ただいま 117 人が閲覧しています!

2021年9月14日

国のプライドをかけた「トルマ」の戦い ~「食」を巡る地政学的リスク~

ただいま 115 人が閲覧しています!

2021年9月14日

実はほとんどの人が理解していない「シンクタンク業界」とは。

ただいま 69 人が閲覧しています!

2021年9月7日

パンデミックがもたらした革命:フランス料理

ただいま 90 人が閲覧しています!

2021年8月31日

揺れる不動産市場。ポストコロナ社会を見据えた“住みたい街“と働き方とは。

ただいま 176 人が閲覧しています!

2021年8月31日

マーケットで勝つ!ための先行指標のつかみ方
  • 実はほとんどの人が理解していない「シンクタンク業界」とは。
    実はほとんどの人が理解していない「シンクタンク業界」とは。

    「キャリア官僚」の志望者が年々減少しており、2021年度は総合職試験を導入した2012年度以降で最大の減少幅であったといいます(参考)。他方で、東大生・京大生の就活人気ランキングで上位の多くを占めているのが「コンサル・シンクタンク業界」です(参考)。


    大手コンサル並びにシンクタンクが集まる東京駅周辺
    出典:officee

    我が国ではよく「コンサル・シンクタンク業界」と一括りにされがちだが、その業務内容は大きく異なります。コンサルティング・ファームは「クライアントの課題を解決する」ことを目的としているのに対し、シンクタンクは、「社会や経済、政治、国際問題に関する調査・分析・研究をおこなう」ことを目的とする研究機関です。

    ところが我が国の場合、シンクタンクといってもその多くが大手企業を母体とする金融系のシンクタンクであり、その企業のための調査案件、市場予測などをメインの仕事としているため、あるいはコンサルとの境界が曖昧となっているのかもしれませn。

    現職、前職を含めシンクタンクで働いてきたが、「シンクタンク」といってもなかなか世間一般ではその認知度は低く、よく説明に苦慮したことも。そもそもシンクタンク数の国際比較においても、我が国は13位(137)となっており、これは、インド(612)やヴェトナム(180)といった他のアジア諸国よりも少ない数です。この背景には、我が国のシンクタンクにおける制度的要因も大きくかかわっていると思われます。そこで、そもそもシンクタンクの役割とはいかなるものなのかを、我が国におけるシンクタンク業界の動向も含めて、改めてみていきたいと思います。

    図表:世界のシンクタンク数ランキング
    出典:ペンシルヴァニア大学

    シンクタンクは、直訳すると「think(考える)tank(戦車)」、つまり「知の戦車」であり、「武器」ではなく「知」をもって戦うための装置であると言えます。この名称のごとく、シンクタンクは世界的な危機に際して時代の要請に応えるべく誕生したという経緯があります。

    例えば、「チャタムハウス・ルール」で有名な英国王立国際問題研究所と、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』で有名な米国の外交問題評議会(CFR)は、第一次世界大戦後のパリ講和会議中に、英米リーダーシップが戦後秩序を構想しなければならないとの問題意識の共有をもとに発足した姉妹機関です。

    とくに、外交問題評議会は、米国の対外政策決定に多大な影響力をもつといわれています。王立国際問題研究所はオックスフォード大学の研究者を中心に組織されましたが、他方でCFRではビジネスリーダーやウォール街の金融関係者、弁護士などが中心となり組織されました。ブルッキングス研究所やカーネギー国際平和基金、戦略国際問題研究所(CSIS)などの米国を代表する有名なシンクタンクは、その本部を首都ワシントンD.C.に置いているのに対し、CFRは本部をニューヨークに置いていることからも、CFRの政策がどこを向いているのかは容易に想像ができます。その影響力は絶大で、CFRから9名の大統領、19名の国務長官、14名のCIA長官など、多くの人材を米国政府中枢へと輩出しています。

    外交問題評議会で講演する安倍前総理大臣。背後にCFRの名誉会長デイヴィッド・ロックフェラーの肖像画がみえる
    出典:首相官邸

    このようにシンクタンクの役割の一つとして、単なる学問の探究ではなく、現実の政策にかかわる研究ないしは提言があります。政策志向の研究を行うにあたっては、4つの基準が考えらます。すなわち、「非営利・営利」「独立・従属」「民間・官」「公益・私益」です。

    我が国では官公庁(非営利・従属・官・公益)や民間企業(営利・従属・民間・私益)によるシンクタンクは多く設立されてきました。しかし、官公庁の場合、霞が関の根強いセクショナリズムの中にあって、所管官庁の政策に反する意見を出しにくいという構図もあり、また民間企業に従属の場合、小規模であれば政策研究を行う余裕が少なく、他方で大規模であっても親会社との資本的・人的結びつきゆえに、それに批判的な研究をしにくいという構図がああります。ここに、真に必要な研究を自由に行えるという意味での独立系シンクタンクが求められる所以があります。

    さらに政策研究には、以下のようなアプローチを内包しています:

    学際的研究(複雑化・高度化する社会問題を解決するには、特定分野のみの専門性に依拠した研究能力では限界がある)
    問題志向型(大学における基礎研究、応用研究のように純粋な学術研究ではなく、実際の政策上の諸問題の解決に貢献しようとするものである)
    未来志向型(政策研究にはつねに未来的・長期的視野が内包されるべきであるが、現状分析がメインとなりがちである)
    そして、研究領域としては、総合研究開発機構(NIRA)発行の『シンクタンクの動向』による調査結果のグラフが参考になるでしょう。

    図表:日本のシンクタンクの主な専門分野
    出典:総合研究開発機構(NIRA)

    このデータは2008年のものですが、それにしても「国際問題」への取り組みの乏しさが目立ちます。選挙で「外交は票にならない」といいますが、国際問題も経営上ペイできない、という背景がここにみてとれます。
    そうした中で、独立系、未来志向型、国際問題もカバーできるシンクタンクという座標軸に幣研究所(IISIA)は位置しているが、これは稀有な存在であるということが言えます。
    最後に、シンクタンクの最近の兆候として、中国やロシアのような専制体制の国家が、自国のシンクタンクを対外発信力強化の手段、すなわち情報戦の装置として使い始めているという点があります。とくに中国は、あらゆる手段を用いて制約なく戦う「超限戦」を展開する中で、シンクタンクを地政学のアクターとして活用しているのです。

    数年前、北京にある中国社会科学院に出張し、意見交換に参加したことがありますが、帰国後、数日経ったら、「産経新聞」に「中国の研究機関が外国の思想に“汚染”されており、当局より注意があった」との旨の記事が掲載されていました。私の出張とこの記事の関係は不明だが、いずれにしても、進化しつづけるシンクタンクにつき、その果たすべき役割を改めて考えさせられます。

  • パンデミックがもたらした革命:フランス料理
    パンデミックがもたらした革命:フランス料理

    今次パンデミックに伴うロックダウンは、我が国のみならず世界中のレストランをして変革を余儀なくさせるものでした。
    そして、その変革は格調あるフランス料理界をして、何世代にもわたって構築されてきた形態を放棄させ、次なるフェーズへ進化することを意味しています。
    まさに、フランス「料理」革命とでもいうべき状況にあるのです。

    しかし、フランス料理の進化は実はこれまでに幾度となく繰り返してきています。そこで、今回はフランス料理の歴史を紐解くことで、今次パンデミックに伴うフランス料理革命の意味を探っていきたいと思います。

    図表:エッフェル塔のレストラン「ジュール・ヴェルヌ」で会食する トランプ米大統領夫妻とマクロン仏大統領夫妻 出典:The Guardian

    今でこそ世界最大料理の一角を占め、公式な外交の場においても主流となっているフランス料理ですが、中世においては、テーブルに雑多に並べられた料理を手づかみで食べるなど、今のような洗練されたマナーも存在していませんでした。フランス料理の「原型」が確立したのは、16世紀、イタリア・フィレンツェの名家メディチ家よりカトリーヌ・ド・メディシスが、ヴァロワ朝のアンリ2世に嫁ぐ際に、随伴したイタリア料理人が高度な調理法や洗練されたマナーも伝えたということに起因します。

    17世紀に入るとイタリア料理から距離をおくフランス料理の改革運動が起こり、フランス宮廷料理のフォーマルな様式として「オート・キュイジーヌ」が誕生した。複雑な味付けと手の込んだ飾り付けが特徴で、「太陽王」と呼ばれたルイ14世時代に、王の権威を誇示するために生み出されました。しかし、この段階ではまだフランス料理は王侯貴族のための宮廷内のみの文化であり、これが一般市民へと普及するのはフランス革命を待たねばなりませんでした。

    図表:「オート・キュイジーヌ」によるテーブルセッティング 出典:Wikipedia

    すなわち18世紀末、フランス革命が勃発すると、職を失った宮廷料理人たちが流出して、街角でレストランを開くようになったのです。アンシャン・レジーム(旧体制)の崩壊によって台頭した富裕化した市民(ブルジョワジー)がそのレストランに通い詰めるようになり、フランス料理は市民レベルでも普及するようになったのです。とくに、フランス革命期の外交官・政治家として活躍したタレーランのもとで料理人をしていたアントナン・カレームは、今日でいう「有名シェフ」の先駆けでした。

    図表:「会議は踊る、されど進まず」と揶揄されたウィーン会議出典:Wikipedia

    とくにナポレオン戦争後の欧州秩序再建を目的としたウィーン会議(1814~1815年)では、フランスの首席全権としてタレーランも参加したが、タレーランはしばしばカレームの手による「饗宴外交」を開催し、各国の有力者をもてなすことで、フランスは敗戦国の立場にあったにもかかわらず、有利に交渉を進めることができたと言われています。そして、ウィーン会議は、フランス料理がヨーロッパで一躍脚光を浴びる契機ともなりました。

    19世紀には、「近代フランス料理の父」オーギュスト・エスコフィエによって、フランス料理の大衆化がなされました。また、19世紀は大皿で提供していた「フランス式サービス」から、メニューの順番通りに1皿ごと提供する「ロシア式サービス」が普及した時期でもありました。ここに、前菜、メインディッシュ、コーヒー・デザートがサーヴされるコースメニューが誕生したのです。

    現代に入ると、エスコフィエの料理体系を受け継いだフェルナン・ポワンらが、さらに時代に合わせた形へとフランス料理を進化させていきました。また、1923年には『ミシュラン・ガイド』による「権威付け」も始まりました。ミシュランによって有名シェフを「輩出」し、それを育成していくというサイクルを全世界で展開することを通じ、フランス料理の基準認証ビジネスを確立したわけです。ジョエル・ロブションや、トゥール・ダルジャンなど、ミシュランの星を獲得したシェフ、レストランは、我が国でも「グランメゾン」として常に人気を博しています。

    現代におけるフランス料理の革命的な最後の進化は、1970年代にポール・ボギューズが主導した「ヌーヴェル・キュイジーヌ」の確立です。これは、エスコフィエの「正統的」な料理に対する反動であり、より軽く、より健康的な料理を特徴としています。

    図表:「ヌーヴェル・キュイジーヌ」による盛り付け出典:Wikipedia

    2010年にはフレンチガストロノミー(フランス美食学)がユネスコの無形文化遺産にも登録されましたが、その背後には、サルコジ仏大統領による「市場原理主義」的な政策の導入があったことは重要なポイントです。

    そして現在、新型コロナウイルスによるパンデミックを受け、フランス料理は進化の真っ只中に置かれています(参考)。例えば、フランスでは、昼休みは「神聖な時間」とみなされることから、食文化の大切さを反映する措置として、労働法で雇用主に対し、従業員がオフィスのデスクで食事することを禁じていました。しかし、去る2021年2月には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、同僚との会食が「忌避」されるようになる中で、このデスクランチ禁止の規定も緩和されたといいます。フランスのメディアでは、自分のデスクでサンドイッチを食べる「不幸」な従業員のイメージが放映されていました(参考)

    さらに、渡航制限やロックダウンは、これまでの高級フレンチ・レストランのビジネスモデルが観光客なしでは機能しないことを明らかにするものでした(参考)。そして、こうした危機は、プロセスとしての食事に重きを置くフランス料理に、テイクアウトやミールキット(食材とレシピのセット)といった、これまでの伝統とはかけ離れた様式の導入を余儀なくさせています。

    16世紀以来、伝統を踏襲しながらも、時代の最先端の技術や流行を融合させることで、保守性と前衛性を併せ持ったスタイルを確立してきたフランス料理であるが、今次パンデミックを契機に、さらなる進化を遂げようとしています。

  • 揺れる不動産市場。ポストコロナ社会を見据えた“住みたい街“と働き方とは。
    揺れる不動産市場。ポストコロナ社会を見据えた“住みたい街“と働き方とは。

    ワクチン接種が進んでいる国々では、我が国に先んじて新型コロナウイルスに関する法的な規制が解除され、街に人通りが戻るケースも見られるようになってきました。
    パンデミックは人々の日常生活を一変させてきましたが、今後、日々の生活が正常を取り戻した場合、どのような時代となっていくのでしょうか。
    テレワークが広がりをみせる中、通勤や働き方に対する意識がどのように変化していくのかという問題に改めて注目してみたいと思います。

    去る2021年7月に規制が解除されたイギリス・ロンドンでは、通勤者の間でテレワークを支持する声が根強くあるようです。英世論調査会社 YouGovの調査では、通勤を回避できるというのが、テレワークを支持する最も一般的な理由であり、ほとんどまたは全ての日でテレワークを好むサラリーマンの62パーセントが、通勤時間が長すぎると述べているという結果があります(参考)

    アメリカでの意識変化にも新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く見られます。モビリティサービスソリューション企業Moovitの“2020 Global Public Transport Report”によると、新型コロナウイルスとそれに関連する自宅待機命令によって、アメリカ人の約50パーセントが公共交通機関を使う機会が以前より減った(41パーセント)、もしくは、まったく使っていない(11パーセント)と回答しています。

    また、新型コロナウイルス感染者数が最も多いカリフォルニア州サンフランシスコでは21パーセントもの人が公共交通機関をもはや利用していないと答えています。公共交通機関を利用しないと回答した人はその他の国々でも広がっており、セサロニキ、アテネ(ギリシャ)、パレルモ、トラパ二(イタリア)でも2割以上に及んでいます。

    そして、46パーセントのアメリカ人が、より安全な公共交通機関を求めるためにはモバイル決済手段に関心を寄せていると回答するなど、新型コロナウイルスの影響によって通勤や公共交通機関の利用に対する意識の変化が強まっています(参考)

    我が国でも、都市において生活を営む上で通勤は頭を悩ませる問題の一つでしょう。「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)によると、平日一日あたりの往復の通勤・通学時間の平均は,神奈川県が1時間45 分と最も長く,次いで千葉県1時間42 分,埼玉県1時間36 分、東京都1時間34分の順となっており,首都圏で長くなっています。都市部で長時間通勤と公共交通機関の利用が一体化した社会システムを築いてきた証しといえるでしょう(参考)

    (図表:日本の大都市圏の通勤ラッシュ)

    (出典:Wikipedi)

    東京都内では現在も地下鉄の新路線建設の動きが見られます。東京メトロの既存ネットワークとの接続も想定される東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲〜住吉)、都心部・品川地下鉄構想の2つのプロジェクトです。完全民営化の方針がある東京メトロですが、経営状態に影響を及ぼすことがないように事業が進められることになっていると言います。(参考)

    しかしながら、昨年から不動産会社が集計する「住みたい街」の調査のいくつかには変化の兆しが見られます。不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営する株式会社LIFULL(2120)の「借りて住みたい街ランキング」(調査対象期間:2020年1月1日 ~12月31日)は顕著な「郊外志向」を示しており、トップは神奈川県の本厚木となりました。(参考)また、不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」を運営する株式会社リクルート(6098)が行った「住みたい街ランキング」(調査対象期間:2021年1月4日~ 1月15日)では、埼玉県の浦和など郊外の中核駅で人気の伸びが見られる結果となりました。(参考)

    さらに、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を足し合わせた新しい概念である「ワーケーション」に対する注目度も高まっています。「ワーケーション」は、リゾート地などを含む地方に滞在し、休暇を取りながら仕事も行うという新たな働き方です。(参考)

    我が国において定着してきた公共交通機関を利用した通勤を中心とした都市生活のスタイルは、ポストコロナを見据えてどのような変化がもたらされるのでしょうか。新たな方向性が我々の生活にもたらすかもしれないポジティブな動きに期待したいと思います。

  • アフガン情勢が日本にとって他人事ではいられない3つの理由
    アフガン情勢が日本にとって他人事ではいられない3つの理由

    「8月15日」、我が国にとっては「終戦の日」であると同時に、米国勢にとっては日本勢に勝利した日であるが、今年(2021年)の8月15日は米国勢にとっては敗北の日となりました。

    アフガニスタン勢で進攻を続ける反政府組織タリバンが首都カヴールを制圧し、政権を奪取したのです。8月15日以降、世界のメディアはアフガン情勢一色となりました。主な論点は、(1)各国大使館職員等の出国状況といったミクロな報道から、(2)今次のタリバンの進攻を招いたとされるバイデン米政権のアフガン撤退に対する批判、(3)アフガニスタン勢が「帝国の墓場」と呼ばれる歴史的経緯とそこに足を踏み入れた中国勢の意図など多岐にわたっています。

    我が国ではお盆の最中で、しかも「災害級の大雨」が続く中で、どうもアフガン情勢のニュースが霞んでしまった感を拭えませんが、アフガン情勢の行方は、我が国にとっても他人事ではない重要な地政学リスクなのです。そこで本稿では、上記(1)~(3)の論点を追っていくことで、アフガン情勢が我が国にとって重要である所以を明らかにしたいと思います。

    (1)アフガニスタン勢からの出国

    いち早く出国したのがアフガニスタン勢の大統領ガニでした。ロシア通信は、「車4台に現金を詰め込み、一部をヘリコプターに押し込もうとしました。入りきらなかった金は駐機場に置いていった」とガニ逃亡の様子を詳細に伝えています。それまで米国勢を後ろ盾としていたガニ政権の混乱ぶりを印象づけたいロシア勢の意図も見え隠れしています(参考)。15日午後にカヴールを出国したガニ氏は、初め隣国のタジキスタン勢に向かったが着陸を拒否され、結局、アラブ首長国連邦勢(UAE)に退避しました。最終的には、未だにガニ「大統領」と呼び続けている米国勢に向かう可能性が高いでしょう(参考)

    (図表:トランプ前米大統領と握手しているガニ大統領)

    (出典:Wikipedia)

    各国の大使館のスタッフも早々に脱出を開始しました。カヴール国際空港を離発着する軍用機リストをみると、8割が米軍機で、残りが英国勢、ドイツ勢、フランス勢、カナダ勢などNATO主要国が続いていることがわかります(参考)。まさにこの地域へのコミットメントの多かった国々のリストともとれるが、我が国の航空機は一機も離発着していません。

    我が国外務省の発表によると、日本大使館館員12名は、「友好国の軍用機」により、カヴール国際空港から出国し、アラブ首長国連邦勢(UAE)のドバイに退避したとのことですが(参考)、ここでいう「友好国」とは英国勢です(参考)。もっとも、日本大使館や国際協力機構(JICA)事務所で働いていたアフガニスタン人の現地スタッフやその家族は、国外に退避する見通しが立たないまま、アフガン国内にとどまっているといいます(参考)

    さらに絶望的な状況にあるのが、何ら伝手のない一般的なアフガニスタン人です。カヴール国際空港の滑走路にまで押し寄せ、米軍のC-17輸送機に群がる光景は、我が国のメディアでもショッキングに報じられましたが、いかにタリバン政権への回帰が多くのアフガニスタン人にとって絶望的な状況なのかが痛いほどわかる映像でした。

    (図表:米軍のC-17輸送機に群がるアフガニスタン勢の人々)

    (出典:Twitter)

    これに対し、欧州各国は、「これまで助けてくれた現地人を保護するのは義務」だとして救出作戦を開始しています。英国勢やフランス勢などの大使は、一人でも多くのアフガン人を救出するべく、空港でもビザを発給し続けている旨、Twitter上などで“喧伝”されていました(参考)。ドイツ勢も軍用輸送機A400Mなど3機を派遣し、カヴールとウズベキスタン勢のタシュケント間でのピストン輸送を行っています。西側諸国にとりインテリジェンスの拠点となっているウズベキスタン勢の地政学的重要性が改めて浮き彫りになりました(参考)

    ある国の政権が崩壊するとはどういうことを意味するのかを、今次アフガン情勢を通じて我が国も真剣に顧みなければならないでしょう。

    (2)バイデン米政権に対する批判

    そして、今次の混乱を招いたとされる米国勢への批判も高まっていますが、これに対し、バイデン米大統領は、政権崩壊翌日の8月16日にアフガン撤退の「正当化」演説を行ったが、その演説の中で、次のような我が国にとっても耳の痛くなるような「忠告」が含まれていたからである:

    American troops cannot and should not be fighting in a war and dying in a war that Afghan forces are not willing to fight for themselves.
    (米国軍はアフガニスタン軍が戦う意思がない戦争で戦うべきではないし、死ぬべきでない)

    次で述べるように、中国勢をとりまく情勢も不穏な動きを見せる中で、いざ我が国が有事に巻き込まれた際にも、果たして日米同盟が有効に機能するのか否かは、我が国の「戦う意思」にかかっているということを今次の「忠告」は暗示しているのではないでしょうか。

    (3)「帝国の墓場」に足を踏み入れた中国勢の意図

    そして最後に、今次アフガン情勢が我が国にとって重要な最大の要因が、中国勢とタリバンの蜜月関係にあります。「帝国の墓場」とも言われるアフガンに、中国勢がなぜわざわざ足を踏み入れたのかという点を改めて考えなければならないでしょう。

    そうすると、その裏には米国勢でさえ匙を投げたアフガン情勢を中国勢が敢えて「引き取る」ことで、米国勢はその「見返り」として中国勢の台湾有事に「目を瞑る」というディールがあるいはあったのではないかともとれるわけである。事実、タリバンが首都カヴールを制圧してから2日後の8月17日には、中国勢は台湾周辺で実戦的な軍事演習を行ったと発表しています(参考)

    かつて2014年にロシア勢によりウクライナ危機が勃発して以降、中国勢は南シナ海への進攻を強化したという連関性(リンケージ)がみられたましたが、今次アフガン情勢も同じようなリンケージがフラクタルに再現されるのか、その場合、尖閣諸島、沖縄をかかえる我が国はすべからく有事に巻き込まれるということを念頭におきつつ、今次アフガン情勢を注視していかねばなるまいでしょう。

  • チェルノブイリの原発事故の歴史が繰り返されるのか:「中国バブル崩壊」のトリガーは中国株からのマネー流出だけではない。
    チェルノブイリの原発事故の歴史が繰り返されるのか:「中国バブル崩壊」のトリガーは中国株からのマネー流出だけではない。

    我が国では、東京夏季五輪のメダルラッシュと、新型コロナウイルスの感染爆発ともいえる状況でニュースが席巻されている中、マーケットの世界では「中国バブル崩壊か」との懸念が広まりました。というのも、中国当局によるIT・教育業界への規制強化の動きを受けて、中国株からのマネー流出が加速しているのです。

    2022年に共産党大会を控えている習近平指導部としては、市場で独占的な地位を築いているIT企業への統制を強めることで、長期政権に向けて国民の支持を得ようとしていることが背景にあります(参考)。また、規制強化の対象は教育業界にも及びます。少子化対策として、学習塾の設立を規制したり、既存の学習塾は非営利化させることで、年々増加している教育費の高騰を抑え込み、出産をためらう夫婦にこれを促すことが狙いだといいます(参考)。近年、中国勢の教育産業は1000億ドル(約11兆円)規模にも達し、今後も成長期待が高まっていたが、「政府の通知1本でビジネスモデルが根本から覆されるなら、中国企業の株価バリュエーションは大きく見直さなければならない」との悲鳴が上がっています(参考)

    こうした規制を受け、去る7月26日(北京時間)の中国本土のCSI300指数と香港ハンセン指数は大幅に下落、米上場の中国大手企業98銘柄で構成するナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数も3営業日の下落率が約19%と、過去最大を記録しました。

    (図表:大幅に下落したIT・教育関連株)

    (出典:Bloomberg)

    7月28日夜(北京時間)には、市場の懸念を緩和するため、中国証券監督管理委員会(CSRC)が大手投資銀行幹部とオンライン形式で会合を開き、規制面の措置について「拡大解釈」すべきでないこと、世界市場が大幅に変動しないよう政策を安定的に導入することが伝えられました。ロイター通信によると、同会合に招待された投資銀行は、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、UBSなどの中国国内で事業免許を取得している外資の投資銀行だけだといいます(参考)

    (図表:大手投資銀行幹部との会合を主催した方星海CSRC副主席)

    (出典:Wall Street Journal)

    同会合を受けてか、29日には中国株式市場は大きく反発する動きもみせていますが、中国指導部による管理・統制強化は「これが始まりであって、終わりではない」との指摘もあり、まだまだ「中国バブル崩壊」は予断を許さない状況にあります。

    果たして、今次の規制強化がトリガーとなって中国バブルは崩壊へと向かうのでしょうか。一般的にはこうした規制強化の余波や、不動産バブルの失速など経済的要因が考えられますが、他方で中国勢をめぐっては、昨今不気味な動きが散見されています。

    去る6月14日には米CNNが「台山原子力発電所での放射性物質の漏洩」を報じています。これは、広東省の台山原子力発電所で放射性物資漏れが生じ、周辺地域の放射線漏量が高まっているとして、同原発の運営に協力する仏系企業「フラマトム」が米国原子力規制委員会に技術協力を求めたというものです。7月30日には破損した燃料棒を交換し、破損原因を調べるために1号機の運転を停止したと発表されましたが、この報道に接し想起されるのが、去る1986年4月25日にソ連(現ウクライナ勢)で発生したチェルノブイリ原発事故です。

    当初事故は隠蔽されましたが、2日後、西側諸国が異常に気付きました。4月28日の朝、スウェーデンのフォルスマルク原子力発電所で、職員の靴から高線量の放射性物質が検出されたのです。その職員が地図と風向きを確認したところ、その先にチェルノブイリがあったのです。

    同日中にスウェーデン勢の外交官がモスクワと連絡を取り原発事故の有無を問い合わせたが答えは「ニェット(No)」であったため、スウェーデン勢は国際原子力機関(IAEA)に事態を報告するとの意向を伝えると、ソ連勢は一転、チェルノブイリで事故があったことを認めたのです(参考)。チェルノブイリ原発事故から35年となった2021年4月26日には、ウクライナの情報機関であるウクライナ保安庁が同原発事故の機密文書の一部を公開しましたが、それよると事故前からチェルノブイリ原発ではトラブルが相次ぎ、危険性が報告されていましたが、パニックを起こさないよう隠蔽されていた可能性があるといいます(参考)

    (図表:「石棺」に覆われたチェルノブイリ原発4号炉)

    (出典:BBC)

    これらソ連勢による隠蔽工作は、ソ連首脳部のみならず、より現場に近い組織、人間が事実を隠蔽しようとする動きがありました。スターリン以来の恐怖政治から当事者が懲罰を恐れ、保身を第一に考えた故であるが、この体質を含め、もはや情報隠蔽を不可能と判断したゴルバチョフは、「グラスノスチ」(情報公開)の徹底を指導、すると政府への不信感が募り、最終的にはソ連勢の体制崩壊へとつながったのです。

    欧米勢によって暴かれた今次「台山原発事故」は、チェルノブイリ原発事故とフラクタルな現象を中国勢において引き起こすためのものであるとすれば、「中国バブル崩壊」はこうしたマーケット以外の要因もトリガーとしてあり得るのではないでしょうか。

    最後に、中国勢の原発をめぐっては英国勢でも分裂が生じていることが報じられており、今後の展開を左右しかねません。すなわち、中国国営電力会社である中国広核集団が英サフォーク州のサイズウェルC原子力発電所建設への関与を検討している件について、一部の議員が、中国勢が国家の重要インフラにおいて役割を担うべきではないと反対を表明しているのです。他方で、ジョンソン英首相は、元バンク・オブ・アメリカ(BofA)幹部で首相補佐官のダン・ローゼンフィールドの影響もあって中国勢の投資に柔軟化しており、同原発建設をめぐる動きが今後の展開の指標の一つとなるのではないでしょうか(参考)

  • 2025年に原発発電容量【世界1位】を目指す中国が海南島に小型原子炉を建設。その先にあるものとは。
    2025年に原発発電容量【世界1位】を目指す中国が海南島に小型原子炉を建設。その先にあるものとは。

    去る2021年7月13日(北京時間)、中国は海南島に世界初の商用モジュール式小型原子炉である「Linglong1」の建設を開始しました。そもそも、「小型原子炉」とはどういったものなのか。またなぜ北京や上海ではなく海南島なのか、その思惑を探りたいと思います。

    (図表:海南島に建設中の小型原子炉)

    (出典:人民日報

    いわゆる「脱炭素化」に向け、エネルギー分野で様々な技術開発が進められる中で、
    より安全で経済的な原子力発電ということで、原発業界が力を入れているのが「小型原子炉(小型モジュール炉、SMR)」です。

    原子力発電は長らく発電コストが安価な電力供給減とされてきたが、とくに1986年のチェルノブイリ原発事故、2011年の福島第一原発事故を経て、ひとたび事故が発生すれば深刻な環境汚染を生じさせ、その後も莫大な廃炉費用が必要となることが明らかになると、その経済的なリスクがかえって大きいと認識されるようになってきました。世界の原発における送電開始と閉鎖の推移をみても、ここ数十年は規模が縮小している原発業界だが、今、安全性・経済性の課題をクリアする小型原子炉をもって再び活況を取り戻そうとしているのです。

    (図表:世界の原発における送電開始と閉鎖の推移)


    (出典:世界原子力協会)

    小型原子炉は、国際原子力機関(IAEA)の定義では「出力が30万キロワット以下」の比較的出力の小さい原子炉のことをいい、従来の大型原子炉の3分の1から5分の1ほどとなります。
    また、プレハブ住宅のように、主要な部分を事前に工場で製造してから現地で組み立てることができる「モジュール」構造のため、
    建設費が1兆円を超えることも珍しくない既存の原発に比べて、建設コストは数百億に抑えることも可能となり、さらに5~7年かかっていた工期も約3年に短縮できるといいます。
    さらに最大の特徴とされるのが、その安全性です。「小型」にすることで大型の原子炉よりも冷却しやすくなり、福島第一原発事故のように非常用電源を喪失した場合でも、追加の冷却水や電源を必要とせず、炉心を冷やして安全に停止させられるというのです。

    実用化には、日本を含む各国の企業が取り組んでいます。米オレゴン州に本社を構えるスタートアップ企業「ニュースケール」は、これまで米エネルギー省から4億ドル(約430億円)を超える資金支援を獲得し、米原子力規制委員会(NRC)の技術審査も終えており、世界で最も商業化に近い企業とされています(参考)。ニュースケールには我が国からも日揮ホールディングスとIHIが出資しており、マーケットも注目しています。最も早い稼働はアイダホ州アイダホフォールズで、2029年の発電を予定しています(アイダホフォールズには、原子力に関する国立研究所が立地しており、我が国の東海村と姉妹都市です)。

    米国だけではありません。英国ではロールス・ロイスが主導して「SMRコンソーシアム(小型原子炉開発企業連合)」を立ち上げ、小型原子炉に参入しているのです。

    (図表:ロールス・ロイスが主導する小型原子炉計画)


    (出典:Rolls-Royce)

    中国やロシアでも開発の動きが進んでいます。ロシアの国営企業は原子力砕氷船の技術を応用し、シベリアや北極海の資源開発基地などで活用するとみられています。
    そして、中国では海南島で建設を開始したとの今次報道にたどり着くわけです。今年(2021年)の全国人民代表大会(全人代)を通過した第14次経済社会発展5カ年計画(2021~2025)によると、中国政府は今後5年間に20基前後の原発を追加建設する中で、小型原子炉と黄海上の海上原発事業も推進するといいます。計画通りに進めば、米国、フランスに続き3位である原発発電容量が2025年には世界1位となります。

    海南島に小型原子炉を建設する目的としては、南シナ海の海上での電力供給を目指しているとも伝えられているが、そもそもこれは中国における海南島の位置づけがより重要となっていることの証左であると言えるでしょう。
    海南島は「中国のハワイ」とも称される観光地であるが、同時に中国海軍南海艦隊の拠点としても有名です。まさに、観光地であると同時に、米太平洋艦隊の司令部を置くハワイと全く同じ機能を担っているわけです。その海南島は今、「観光」・「軍事」に加え、香港に替わる「金融」の拠点となりつつあるのです。去る2021年6月10日には全人代にて海南島を自由貿易港として国内外ファンドによる投資を一部認める基本法が可決しています(参考)

    (図表:「中国のハワイ」と称される海南島・三亜市)


    (出典:Wikipedia)

    また中国政府は同島を「クリーンエネルギー島」と位置づけ、30年までにクリーンエネルギーの発電容量を85%前後に高めるといいますが、まさに今回の報道にある小型原子炉建設はそのための手段といえるでしょう。これまで香港が担ってきた機能の移転先として海南島については引き続き注視していきたいと思います。

  • 「ネアンデルタール人」の遺伝子がコロナを予防する?~人間 Vs 霊長類 Vs 人工知能~
    「ネアンデルタール人」の遺伝子がコロナを予防する?~人間 Vs 霊長類 Vs 人工知能~

    新型コロナウイルスを重症化させるのも予防するのも「ネアンデルタール人」の遺伝子である―こうした研究結果がPNAS・米国アカデミー紀要に掲載されました(参考)

    図表:Le Moustier by Charles R. Knight, 1920 出典:Wikipedia)

    ネアンデルタール人は約40万年前に出現し2万数千年前(2014年に発表された学説では約4万年前)に絶滅したとされる化石人類の一つです。ヨーロッパ大陸を中心に西アジアから中央アジアに至るまで広く分布していました。
    従来現生人類とは差異が大きいと考えられていたものの、研究が進むにつれ共通性が広く認められネアンデルタール人と現生人類の際は亜種レベルに過ぎないとの見解も登場しました。

    2010年5月7日の米国系科学誌『サイエンス』には現生人類のゲノムにネアンデルタール人の遺伝子が数パーセント混入しているとの研究が発表されました(参考)
    こうした中で上述のように昨年(2020年)来の新型コロナウイルスによるパンデミックにおいてこのネアンデルタール人の遺伝子がその重症化を予防したり増進したりするという学説が発表されたのです。

    新型コロナウイルスの重症化を予防する遺伝子は現代人の12番染色体の上にあり、新型コロナウイルスによる重症化リスクを約20パーセント低下させます。他方でむしろ新型コロナウイルスに感染した際に重症化させる遺伝子、3番染色体もネアンデルタール人から受け継いで存在します。

    前者の遺伝子はアフリカ以外に住む約50パーセントの人が持っており、日本人もおよそ30パーセントがそれを保有しています。他方で後者については欧州では16パーセント程度、南アジア(インドやバングラデシュなど)では最大60パーセントがその遺伝子を保持します。

    新型コロナウイルスを巡ってネアンデルタール人が注目される中で、去る(2021年)2月11日、『サイエンス』で再びネアンデルタール人にまつわる興味深い研究が発表されました(参考)
    実験室で培養したネアンデルタール人の脳組織にヒトの遺伝子をひとつ入れ替えることで、その結果得られたオルガノイドはもはやネアンデルタール人のものではなくなったことから、当該遺伝子が現代人の脳の発達に果たした役割が明らかになったといいます。

    すなわちそれは「どのDNAが人間の脳を“人間”たらしめるのか」、ひいては「何が人間と他の霊長類を分けるのか」といった疑問への答えとなり得るものです。

    人間の脳の構造を解き明かすことは何に役立つのだろうか。
    それは近年ではまず人工知能(AI)でしょう。
    ヒトの脳神経ネットワーク全体をスーパー・コンピュータ上に再構築する「全脳シミュレーション」にこれまで数十億ドルが投入されてきたものの未だ知性の本質が何かは明らかになっていません(参考)

    しかし多国籍機関はこうした人工知能(AI)技術に注目しています。アントニオ・グテーレス国連事務総長は昨年(2020年)6月、学際的かつ協調的アプローチがすべての人の安全で包括的な未来につながるのかについてのグローバルな対話を促進するための「デジタル協力に関するハイレヴェル・パネル(High-level Panel on Digital Cooperation)」を設置しました(参考)

    私たちは社会を分析し次の手を決定する「知性」を持つ人工知能(AI)を作り出す知識と権力が一握りの人間に集中しているのに対し、その決定は社会のほとんどの生活に影響を与えるというかつてない時代にいます。そうした中で国連をはじめとする多国籍機関は人工知能(AI)社会のガヴァナンスに関する議論のイニシアティヴをとりつつあります(参考)。

    こうした中で今次ネアンデルタール人の脳を媒介とした人間の脳が人間のものたる理由、ひいては人工知能(AI)の研究へと至り、人工知能(AI)社会のガヴァナンスが構築されていくことになるのでしょうか。

  • 肥料の王様「ウレア」:日本が生産国1位に再びなりえる日がくるのか。
    肥料の王様「ウレア」:日本が生産国1位に再びなりえる日がくるのか。

    「ウレア(urea)」という物質を聞いたことがあるでしょうか。化学式では、「(NH2)2CO」と表現されるこの物質は、動物の尿中に含まれる有機化合物「尿素」のことであり、たんぱく質や核酸の分解生成物中の窒素分を体外に排出する役割を受け持っています(参考)

    実は、尿素は肥料からスキンケア製品に至るまで、あらゆるものに大量に使われており、とくに農業分野では、輸送費、包装費など経費がかからないこと、大規模な工場生産に適すること、また中性肥料であり、連用しても土壌が悪変しにくいことから、「肥料の王様(King of Fertilizers)」とも呼ばれているほど重宝されています。

    そうした中で、去る(2021年)7月16日、米テキサス大学オースティン校の国際研究チームが、持続可能で効率的な尿素生産の方法を考案したとの発表があり、小さな話題となっています。しかし、これは一国の食糧安全保障の行方を左右する極めて重大な“潜象”ともいえます。今なぜウレア(尿素)に注目すべきなのでしょうか。

    そもそも尿素は去る1773年にフランス勢の化学者ルエルにより尿中から分離されました。人工的には、1828年ドイツ勢の化学者で「有機化学の父」と呼ばれたヴェーラーによりシアン酸アンモニウム(CH4N2O)から合成されたのが最初です。このヴェーラーの合成は、無機物から有機物を合成できることを示したものであり、有機物は生物のみが合成できるとした「生気論(vitalism)」を実験により否定したことで有名です。

    (図表:ゲッティンゲンにあるヴェーラーの銅像)

    (出典:Wikipedia)

    現在の一般的な合成法としては、ハーバー・ボッシュ法によりアンモニア(2NH3)を製造し、これと炭酸ガス(CO2)を120度、150気圧前後に過熱加圧して化合させ、製造する方法が主流です。

    2NH3 + CO2 → (NH2)2CO + H2O

    この方法は去る1922年にドイツ勢の総合化学メーカーI.G.Farben(イー・ゲー・ファルベン)社により工業化され、その後、米国勢のDu Pont(デュポン)社や英国勢のI.C.I社も参入しています。

    我が国では、1937年に合成工業(のちに東洋高圧)と住友化学とが尿素製造を開始しています(参考)。我が国では世界最高レヴェルの溶出制御技術が開発されたことで、尿素産業は大いに発展し、1972年には3,231千トンと世界一の尿素生産国にまでなっています(参考)。この高度な技術開発の背景には、チッソ(現:ジェイカムアグリ)のコーティング技術によるところが大きいです(参考)。去る1973年のオイルショック時には、重要物資として「3F」(Food(食糧)、Fire(兵器)、Fuel(燃料))にFertilizer(肥料)を加えた「4F」という言葉が生まれたように、肥料は食糧安全保障にとっても不可欠な物資として改めて認識されるようにもなりました。

    このように「必要は発明の母」の言葉の如く、我が国は欠乏の時代をその技術で乗り越えてきたわけですが、次第に欠乏から充足の時代に移行していく中で、かつての勢いを失っていきました。他方で、中国勢が尿素の生産を増大させ、2007年からは世界最大の尿素輸出国となっています。しかし2016年以降は、中国勢の輸出力が減少に転じ、その代わりに2019年の輸出量ランキングではロシア勢が1位に躍進しています(参考)

    (図表:三菱重工が納入したロシア勢の肥料プラント)

    (出典:三菱重工)

    こうしたプレーヤーの変遷の背景には、尿素の製造方法の発展があります。すなわち近年では、天然ガスの産出国において、天然ガスを原料とした尿素製造が増大しているのです。この方法は、まず原料の天然ガスから水蒸気、空気との反応で水素、窒素、炭酸ガスをつくり、次にこのうち水素と窒素をアンモニアプラントへ送りアンモニアを製造、最後にアンモニアと炭酸ガスを尿素プラントへ送り尿素を製造するのです。

    人口の増大に伴う食糧安全保障を巡る各国勢の“角逐”が、肥料の世界的な需要増大をもたらしているがゆえに、その核となる尿素市場で激烈な競争が展開しているのです。
    そして、今次の米テキサス大学による発表です。今次発表の前提として、従来の方法では、ハーバー・ボッシュ法にせよ、天然ガスを利用した方法にせよ、高レヴェルの熱と圧力を使用する2段階の熱プロセスを使用して生成されるため、尿素の製造過程で大量のエネルギーが使用され、大量の排出物がもたらされるという課題が指摘されていたという点があります。とくに「脱炭素」が至上命題とされる現下の国際エネルギー情勢においては、原料調達から生産・流通、廃棄・リサイクルに至るまでの一連のサイクルの負荷を定量的に算定するライフ・サイクル・アセスメント(LCA)への取り組みが求められるという中で、より効率的で持続可能な尿素の製造方法が求められていたわけです。

    そうした中、米テキサス大学が考案した方法では、「電極触媒作用」を使用して一つのステップで尿素を生成できるといいます。また次なるステップとして、太陽エネルギーを直接使用する方法なども模索しているといいます。

    (図表:「電極触媒作用」による尿素生成)

    (出典:New Food Magazine)

    尿素生産の市場は、先陣を切ったのはドイツ勢で、大量生産化したのは米国勢、効率化したのは我が国というように、非常に見事なアセンブリー・ラインとも呼べる流れをみてとれますが、今次の新たな生成方法が米国勢により発出されたということは、あるいはその効率化を果たすのは再び我が国に与えられた役目なのかもしれません。

  • 高級ホテルのバーで繰り広げられたスパイたちの諜報活動は過去のものなのか…
    高級ホテルのバーで繰り広げられたスパイたちの諜報活動は過去のものなのか…

    去る6月30日、東京・千代田区にある「ホテルグランドパレス」が49年間の歴史に幕を下ろしました。
    同ホテルは、1972年2月に丸の内にある「パレスホテル」の姉妹ホテルとして開業し、プロ野球のドラフト会議や大相撲優勝力士の祝賀パーティなども開かれたことでも有名ですが(
    参考)
    最も印象深いのは1973年に起こった「金大中事件」の舞台であったという点ではないでしょうか。
    これは当時、韓国民主化運動の指導者でのちに大統領となる金大中氏が、22階のスイートルーム2212号での会談を終え、廊下を出たところを韓国中央情報部(KCIA)の襲撃を受け、拉致されたという事件です。

    金大中事件に限らず、ホテルがインテリジェンス戦争の最前線となることは国内外を問わず多々あります。戦前においては、二・二六事件の舞台としても有名な「山王ホテル」は、ソ連のスパイであるリヒャルト・ゾルゲの拠点であり、南麻布にある在日米軍施設「ニュー山王ホテル」は今でも米系インテリジェンスの活動拠点であることは想像に難くない(参考)

    海外ではさらに露骨に諜報戦が展開されています。かつて英ロンドンの高級ホテル「セントアーミンズホテル」は、英秘密情報部(MI6)により“safehouse”(隠れ家)とされ、バーでは各国のスパイが情報を交換し、イアン・フレミング(MI6の諜報員であり、『007』の原作者)らもよく目撃されていたといいます(参考)。もっとも同ホテルにおける諜報活動の時代は過ぎ去り、今ではスパイ時代のアイテムが展示されたりしているとのことだが、その真相はclassifiedとなっています。

    かつてMI6のsafehouseとして使われた「セントアーミンズホテル」 出典:Smithsonian MAGAZINE

    このように一見華やかな側面があれば、当然影の部分もあります。例えば2006年、ロシアの元情報将校アレクサンドル・リトビネンコ氏が、ロンドンのメイフェアにある「ミレニアムホテル」でお茶に放射性物質ポロニウム210を入れられ毒殺されています(参考)。2008年、北京五輪の際には、米共和党のサム・ブラウンバック上院議員が、中国公安当局はいくつかの国際的なホテルチェーンにインターネット監視装置を取り付けている、との見方を示し話題となりました(参考)

    ホテル業界は、今次パンデミックにより最も打撃を受けているセクターの一つだが、世界の高級ホテルの市場規模は、健全な成長率で拡大すると予測されています。主要プレーヤーには、「マリオット」、「ヒルトン」、「ハイアット」、「フォーシーズンズ」などが含まれており、これらグローバルトップ4で全体の約25%のシェアを占めています。地域別では米国が最大の市場でありシェアは約30%、中国、ヨーロッパがそれに続く形となっています。

    そうした中、我が国はその経済的なポテンシャルに対して、高級ホテルの数が少なすぎるといわれていることはご存じでしょうか。Five Star Alliance(参考)という「5つ星ホテル」の情報サイトによると、東京の「5つ星ホテル」は32件しかヒットしません(日本全国でも54件)。これに対して、例えばニューヨークは122件、ロンドンは116件、パリで87件もヒットすます。

    しかしこれは裏を返せば、我が国の高級ホテル市場における潜在的可能性の高さを示していることにもなります。現に東証REIT指数では、「ホテル型」の上昇も目立つ展開が見られています(参考)。上昇の要因としては、ヴァケーションとしてのみならず、ビジネス、テレワークでの需要が高まっている点が挙げられています。上述のように、高級ホテルは諜報戦の舞台ともなってきたが、他方で現在は、とくに我々一介の市民にとっては何ら臆せず安心して利用できる場所である故です。

    麻生副総理が2008年の総理大臣時代に「バー通い」を批判され話題となりましたが、これについて麻生総理(当時)は「(たくさんの人と会う時は)ホテルのバーは安全で安いところだと思っている」と述べているように(参考)、高級ホテルの安全性は時の総理大臣のお墨付きです。アフターコロナ経済が本格始動した暁には、高級ホテルのバーでジェームズ・ボンドのごとくマティーニを飲みながら、かつて東京やロンドンで展開された諜報戦に思いを馳せるのもいいかもしれない。


  • © 2021 コロナ後の人生。| 気づきに満ちた世界と私. All rights reserved.